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オンライン/オフラインの壁を溶かす(後編)|#2 VUCAな世界の住人たち

こんにちは、デザインエスノグラフィです。
弊社の独自ナレッジ「VUCAを生きる30のマインド」(VUCA MIND 2021)の解説をお届けするシリーズ、第2回目ではパンデミックや新世代の登場で生まれた新たな「繋がりたい」マインドを取り上げています。

前編では、デジタルネイティブ以前の世代である大人たちのマインド「メタ充」と「豆腐屋のラッパ」について書きました。まずは前編からどうぞ!

さて、後編ではデジタルネイティブ世代の「繋がりたい」マインド「行間を埋めにいく」「片思いディスタンス」を掘り下げていきます。

4回目記事カード

行間を埋めにいく——「誤解を恐れずに」なんて言えない

身の回りの社会構築に最初からオンラインが組み込まれていたデジタルネイティブ世代にとって、パンデミックは大した弊害ではないかもしれない。その逆で、彼らは対面でのコミュニケーションにもオンラインの感覚で臨む。

SNS上でのコミュニケーションは双方向とはいえ、よく準備され、誤解される隙や破綻をなくしたものをアップロードする世界である。一つの投稿を作り込むことも、ツイートを補足するツイートを続けざまに投下することも消すこともできるが、リアルのコミュニケーションはそうは行かない。相手の出方によってはあらぬ方向へと展開していく。ディスプレイで隔てられ自分のペースが守られる世界とは違い、相手と並んで走りながらハンドリングする必要があるのだ。

そんな時彼らはどうするか?デジタルネイティブ世代と40代と思しき二人が対話するのを聞いて驚いたことがある。聞いている限り、喋っているのはほとんどデジタルネイティブの彼。相手の1ツイートに対して、10ツイートくらいの連投で応じるような話しぶり。相手に口を挟む隙を与えることなく、自分の考えを全方位的に強化する知識を総動員して一息に喋り切った。

本来、行間とは読み手に想像する余地を与え、テキストに豊かさをもたらすものだ。しかし、SNS育ちの彼らにとってそれは相手に誤解や批判の余地を与えてしまうもの、つまり埋めるべきものなのである。オンラインだろうがオフラインだろうが、言葉や絵文字を駆使して「行間を埋めにいく」マインドで、考えや感情を正確に伝えようとしているのかもしれない。

行間を埋めに行く_72

片思いディスタンス——永遠の恋はつくれる

恋についてもオンライン前提の価値観を発揮している。

恋の思い出を振り返ってみると、一番幸せだったのは意外にも一方的に憧れを抱いていた時期だったなんてことはないだろうか。恋のはじまり特有の夢のようなドキドキの時間。それは相手に好意を知られ、その結果として良くも悪くも関係性が変わっていく中で残念ながら失われてしまう。

リアルな人間関係では自分の一挙一動で好意が透けて見えてしまったり、幻滅したりされたりする。その心配がなく、永遠の恋を叶えてくれる対象の一つがアイドルだ。いつからかアイドルは「会いに行ける」ものになり、握手会などに通い詰めて憧れのアイドルから一個人として認識されることも夢ではなくなった。

しかし、デジタルネイティブ世代にはそれを望まない人もいるようだ。推し活はするが会いには行かず、ハンドルネームで投げ銭したり、推し活専用アカウントで推しへの愛を広めたりする。オンライン上の人格として相手に尽くし好意を表現する。

そうすれば、リアルな自分は憧れの人や恋のライバルとの争いとは距離を保ったまま、永遠の恋を守ることができる。恋のドキドキに浸り続けたければ「片思いディスタンス」を保つことだ。

永遠の恋に憧れる「片思いディスタンス」というマインドは世代を問わず持っているものだろう。その上で、恋のはじまりのドキドキはいつか消えてしまうからこそ尊いと理解している。でもオンラインの世界だったらどうだろう?オンラインを前提に生きていれば、壊れることのない永遠の恋は選択可能な一つの恋のあり方なのかもしれない。

片思いディスタンス_72

オンライン的「間」と「距離」で傷つかない関係を築く

人と繋がることには喜びと同時に「傷つく」リスクもある。オンラインとオフラインをパラレルに生き、24時間365日ソーシャルと繋がり続ける生活を送るデジタルネイティブたちは、いつでもどこにいても誰かから傷つけられる危険に晒されている。

だからといって、自らの身を守るために閉じこもったり相手を攻撃したりするのではない。「行間を埋めにいく」「片思いディスタンス」というマインドには、人とのコミュニケーションにも恋にも「傷つくことのない」ユートピアを追い求める彼らの前向きな姿勢が現れている。

「繋がりたい」は多様化し進化する

パンデミックという状況に置かれたことで、オンライン上になじみのある社会を再構築しようとする大人たち。

社会に出て異なる世代の人と関わったり、恋を覚えたりと、人間関係の経験を広げるたび、オンライン/オフライン問わず安心できる繋がりを実現しようとするデジタルネイティブ。

オンラインであるかオフラインであるかが繋がりの障壁にならない世界を、それぞれが手に入れようとしている。オフラインとオンライン、それぞれで培った価値観をベースにしながら、時代に合った幸せな繋がりのあり方を追求するマインドが働いているのだ。

マズローが社会的欲求と呼んだものは、社会の変化とともに訪れる繋がりの試練を乗り越え、多様化し進化を遂げているようだ。

[文]及川結理 [イラスト]山本茂貴


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