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古代エジプトの割り算 エジプト算法

古代エジプトのかけ算 エジプト算法 〜2倍法〜」では、古代エジプトの人々がどのようにかけ算を計算していたかを勉強しました。古代エジプトの割り算は、古代エジプトのかけ算と見かけ上同じ形をしています。割り算をかけ算と比較しながら見てみましょう。

下の表は41 × 53 = 2173 と 2173 ÷ 53 = 41を表したものです。

009_図-1

左の表がかけ算、右の表が割り算です。
一番上の行は標題で、真ん中の赤字が作業欄です。標題と作業欄はパピルスにはありません。この部分を除くと2つの表はまったく同じ形をしていることがわかります。

 かけ算の計算方法については「古代エジプトのかけ算」で説明しましたので、今回は割り算の計算方法を見てみましょう。
まず標題を書いて表を作ります。Chはチェック欄、Ans は答えの欄で、この列の最後に答えが書かれます。それでは実際に 「 n ÷ m 」の計算をしてみましょう。

(1)表にn ( 2173 )とm ( 53 )を書きます。

009_図-2

 (2)左の欄の一番上に 1 を書き、順次2倍していきます。

009_図-3

(3)右の欄は m を順次2倍していき、nを越える直前まで続けます。この例の場合、1696の2倍は 2173 を越えますから、この行で終わりです。

009_図-4

(4)作業欄の一番下にn ( 2173 )を書きます。

(5)下から順に作業欄の数から右の欄の数が引けるかどうかをチェックします。最初は必ず引けます。引けたらチェック欄にㇾを記入し、作業欄の上の欄に引いた結果を記入します。引けない場合は同じ数を記入します。これを一番上の行まで続けます。一番上の行の引き算の結果は、この割り算の「余り」です。この例では、53 – 53 = 0 となるので、余りは 0 です。

009_図-5


(6)チェックがついた Ans欄の数を合計したものが答え、すなわち 2173 ÷ 53 の商となります。

009_図-6

 なぜこの方法で2173 ÷ 53の計算ができるのでしょうか。右の欄には上から順に1×53, 2×53, 4×53, 8×53, 16×53, 32×53 と書かれていると考えると理解しやすいと思います。

 作業欄の一番下に書いた2173 は“目標値”で、この中に「53 がいくつあるか」を調べます。右の欄の一番下にある 1696 = 32×53 ですから、1696 には 53 が32個あります。2173 – 1692 = 477 を書き込みます。477は848より小さいので、この行はスキップして上の行に行きます。424=8×53 ですから、424の中には53 が8個あります。残りは477 – 424 = 53 となります。したがってこの表から、目標の 2173 の中に 53 が 32+8+1 = 41 個あることがわかりました。

 古代エジプト式のかけ算「 n×m 」と割り算「 n÷m 」の計算方法をまとめると次のようになります。はじめに標題と1行目を書きます。かけ算 n×m の場合は nの斜め下にm を、割り算 n÷m の場合はnの下にmを書きます。

009_図-7

 標題を書いたら1行目を次々に2倍していきます。n が目標値です。かけ算の場合は左の欄が n を越える直前まで、割り算の場合は右の欄が n を越える直前まで、これを続けます。次にチェック欄にチェックを入れます。かけ算の場合はチェックを入れた左の欄の和が n となるように、割り算の場合はチェックを入れた右の欄の和がnとなるように、チェックを入れます。チェックを入れた Ans欄の数の合計が答えになります。実際に計算してみるとわかりやすいと思いますので、興味のある方はnとmにいろいろな数字を当てはめて、この計算方法を試してみてください。


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