エンダウド・プログレス効果(進むとやる気がでる):行動経済学とデザイン40
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エンダウド・プログレス効果(進むとやる気がでる):行動経済学とデザイン40

案ずるより産むが易し。とにかく何かやってみた方が物事も進むし、やる気も出てくる、ということについて考えてみます。

まずはこちらの本から

ヘンテコノミクス

行動経済学まんが ヘンテコノミクス
佐藤雅彦、菅俊一(原作)、高橋秀明(画)
マガジンハウス 2017.11

上昇選好

この本でのお話は、リスが働く会社で、毎日おなじ給料(どんぐり)がもらえるよりも、はじめは少なくても毎日1個ずつ増える方が生産性が上がった、というものです。

人は「だんだん良くなる方を好む」という傾向を上昇選好といいます。良くなればやる気も高まるけど、同じだと単調でやる気はむしろ下がります。このように、進んでいることの体感が行動にもつながっていきます。

先延ばしのリスク

では、次はこちらの本。

予想どおりに不合理

予想通りに不合理
ダン・アリエリー(著)、熊谷淳子(訳)
早川書房 2008.11

誰でも経験はあるかと思いますが、締切は設定されていた方が、ないよりも早く手をつけるので成績にも影響します。自分で決める締切は守りにくい傾向があります。(年初めに壮大な目標を立てても3日後には忘れがち)

先延ばしするかしないかは、最初の一歩を踏み出せるかが大きく影響します。自分で目標を立てるときは、できた状態ばかりに意識が働き、初動を軽視してしまいます。逆にとりあえず何か1つやってみれば、次が見えるので止まらずに進むことができます。

何の本で読んだか忘れましたが、確かこんな実験がありました。(デザイン思考とかでよく語られる例です)何かのモノをつくる授業で、2つのクラスでやり方を変えてみたところ、

Aのクラス:1週間でじっくり1つのものをつくる
Bのクラス:1日1つ、1週間で5つものをつくる

結果、Bの方がいい成績の結果となりました。

ここでの学びは「考えるよりも手を動かす」とか「失敗を経験した方が成功に近づく」とか「アジャイルが大事」とかです。が、僕が考える教訓は「進むともっと進めたくなる」ということではないかなと思います。(なので考えることで進むなら、対象によっては「手を動かす」が必ずしも正解ではないと考えます)

エンダウトプログレス02

進むとやめられない

一方でリスクもあります。一度手を出してしまうとヒートアップして、途中でやめることができなくなります。

ゲームのやりすぎ、依存症、過度な干渉、ケンカ、ドロドロの恋愛など。例えばダイエットで自制していたのに、ちょっとだけ食べてしまったが最後、タガが外れて一気に暴飲暴食に走ってしまったり。

一度入ると変えるのが難しくなる「やめられない、とまらない」のかっぱえびせん、もしくはプリングルス状態です。状態変化を嫌うのは正常性バイアス(現状維持バイアス)とも関係があるかと考えます。

・・・・・

では、進むとやる気がでるエンダウト・プログレス効果について、よい方向に働きかけるためのデザインを考えてみたいと思います。

応用1. はじめから進んでいる

この効果での代表例はポイントカードです。0からではなく、はじめの時点でポイントが付いていたり、既に1つスタンプが押されているやつです。

最近話題になった100時間カレーもこの通り。ちょくちょく途中で達成ポイントがあるのも進めたくなる動機付けになってます。

エンダウトプログレス04

他にも、例えばプロフィールの入力欄にすでに項目が入力されていたり、該当項目のチェックがはじめからついていたり、ページを開いた瞬間にプログレスバーが伸びて進んでいたり、職責の等級や書道の段などでも1から始めず3からだった方が良かったり、などいろいろあります。

頭固く考えずに、スタートの数字は進めておくのがやる気につながります。

応用2. 貯めずに吐き出させる

『予想通りに不合理』の本の中の事例です。フォードが所有者に修理点検をうながすために、これまで細かく複雑だった指標をやめてシンプルに3つの指標だけにしたところ、多くの所有者が点検するようになったそうです。

開発者視点やビジネス視点でルールをつくると、ユーザーには敷居が高かったり、細かすぎると感じて、行動する気をなくします。会社の取り組みでも回収率が悪いものは、これに関係していることが多そうです。

目標はシンプルに簡単に、吐き出しやすい環境を提供することが大事です。ちなみに僕はメールの未読が1000件以上ありますが(大体はいらないメルマガ)、10だったら片付けたいけど1000だともう諦めてしまいます。

応用3.一気に出さない

小出しで、ちょっとずつ進むことが大事です。これを一気に出してしまうと結果として逆効果になる場合があります。

例えば成績優秀者にボーナスをあげるとき、一気に昇格させたり破格の報酬を与えると、次回ちょっとだけ上げても効果は出ません。なぜなら前回との比較で上昇していないと満足できないから。中毒状況にも少し似ています。

もう1点、まとめて一気に出すと次回までの間隔が空いてしまい、次へ進むことを忘れてしまいます。一夜漬けの勉強は次につながりにくいし、半年後の歯科検診はほとんど忘れてしまいます。

常に進んでいくように仕向けるためには、過度な刺激や波は与えずに、少しづつよくなっていく体験を提供することが望ましいです。

エンダウトプログレス03

まとめ(とフロー体験)

以上、進むとやる気がでるエンダウト・プログレス効果についてまとめてました。

ところで、勉強にしろスポーツにしろ趣味にしろ、何かに没頭しているときが一番成長につながると思っていますが、この状態は、心理学者のチクセントミハイが提唱した「フロー体験」といいます。

ユーザーにとってはこのフロー体験が、最も心地よく、かつ手助けを必要とせず自分でどんどん進み高いパフォーマンスを発揮できて、満足度の高い状況です。サービス提供者とっても望ましい状況です。

なので、進むとやる気が出る状況をいかにデザインしてフロー体験につなげられるかは、ユーザーとビジネス両者にとって大事なことだと考えます。おさらいですが、

・はじめから進んでいる(または進めそうに感じる)
・吐き出しやすくして進めてもらう
・一気にではなく少しづつ進める

といった観点とフローの組み合わせで、デザインに取り入れてみてはどうでしょう。

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ジマタロ

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

ありがとうございます!うれしいです。
デザイン・ストラテジーについて日々かんがえています。本・イベント・体験したことなどから気づいたことをグラレコメモを交えて感想を書きます。2018年までのアーカイブはこちら( https://designstrategy-studyroom.blogspot.com/