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菅プロ対談④ オンライン授業〜web展示

「新しいデザインの教科書」とは、多摩美術大学統合デザイン学科菅俊一プロジェクトによる、課題成果展です。私たちは、デザインという考え方の本質について改めて向き合い、7つのテーマから"作りながら学べる"課題を考案しました。
本展示は、2020年8月16日20:00にて終了しました。
多くの方のご来場および、課題へのチャレンジありがとうございました。

noteでは5回に渡って、それぞれの学生がどのように課題に取り組んでいったのかについて、話しています。第4回は、進行役の布瀬と、「観察」「バランス」「コミュニケーション」というテーマでそれぞれ課題を制作した大桒・武田・羽山によるトークです。


それぞれのテーマについて

布瀬:今回の3人は1人でテーマを担当して課題を制作したよね。自分の場合は同じテーマを扱う人がいたから、リサーチの共有ができたり色々とやりやすかったけれど、3人は1人でテーマを扱うのが大変ではなかったですか?

大桒:意外と大変ではなかったかも...。でも他のプロジェクトの人とか、この課題を知らない友達に実際自分が作った課題を試してもらって、ちゃんと課題の目的が伝わるのかどうか、かなり相談してたなあ。

羽山:私は扱っているテーマが「コミュニケーション」だったんだけど、スマホのジェスチャ操作だったりとか、人間の動作によって反応する機械とか、主に未来の技術のほとんどがコミュニケーションを主軸としたものだったから、それらを参考にして今回の課題を作りました。だから、私もそんなに大変ではなかったかな。

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武田:私は1人で良かったと思ってます。テーマが同じだと課題内容が被ったり、似てしまうのではないかと考えてました。私も大桑さんみたく、作った課題を何人かの友人にやってもらって、感想を聞いたりしてました。

布瀬:そうだったんですか。それは意外だった。
最初テーマを選んだ時から課題を考えて課題交換後のフィードバックをもらった時で自分の扱うテーマへの考え方の変化や気づきはあった?

武田:私は「バランス」を担当したんですけど、今までずっとバランスは「バランスを保つ」「バランスをとる」というプラスな意味にしか捉えていませんでした。でも、今回の課題を通して今は、「保つ」だけでなく「偏り」も含むバランスを意識して見ることができました。
バランスに関する作品を探す時に若干マイナスな意味を持つ「偏り」の作品、物も意外とあるだなあと思いましたね。以前話題になった「うんこドリル」とか文章例がうんこしか出ないという「偏り」を持ちつつもドリルとして機能している。そういうバランスもあるのかという気づきもありました。

大桒:私は「観察」を担当していて、使用する感覚による得られる情報の違いを改めて体験してもらう課題を出しているんですけど、この課題を体験してもらったみんなのフィードバックを見ると、自分が設定した課題の目的みたいなところ、観察において自分が最も重要だと思うところについての考えがより深まった感じがありました。触覚情報と視覚情報が異なることは当たり前のことのように思えるんですけど、実際この課題を体験してもらうとその違いみたいなことが直接的に伝わるのではないかと思っています。

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羽山:私は「コミュニケーション」を初めの頃はひねくれた考え方で捉えていました。あえて情報を絞ることによって、コミュニケーションをする相手の、考えや想像を膨らませてもらう。その方が、相手に伝わったときの喜びや納得の仕方が倍増するんじゃないかと思っていたんです。でも結局、先生からアドバイスをもらって、コミュニケーションとは何かをもう一回、1から考え直したんです。そのときに課題設計の目的もはっきりしてきました。


授業のオンライン化

布瀬:今回は展示をするにあたり、このような状況下なのでオンラインで公開しました。また初めてオンラインで授業というものも行ったけれどどうでしたか?

大桒:オンライン授業、個人的には割と対面授業と大差なく取り組むことが出来ていて、こういう環境を設けて下さったすげさんに感謝しかないです....。すげプロは現状scrapboxとdiscordの併用で授業が行われているけど、元々scrapboxは使用していてみんなの作品や進捗状況も気軽に覗けていたし、対面時のプレゼンやフィードバックみたいなことがそのままオンライン環境になっただけな気がしていて、あまり不便に思ったことはないですね。むしろpcを開いたら確実に授業を受けることが出来るし、良いなと思うことが多かった。でも、授業後にそれぞれの作品のこととか授業のことについて、だらだら話しながら教室で作業する、みたいなことが出来ないのは少し寂しいかもしれない...。

羽山:私はいつも、8時55分に起きています。ですが、オンライン授業になってから、一度も遅刻をしたことはありません。むしろ通常授業の時の方がしていました。今、とても快適です。だけど、みんなと会えないのはやっぱり寂しい...

