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リンド・パピルスの問題がマザー・グースに隠れている!? 〜エジプト算法〜
〔 古代エジプトの数学書「リンド・パピルス」の問題を解く〕では、古代エジプトの数学書リンド・パピルスに書かれた表を使って、古代エジプトの人々がどのような方法で計算をしていたのかを考えました。リンド・パピルスに書かれていた問題は、次のような表でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1651153574338-qijcPz1jOf.png?width=1200)
上の表は次のように解釈することができます。
あるところに7軒の家がありました
各々の家にはそれぞれ7匹の猫を飼っています
各々の猫は7匹のネズミを捕まえて食べます
各々のネズミは7穂の小麦の種を食べます
1穂の小麦からは7枡の小麦が取れます
この7軒の家の猫はどれだけの小麦を救ったことになるでしょうか
この問題にとてもよく似た問題が、中世ヨーロッパの文書にも書かれているのです。
古代エジプトでリンド・パピルスが書かれた時代から2千5百年以上後の中世のヨーロッパに時代を移しましょう。中世ヨーロッパにおける唯一の数学者といわれるフィボナッチ(ピサのレオナルド)は、イタリアのピサで、貿易商を営む商人の息子として産まれました。父親はアフリカの都市ブジー(現在のアルジェリア)でアラブ人と取引をしており、息子のフィボナッチにヨーロッパでは受けられない高度な教育を受けさせようと、フィボナッチを呼び寄せます。当時のヨーロッパはオリエントに比べて文化がだいぶ遅れていました。フィボナッチは現地のアラブ人から、アラビア語、ギリシア幾何学、メソポタミアのバビロニア数学を学びました。驚いたことに、古代エジプトの数学も伝わっていたのです。これは、フィボナッチが「エジプト分数」と呼ばれる特徴のある分数を使って計算していることからも分かります。その後ピサに戻ると、わずか32歳で『算盤の書』という数学の書を書き始めました。
![](https://assets.st-note.com/img/1651153622781-amBkUN0bxi.png?width=1200)
『算盤の書』には次の問題が書かれています。
老人が7人ローマへ旅行
それぞれが7頭ラバを連れ
ラバの背にはそれぞれ7個の荷袋
荷袋にはそれぞれ7個のパン
パンにはそれぞれ7本のナイフ
ナイフにはそれぞれ7個のさや
これはリンド・パピルスにあるのと同じ問題と見てよいでしょう。古代エジプトでリンド・パピルスが書かれてから数千年の時を経て、ヨーロッパにまで伝えられたのです。
さらに、イギリスの有名な古いわらべ歌であるマザー・グースにも次のようなものがあります。
セント・アイヴスに行く途中
7人の奥さんを連れた男に出会った
どの奥さんにも袋が7つ
どの袋にも猫が7匹
どの猫にも子猫が7匹
子猫と猫と袋と奥さん
セント・アイヴスに行くのはみんなでどれだけ?
このマザー・グースの詩も、もともとは算術の問題だったように思います。イギリスでも中世までは計算盤(アバクス)を使った2倍法を使っていたようですから、これもエジプト伝来ではないかと思われます。
古代エジプトで扱われていた問題とよく似たものが、イギリスに伝わる童謡にまで現れているのはとても面白いですね。
▼数学Webマガジン・マテマティカ 『バビロニアの数』
皆さんは、むかし南メソポタミア地方に栄えたバビロニアという国をご存知でしょうか。最近になって太古の昔この地に高度な数学や天文学が発展していることが分かってきました。マテマティカWeb連載『 バビロニアの数 』では、60進数という記数法はどのようにして生まれたのか、バビロニアで行われていた高度な計算とはどのようなものだったのか、などバビロニア数学に焦点を当て詳しく紹介しています。
▼【動画】計算盤を使った足し算
イギリスで使われていた貨幣系(ファージング、ペニー、シリング、ポンド)の計算盤(アバカス)を使って足し算を行います。 計算盤の珠の動きを追いながら「数の表現方法」をイメージしてみましょう。
▼ 偉人・キーワードまとめ
フィボナッチ、ピタゴラス、プラトン、ユークリッド…「ラッセル博士の数のお話」には様々な偉人が登場します。活躍した時代や業績など、振り返ってみたいときに是非ご利用ください。
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