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ゲーム理論(先手必勝と後出しジャンケン戦略):行動経済学とデザイン19

ゲーム理論での考え方を図に整理してみたいと思います。

前回、ナッシュ均衡を書いたあとにゲーム理論の本を読んでたところ、まだ自分は理解が浅かったことがわかったので、もう少し踏み込んで整理しようと思いました。

ゲーム理論入門の入門

ゲーム理論入門の入門
鎌田雄一郎
岩波書店 2019.04

本は入門の入門とのことですが、それでも僕には難しい内容でした。まず、ナッシュ均衡の定義の理解が不十分だったので、あらためて基礎から見直してみると、

戦略的状況での行動=相手が何をするかに対するベストな反応

というものです。わかりやすく言うと「2人の行動や思惑がお互いにとっていい結果になる状況」がナッシュ均衡です。

2社が値下げで競っている状況は均衡が取れてないけど、ターゲットが棲み分けされているのは均衡が取れている状況です。ゲーム理論はこの前提となる「何かを決めた結果どうなるかを予測する」考え方を意味します。

今回はこれをベースに、ゲーム理論の(入門的な)考えを、時間軸の視点を入れた3つのパターンで整理してみます。3つとは、

1. 同時に決める
2. 全ての情報を見てから決める
3. 情報が見えないなかで決める

ではそれぞれ見ていきたいと思います。

1. 同時に決める

お互いに相手の出方や思惑がわからない状況です。代表例は有名な『囚人のジレンマ』ですが、もっと簡単な例は、グーとチョキで4人が2組にわかれる時のあれです。どうなるか誰もわからない=作戦が立てられないパターンです。

ゲーム理論02

ここでは自動車メーカーを例にします。新車発表でライバル会社と商品群が違ったらお互い幸せだけど、一緒だとお互い不幸になります。

2. 全ての情報を見てから決める

次は相手の出方から考えるときの状況です。例えば、B社が新しい車を出したとき、A社は追従するか放置するかを考えます。もしA社が追従したら、B社は値下げをするか価格を維持するかでも結果は変わってきます。

パターンを図に書いてみるとこのようになります。値下げするとお互いの収益が下がるので、結果がマイナスになります。

ゲーム理論03

もう1社を加えてみます。AとBは小型車で、BとCは大型車で競合するとした場合です。このときもB社は追従されないのが理想で、追従されても値下げをしない選択肢がよりよい結果になることがわかります。

ゲーム理論04

このように選択肢の情報が全て見えている状態を、完全情報ゲームといいます。全て見えているので分析や戦略が立てやすくなります。

3. 情報が見えないなかで決める

今度は相手の状況がわからない場合です。販売店のC社はA社の車を扱いたいけど、A社はもしかしたらB社に安くつくらせているかもしれない、という可能性を考えてみましょう。

ゲーム理論05

そうするとC社の買う判断は、A社がつくった場合は+になるけど、B社がつくった場合はーになります。逆にA社はB社につくらせると、見破られてC社に買ってもらえないリスクも高くなることも考えられます。

このような相手の腹を探る状況を不完全情報ゲームといい、予想を立ててパターンを書き出すことが必要です。

・・・・・

ではこれをビジネスシーンに当てはめたとき、それどれの場面でどのような戦略が功を奏するかを考えてみます。

応用1. マネができない差別化を狙う

1つめは情報が見えている場合の方法です。後発者が正攻法でぶつかっても値下げ競争でお互い不幸になるので、そうならない事例を紹介します。

ビジネススクールのケーススタディでよく登場する、サウスウエスト航空はLCCの先駆けですが、単に既存の航空会社を見て価格帯を変えただけの差別化はありません。以下、僕が人から学んだことを要約すると、

それまでの航空会社は大都市空港をハブとした路線戦略を取っていたことに対して、サウスウエスト航空はアメリカの地方都市同士を結んだ路線戦略を取りました。
大手はサウスウエスト航空と同じような戦略を取れません。なぜなら大手の戦略とは真逆なので、同等のパフォーマンスを出すことは難しく、企業イメージもどっちつかずになってしまうからです。
(もちろん理由はこれだけでなく、要素を絞った低コストや効率的な運行スケジュール、ファンをつくるサービス、など色々ありますが、あえて単純化しています)

このように単純な差別化ではなく、マネできない(マネをすると自分の首をしめることになる)差別化であるかが、競争を避けて均衡を保つコツだと考えます。

応用2. 身軽さを強みにする

情報が見えている場合の方法でもう1つ。新しい会社はしがらみがないことを強みに優位性をつくることができます。

既存のシステムやユーザーとの関係が固まっていると、そこから大きな変換が難しくなります。新しい会社に対抗できていない事例は、いろんな業界で見られます。例えば、

・家電:機械会社 → 電子機器会社 → IT会社(例えばgoogleの製品) 
・店舗:百貨店 → コンビニ → オンラインショップ
・オンライン会話ソフト:Skype → Zoom →(これから出てくる?)

しがらみがない強さとは商品だけでなく、組織や人にもいえることだと思います。成功体験に依存しすぎず、捨てる勇気アンラーニングを定期的に行い、しがらみをなくした身軽さを心がけたいものです。

応用3. いきなりすごい○○

最後は情報が見えない場合の方法です。最近のビジネスの傾向を見ると、先行者が相手に追従されないためには、簡単に後追いできないよう初期投資に力をかけることが大事なのでは?と考えます。

具体的には次の2つ。

A. はじめからすごいものを出している
・iPhone:はじめてのタッチ端末であの操作性は圧倒的だった
・kindle端末:びっくりする安さでデバイスが買えた
・Gmail:無料なのに容量は1GB(有料メールよりもすごかった)
B. すごいスピードで進化を続ける
・airbnb:数年で利用者が100万人単位で増加した
・Google Maps:あっという間に全世界に高精度なデータを提供した

情報収集力が弱くて、なんかアメリカの事例ばかりですが、業界のアイコン的な存在の会社は、共通してこういった傾向があるように思えます。

まとめ

それぞれの対策を整理すると、

・情報がそろっている = 後出しジャンケンで差別化と身軽さで攻める
・情報がそろってない = 追従されないよう初期投資で引きはなす

といったように、ゲーム理論で自分が劣勢にならないためには、結局のところ相手のゲームに乗らないこと=正面からぶつからない新しいゲームの軸を見つける、ということが大事ではないかと思います。

今回はほとんど、デザインとのつながりが書けませんでしたが(ごめんなさい)、ビジネスに効くデザインができるために、こういった戦略的な知識を備えておきたく、勉強したことをまとめてみました。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。