武田:初めに思ったことは、寝る時間が増えて嬉しいということ。けれど、実際に何回かオンライン授業をやってくにつれ、皆んなの顔が見えない分リアクションが取りにくい状況はやりにくいなあと常々感じてました。

布瀬:コミュニケーションの弊害は大きかったよね。対面だと同じ環境で複数人が話していても、距離感とか色んな要素があって会話が成立してたけれど、オンラインになると皆の声が同じ大きさで入ってきて聞き取りづらくなるからどうしても1対1での会話になっていた気がする。

武田:わかる。今回の最後の課題の最終的な成果物がオンライン展示として設定されていたからまだ、みんなと話す機会があったからまだよかったなって思います。
普段だと皆んなからフィードバックはもらえるけど、結局、個人制作で終わるから。

布瀬:ふと思ったのだけれど、もしオンライン授業にならずにこの課題を同じように取り組んでいたら制作課題とか結構変わっていたと思います?

武田:それは、制作してる時に考えたことあります。もしこの展示がオンラインじゃなかったら... 1人ずつ考えた課題をその場で展示してやってもらう「デザインあ展」のワークショップみたいになるのかなとか想像してました。
個人的に、もし学校で展示をやったとしても、規模感はが小さいので、わざわざ足を運んで来る人はそんなに多くないと思っていました。(笑)だから結果、オンラインの方が今までの展示よりも色んな人に見てもらえている気がして良かったなと思いました。

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>デザインあ展 2018年
>デザイン・ディレクション : 阿部洋介 (small inc.)
> エンジニアリング : 藤森吉昭 (GRANDBASE Inc.), 稲福孝信
> 写真 : Takumi Ota(東京展), SATOSHI ASAKAWA(富山展)       > 写真引用元 : https://h4us.jp/works/design-ah/

大桒:あ〜確かに。その場で課題を解いてもらうとなるとまた設計しなければいけないことが増えていたかもね。個人の課題制作の話で言うと、課題を作る側としては「自宅でできる」っていう制約のおかげでアイデアは出しやすかったのかな、みたいなことは思いました。


意見を共有することの重要さ

布瀬:学校で展示をするよりも多くの人に見てもらえるという点ではオンラインでやるメリットの一つだよね。今回初めてオンラインでの展示をする上で意識したこととかあった?

武田:私はパッと見、「面白そうじゃん。」って思えるような課題作りをしました。
オンラインになることで、今までデザインに無関心だった人の目に触れられる機会が増えると思ったので、ざっくりとした課題の概要をわかってもらえればいいなと。それで家の傷とかシミに少しでも意識を持って行けたら万々歳だな〜!
勿論、デザイン大好き芸人の皆さんにも是非やってもらいたいと思ってます。

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大桒:確かに...自分もオンラインで色々な人の目に触れるからっていうことは課題制作中にすごく考えていて、とにかく誰でもすぐ簡単に取り組める課題作りを意識していたかも。

羽山:オンライン展示とかにかかわらず、私は普段美術に関わっていない人や、むしろ苦手意識を持っているような人でも、取り組んでみたいなと思ってもらえる作品づくりや課題設計は何かなっていうことについてめちゃくちゃ考えていました。
少しでも、「作るって面白い」って思うきっかけになればなと...

布瀬:確かに自分も課題の取り組みやすさは大事だなと思った。でもそれで出来る作品もやってみたくなるようなモノにしなくちゃいけないからそこが難しかった。

武田:やりやすさは勿論、「モチベーションが高く取り組める課題作り」が今までで一番難しい課題でしたね。自分がモチベーション高く取り組めても、他の人はそうではないかもしれない。それを考えてしまって時々行き詰まりました。
結果、皆んなと課題を交換し合って、フィードバックを貰ったおかげで解決したんですけどね。

大桒:課題交換、良かったよね〜!みんなと課題を交換することによる気付きが個人的にはすごく大きな収穫だと感じていて、自分が思っていた以上の気付きをみんなが共有してくれるおかげで助けられることが多かった。本当にありがたい気持ちでいっぱいです...。

武田:みんなありがと〜〜う!

大桒:(笑)                                意見を共有することって当たり前かもしれないけど、かなり重要なんだなあと...。自分が相談しても真剣に答えてくれる環境があって良かったなと改めて思う。

武田:この互いにフィードバックをする事の重要さを胸に、積極的にゼミ以外でもやっていきたいね。


大桒福未(おおくわふくみ)
多摩美術大学統合デザイン学科所属
思考の誘導をテーマとした体験設計を行なっている。
https://vimeo.com/user97197653
武田花琳(たけだかりん)
多摩美術大学統合デザイン学科所属
あらゆる領域を横断した体験、表現のある作品づくりをしてます。
https://karintakeda.myportfolio.com/work
羽山さつき(はやまさつき)
多摩美術大学統合デザイン学科所属
https://vimeo.com/user97186020

布瀬雄太(ふせゆうた)
多摩美術大学統合デザイン学科所属
菅プロジェクトの元で思考技術を学びながらジャンルに捉われず様々な手法を用いて制作している。
https://vimeo.com/user97189203


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