ピークエンドの法則(終わりよければすべてよし):行動経済学とデザイン:39
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ピークエンドの法則(終わりよければすべてよし):行動経済学とデザイン:39

『ゲーム』という映画を観たことありますか?主人公のマイケル・ダグラスは嫌な思いをいっぱいするわけですが、最後はハッピーエンドの結末で、めでたしめでたし...となります。

いや、でも冷静に考えると、それまで散々嫌な思いを味わったのにチャラにしていいの?とも思うんだけど。でもそれでいいみたいです、人間は。

そんなことが、この本の一部に書かれています。

 ダニエルカーネマン心理と経済を語る

ダニエル・カーネマン心理と経済を語る
ダニエル・カーネマン(著)、友野典男(監訳)、山内あゆ子(訳)
2011.03 遊工社

時間と幸福の感じ方について3つの例を紹介します。

ピークエンドの法則

1つ目の例は、時間のかけ方によって、実際の苦痛と体感する苦痛は変わるという実験結果です。病院の治療で同じ検査を時間を変えて実施しました。

A. 8分間かかる大腸内視鏡検査
B. 22分間かかる大腸内視鏡検査

Bの方が不満ありそうなはずですが、結果は違います。この検査はずっと同じ痛みがあるわけではなく、痛みのピークがあります。

A. 8分=短いけど強い痛みを感じた瞬間に終わった
B. 22分=長いけど終わったとき痛さはさっきよりやわらいだ

と患者は感じます。あとで集計をしたところ、Bの方が不満は少なかったという結果になりました。人は最後の記憶の方が印象強く残るため、Aは痛く、Bは(途中の痛みは忘れて最後は)それほど痛くなかった、という評価をします。

なので、嫌な経験をする場合は、すぐに終えずに余韻の時間を持たせる方が痛い印象をなくすことができます。

サプライズ効果と茹でガエル

予想に反して、しかも本人にとっても嬉しい出来事だと、それまで嫌な気持ちをしていても一瞬で忘れて前向きな気持ちに切り替わることがあります。冒頭に紹介した映画『ゲーム』もその一例です。

サプライズ効果も最後が大事ですが、効果を最大限に発揮するには、はじめはあまり期待させないでおいて、最後に一気に変化を加えることで、それまでとのギャップを感じて、より印象が強まります。

反対にちょっとずつだと変化を感じません。俗にいう「茹でガエルの状態」ですが、水が急に熱くなると飛び出すけど、徐々に温度が高くなると気づかずにそのままいてしまいます。

なので、良い印象を与えたいときは一気に変える、逆に悪い印象を与えたくない時は少しづつ変えることが効果的です。

努力と時間

時間をかけた方が効果を感じやすいという現象もあります。料金は同じだけどスキルが異なる水道工事を修理する2人がいたとします。

A. 5分で解決する腕利きの修理工(8000円)
B. 60分で解決する見習いの修理工(8000円)

冷静に考えれば早く修理してくれるAの方がいいわけですが、体感的には一瞬で直されると8000円は高すぎると感じ、Bの方が(じっくり丁寧にやってくれたと思い込み)適正価格だと考えてしまいます。

人は、人の努力にはお金を払いたいけどスキルにはお金を払いたくない心理が表れているのだとか。会社の効率化も同じですよね。残業している(実は非効率な)人の方が評価が高かったりとか。

ピークエンドの法則03

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このように、人は時間に対して3つの印象を抱く特徴があります。

・最初や途中よりも最後の方が強く印象に残る
最後の急激な変化は強く印象に残り、ゆっくりは変化に気づかない
時間がかかるほど効果があると思い込む

これらをうまく使った例に、IKEAの店舗の仕掛けが思い浮かんだので、それぞれ事例を書いてみます。

応用例1. 最後のアイス

IKEAはめんどうと思われがちな家具購入の体験を、店舗の時間の使い方でポジティブに変えました。

全体の時間の8-9割はショールーミングですが、最後にまとめてカートに商品を乗せて気分を高めて、仕上げに(ご褒美の)アイスを食べられることで「楽しかったね〜」となるので、それまで長く歩いて疲れていたことも忘れてしまいます。

終わりを楽しい体験にするIKEAの工夫には見習う点が多々あります。

応用例2. ハッピーバースデー

レストランにも多くの学びがあります。

ケーキが運ばれるハッピーバースデーの演出はサプライズの定番ですが、ポイントは、後半までは長く穏やかな時間にする、あるタイミングで電気を消す、すかさず音楽を流す、などでムード明らかに変わったことを参加者に気づかせることです。

飲食がメインではないIKEAでも子ども向けのお誕生日会があります。僕は一度たまたま遭遇しましたが、ユニフォームを着た店員さんが突然祝ってくれるのって、びっくりで嬉しい体験なはずです。

応用例3. 滞在を長くさせる

IKEAは最初にじっくりとショールーミングに時間をかけるので、通常のお店よりも滞在時間が長くなります。(ほぼ1日の人も)

なのでそれだけ時間かけたんだから元を取ろうと、何も買わないわけにはいかないと思うし、途中でご飯をたべたり最後にお土産を買うためにお金を使うのはユーザーにとって理にかなっています。

回転効率を重視する飲食店にはできませんが、テーマパークやホテルなどの業種には適応できそうな考え方です。

ピークエンドの法則02

他の例でTakramのPodcastで聞いた話ですが、ある空港は到着後にスーツケースが出てくるまでの時間がかかり乗客が不満を感じていました。

そこでこの空港は、到着した場所から荷物受け取りまでの道のりをわざと長くしたそうです。そうすることで待つ時間がなくなり(歩く時間は増えたけど)不満を解消できたそうです。あえてユーザーに時間をかけさせるのもアイデアの1つです。

まとめとおまけ

以上「最後にいい体験をすると満足度が高まる」というお話でしたが、デザインの仕事をするうえでもこの考えは参考になります。制作の過程では途中は期待を上げすぎず最後にサプライズでデザインの魅力を伝えたり、いいアイデアが思いついてもすぐに案を出さないとか。

ピカソは30秒で絵を描き100万ドルですと言ったそうですが(数十年と30秒の蓄積だという意味が込められている)大御所でない限り、このことを理解してくれる人はそんなにいません。なので価格に見合った時間の掛け方は意識しておくと期待値から外れることは少なくなります。

ただ、制作の過程に色々考えていても、それが伝わらないと時間をかけてないように思われお互い不本意なので、問われたら検討経緯を細かく丁寧に伝えたり過程を見せるようにしましょう。

という最後にTake awayできるネタで満足度を高めてみました。サプライズはないですが、それは年末あたりにでも。





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ジマタロ

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

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デザイン・ストラテジーについて日々かんがえています。本・イベント・体験したことなどから気づいたことをグラレコメモを交えて感想を書きます。2018年までのアーカイブはこちら( https://designstrategy-studyroom.blogspot.com/