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本ができるまで1:どの本棚に置かれるかを考える(行動経済学とデザイン)

2021年のはじめに本を出す紹介をしましたが、気づいたらもう8月です。その間、noteは更新できなかったのですが、本の執筆(←キーボードで打ってるけど、こういいたい)は着々と進めていました。

いまのところ、9月中旬に出版予定で、ウェブ予約はすでにはじまっています。twitterでは予約いただいたと教えてくれる方もいまして、ありがたい限りです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4798169935

出版になるまで1ヶ月ほど時間があるので、4回にくらいにわたり、本ができるまでの過程をご紹介したいと思います。

1回目は出版のお声がけをいただき、企画が通るまでのおはなしです。


1. お声がけいただくまで

振り返ると、昨年は行動経済学とデザインをテーマに、2020年の1月からほぼ週1度のペースで、noteを更新していました。

はじめは100人くらいの人に読んでいただいてましたが、続けているうちに、たまに注目してもらえることがあり、ページビューが10000を超えた記事もありました。半年くらい経つと、多くの人に見てもらえることが安定的になってきました。継続は力なりとは、よくいったものです。

初動の敷居を下げて進みやすくする方が効果がある、というのは「エンダウド・プログレス効果」とも関係します。詳しくはこちら。

そして8月のある日、noteのディレクターの方から、メールが届きました。ここで書籍化のお声がけをいただきました。実はこの背景には、noteで行われている、クリエイター支援プログラムがあります。幸いなことに、ここで、行動経済学とデザインの内容に目をとめていただいたようです。


2. 出版社さんとの打合せ

この時はすでにコロナでリモートワークも普及していたので、お打合せはオンラインで行いました。noteの方と編集者の方と3者での実施です。

僕のような、とりたてて何の知名度もない人が、こんなカタチで本を出せるなんて、いい時代になったものです。本当にnoteには感謝感謝ですし、あらためてnoteのビジネスモデルにも関心してしまいます。

余談ですが以前、ビジネスモデル2.0図鑑の編集で、僕もメンバーの一人として関わっていました。このときもnoteには、お世話になりました。(今見てみるとスキの数がすさまじい...)


3. 編集会議を経て

話がまとまったので、あとは本をつくるだけ、とはなりません。

僕はまったく知らなかったのですが、出版社では一般的に、編集会議という場を通して、書籍化の可否を見極めるようです。手練れの編集者たちが集まり、企画に対して熱論を交わします。(これは想像です)

編集会議の議題にあげるには、このような情報をそろえます。

・タイトル案
・本の概要
・ターゲット読者
・目次(本の構成)
・本の仕様(本のサイズ、印刷、ページ数、など)

実は、僕の場合、編集会議で最終的にGoをいただくまで、かなりの時間を要しました。これはひとえに、僕の構想があいまいだったのが要因ですが、例えば、「行動経済学の本はすでにたくさんあるため、他と何が違うのか?」が書籍化に向けた論点の1つでした。

企画段階で編集者は、類書と売り上げの調査を行いますが、数字だけの判断ではなく、編集者も僕もそれぞれ書店に足を運び、「どのカテゴリに置かれるか?」「どう訴求すれば目をとめてもらえるか?」ということを話し合いました。有名人の本とはスタート時点で大きく差が開いているので、こういったことを考える必要があります。

これはとても新鮮な経験でした。僕は普段、デザインの仕事でターゲットユーザーは誰かを設定する「ペルソナ」を企画・リサーチをしています。これまでも、ペルソナで対象を絞りすぎてニッチな市場にするのは本末転倒、と主張していましたが、あらためてこのことを実感しました。

もし、この本をデザインの棚に絞ればエッジは立ちますが、本に手を取ってくれる人は限られます。僕の考えは、デザインに限らず、多くの人に行動経済学とデザインの接点に興味を持ってもらいたい、ということなので、両方に難しさを感じさせない伝え方をする必要がありました。

4.本の名前を決める

その考察の結果の1つが、本の名前です。

「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」

最終的に決まったのは今年の5月ごろで、僕もアイデアは考えましたが、編集者の方の案で決めていただきました。この名前には2つ意図があります。

ビジネスデザイン:ビジネスとデザイン両方が対象
ノート:解説書ではなく、イラストを用いた身近な伝え方

ビジネス側への入り方を試行錯誤しているデザイナー、デザインに興味があるビジネスパーソン、行動経済学はその橋渡しになる、ということが「ビジネスデザイン」の言葉に集約されていて、でも難しくはなく他人のノートを読むような体験、というメッセージです。

対象を絞りすぎないけど主題は明確に伝える、ことを体現しています。

ちなみに、こちらは編集者の方が作成された、企画書の一部です。企画書を見て、あらためて自分の考えは浅かったなと、痛感させられました。

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このようなやりとりを経て、本格的に取り組み始めたのは11月からでした。ただ、年内まではnoteの連載は続けていたので、11月と12月はもっぱら構成をどうするか、ということに時間を使っていました。

次回は、本の構成について考えたことを紹介します。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。