オンライン/オフラインの壁を溶かす(前編)|#2 VUCAな世界の住人たち
こんにちは、デザインエスノグラフィです。
私たちは未来に向けた企業の事業開発やブランディングを支援しながら、そこで役立つナレッジの開発を行っています。その一つとして、パンデミックを経た新しい時代の欲求リスト「VUCAを生きる30のマインド」(VUCA MIND 2021)を先日公開しました。
前回の記事から、30のマインドへの理解を深めるシリーズとして、いくつかのマインドを取り上げて例を交えながら解説をお届けしています。第1回は、耐えない時代の新マインド「ポジティブ逃避」と「異世界転生」についてでした。こちらもぜひ読んでみてください。
さて、シリーズ第2回目となる今回取り上げるマインドは「メタ充」「豆腐屋のラッパ」「行間を埋めにいく」「片思いディスタンス」です。
いつの時代も人は誰かと繋がりたいもの。「繋がりたい」もさまざまです。パンデミックや新世代の登場で生まれた新たな「繋がりたい」マインドとは?
新しい繋がりを模索する
コミュニケーションのフィールドは時代とともに移り変わっていく。
オフラインしかなかった時代。
オンラインとオフラインを並行して生きる時代。
そして今は新型コロナウイルスのパンデミックで、あらゆるコミュニケーションがオンラインへの移行を迫られる時代だ。
パンデミックでリアルな人との繋がりが激減してどう感じたか?人に会えなくてとにかく辛いという人。あるいは意外と平常運転という人。
その分かれ目はいわゆるデジタルネイティブかそれ以前の世代であるか、かもしれない。その違いは、主としてきたコミュニケーションのフィールドがオフラインであるかオンラインであるかだ。
人が社会を形成する生き物である以上、置かれるフィールドが変わったとしても、繋がりを諦めることはこれまでもこれからもないのだろう。パンデミック以降、そして常に不安が付きまとうこのVUCA時代に、いかに人との繋がりを構築するか——それぞれがオフラインをオンラインへ、オンラインをオフラインへと拡張しようとすることで、その答えを模索しているようだ。
メタ充——メタバースで待ち合わせ
オフラインしかなかった時代を知っている世代にとって、このパンデミックは大きな試練になったのではないだろうか。もちろんSNSは使うし、ビデオ会議やチャットといったオンラインツールのみでのコミュニケーションにも慣れてきたけど、なんだかんだやっぱりリアルが良い。そう思っているところはあるはず。
友達と集まって盛り上がるだけの目的なきひと時や、キャッチボール不要の雑談が恋しい……。コロナ禍の人々がそう思った時には既に、そんなリアルコミュニケーションならではの感触をオンラインでも叶えてくれる場が存在していた。現実世界を仮想化したメタバースもその一つである。
「あつまれどうぶつの森」や「フォートナイト」のようなオンラインゲーム上の仮想空間に現実世界の友達と集まるなんてことができてしまう。それまでゲームなんてしなかった人でさえ、コロナ禍には「あつ森がなかなか手に入らない……」と嘆き悲しんでいた。
リアルでよく会っていた友達とメタバースになんとなく集まってワイワイしたいという、「リア充」ならぬ「メタ充」欲求の芽生えである。
豆腐屋のラッパ——遠くて近い「あの人」を思う
リアルで人に会う機会として、コロナ禍にごっそりなくなったものの代表格は、なんといっても毎日のオフィス勤務だろう。出社していた頃は、お互い背を向けて仕事をしていてもなんとなく同僚の気配を感じられた。
キーボードを叩く音や、動きとともに生じる微細な空気の振動、そういった目に見えないものから相手の平常を確認していた。それは、毎日夕方になるとお豆腐屋さんがラッパを鳴らしてやってきて、その音で「今日も一日平和だったなァ」と安心する感覚に似ている。
コミュニケーションのフィールドがオンラインに移行しても、私たちは「豆腐屋のラッパ」的なものを見出している。
例えば、ビジネスチャットで同僚にオンラインのサインが点灯していると、仕事する姿を思い浮かべて「頑張ってるな」と微笑ましく思う。通話を繋ぎっぱなしにしたり、話さずに音声SNSに集まったりすることで、何気ない生活音から誰かの存在を感じ取ろうとする。
リアルへのノスタルジー
「メタ充」も「豆腐屋のラッパ」も、リアルなコミュニケーションへのノスタルジーから芽生えたマインドである。しかし、そのコミュニケーションとは、ビデオ会議やチャットで代替される「目的を持ってやり取りをする」類いのものではなかった。
シンプルに他者と繋がることで自分が社会の一部であることを確かめる、繋がりの実感から喜びや安心感を得るためのコミュニケーション。それは姿が見えることや言葉を交わすことだけでなく、他者の気配や体温を感じることだったりする。
当たり前に繋がれなくなった今、人々はそんなコミュニケーションの本質をデジタルの世界にも求めているのだろう。
新世代の「繋がりたい」マインド、「行間を埋めにいく」「片思いディスタンス」とは?後編に続きます。
[文]及川結理 [イラスト]山本茂貴
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デザインエスノグラフィ社の考え方や、そもそもマインドを知ることが必要な理由、新しいナレッジを開発した経緯についてはこちらの記事で書いています。
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