バンドワゴン効果01

バンドワゴン効果(マイブーム→流行):行動経済学とデザイン07

バンドワゴンとは音楽隊の行進で先頭を進む車のことです。バンドワゴンのあとに隊が続いて歩くことから、人が『流行に乗る現象』を意味します。

日常生活のなかでも、サクラ・行列・ちんどん屋(今は見ないけど)などによって人が集まる現象はバンドワゴン効果です。「みんな見ているから行ってみよう」とか、人によっては「何の行列か知らないけど並んでみよう」という行動です。

この現象をつくり出している達人がいます。それは...

みうらじゅん

そう、みんな大好き、みうらじゅんがこれまで仕掛けた流行は、ざっとあげただけでもこんなにたくさんあります。

・マイブーム
・ゆるキャラ
・クソゲー
・仏像(見仏記、阿修羅展、フィギュ和...)
・シベ超(シベリア超特急シリーズ)

うーん、すごい。この数々の現象を、企業組織でなく、広告業界の人でもなく、芸能人でもなく、特別な社会的権威もない、1人がつくりあげたってすごい。見習いたい。

この本には、そんな流行を仕掛ける秘訣が書かれている『クリエイター必読書』と自信を持っていえます。アイデア発想とか成功するプロジェクトの◯◯といったような本より、何倍も学びになります。

ない仕事の作り方

「ない仕事」の作り方
みうらじゅん
文藝春秋 2015.11

バンドワゴン効果そのものは、もとが何であれ人がつられてしまう現象を指しますが、企画や開発に関わる人は対象に何かしら想いをもっているので、ここでは意図的に流行を仕掛けるためのヒントとして、みうらじゅんのブームを仕掛ける実践テクニックを、3つに要約してみました。

1.熱意 ~無駄な努力をする

第一印象が悪いものや、興味のないものは誰にも注目されないけど、そこであえて「それがいいんじゃない」と自分自身を洗脳するのが、みうらじゅんスタイルです。

はじめは「何がいいんだろう...」と思いながらも気に留めておき、時間とお金を費やすことで無駄とも思える努力を続けていると、いつのまにか好きになってしまう。そうなると、自分だけが気づいた流行(マイブーム)が生まれて、自分が第一のファンになります。

マイブームがどうやってできるかを学ぶにはこの本。

2.定着 ~ネーミングにこだわる

タネができたら、それを人に伝えます。だけど、まだ世の中にないものなので、そのまま話しても憶えてはくれません。そこで大事なのがネーミングによるラベリングづけを行うことです。

例えば、ゆるキャラは「ゆるい」+「キャラクター」の合体です。キャラクターはそもそも個が際立っているものなので、ゆるいキャラクターは本来おかしな存在です。それに名前をつけることで、これまで存在していなかった新しいカテゴリーが成立するようになりました。

みうらじゅんは、このネーミングセンスが天才的です。

・いやげ物:もらったら嫌な土産物
・二穴オヤジ:土産屋によくある小人が付いている木製のペン立て
・ムカエマ:ムカつくことが書いている絵馬
・AMA = エー・エム・エー:海女のこと
・地獄表:1日に1本しかこないバス停留所の時刻案内

ネーミングの優れた点は、その名前だけで意味を分かち合えることです。こんな風に的確にラベリングされたら、思わず言って人に伝えたくなるに違いありません。

ネーミングを学ぶにはこちら。

3.誤解 ~気づいたら受け入れられている

ゆるキャラが認知されると、みうらじゅんが考えていた定義から違ってきたようです。もともとはイベントにポツンと佇む微妙な「哀愁」にグッときていたけど、いまや、ゆるキャラは市民権を得らえています。(くまもんのようなちゃんとしているのは、実はゆるキャラではないのだとか)

でもそれでいいんだそうです。ブームになるときは、もともとの意味合いから誰かが勝手に解釈して広まっていくものだから、あまり厳密にルールをつくりすぎないことが大事なのだそうです。この時点で主人公は仕掛け人ではなく参加者なので。

統制的ではなく民主的な姿勢が大事です。この心がけは冒頭に紹介したこの本を読むとなんとなるわかる気がします。

といった3つを絵にするとこんな感じです。誰かが振り向いたらつられてみんな見てしまう感じ。注目ポイントは真ん中の人たちです。

バンドワゴン効果01

+1. 最初のフォロワーが大事

みうらじゅんから少し離れて、真ん中の人たちをどうやって振り向かせるかについて、ちょっと真面目な例を取り上げます。TED Talkで有名な下の動画を観てみてください。(たった3分弱)

踊っている1人に対して、誰かが一緒に踊ればムーブメントをつくることができるけど、その誰かが動かないと1人がずっと踊っているだけで終わってしまいます。

ここから学べることは、はじめは大多数ではなく少数のファンに向けて仕向けることです。前にファンベースの本を紹介しましたが、このことをよく表していると思います。最近、話題のD2Cもポイントは同じです。

というわけで、最初のファン・仲間・賛同者を大事にしましょう。自分がいいと思うだけでは不十分で、わかってくれる身近な人に伝わって、はじめてバンドワゴン効果は起こります。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。