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古代エジプトの数学を学ぶ

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古代エジプトにはピラミッドをはじめ多くの巨石建造物や彫像が残されています。また世界最古の文字の一つである神聖文字(ヒエログリフ)があり、高い文明を誇っていたことがわかります。最近…
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2021年5月の記事一覧

エジプト分数のかけ算 Part3 〜2倍法、2分法からの拡張〜

これまでのお話 古代エジプト人は1より小さい数を扱うために2進分数を考えました。実用的には2進分数で十分だったはずです。なぜエジプト分数を考えたのでしょうか。古代ではまだ“近似”という概念はありません。1/3 とか 1/5 などという分数は、2進分数では表すことができません。古代エジプト人も純粋な理論的探求心を持っていたのだと思われます。  パピルスに書かれた問題を見ると、古代エジプト人は交換法則や分配法則を使いこなして、エジプト分数×エジプト分数の計算を行なっていたことがわ

エジプト分数のかけ算 Part2 〜古代エジプトの人々は”交換法則”や”分配法則”を知っていた!? 『エジプト分数×エジプト分数』〜

古代ギリシアの"数"と古代エジプトの"数" 古代ギリシアでは、“数”といえば自然数を意味し、長さ、重さ、角度などは“量”として扱っており、“数”とは区別していました。自然数とは、ものの個数を数える1, 2, 3…などの数、つまり正の整数のことです。古代ギリシアでは「自然数×量」は扱われていたのですが、「量×量」は考えられていませんでした。しかし古代エジプトのパピルスの問題には「エジプト分数×エジプト分数」の形の問題が多数出てきます。これは実用的な問題からの必要性から生まれたも

エジプト分数のかけ算Part1 〜2倍表を使って『自然数×エジプト分数』を計算する〜

これまでのお話 古代エジプトでは自然数のかけ算や割り算は「2倍法」を使って計算していました。やがて古代エジプト人は1より小さい数として2進分数(ホルスの目)を考え出しました。そしてさらにこれを拡張し、エジプト数学の特徴の一つと言われているエジプト分数を考え出したのです。前回のお話ではこのエジプト分数の考え方をご紹介しましたので、今回はエジプト分数を使ったかけ算の方法について詳しくみてみましょう。 古代エジプトの2倍表 自然数や2進分数のかけ算は2倍法と2分法で計算できます。

『ホルスの目』から古代エジプトの2分法を学ぶ…1より小さい数の計算方法は?

 どんな古代の言語にも、1より小さい数を表す「半分( half )」とか「四半分( quarter )」という単語があります。古代エジプトでは、これに加えさらに 八分、十六分、三十二分、六十四分までありました。今ではあまり使われませんが、日本語にも「八分」や「十六分」という表現があり、「八分の一」「十六分の一」という意味で使われます。日本語では「八分」のように「数詞+分」の形で表ますが、古代エジプトではこれらは単一の概念で、それぞれが一つの記号で表されていました。  図1は「

古代エジプトではどのような方法で5個のパンを8人に分けていたか? 〜エジプト分数の考え方〜

エジプト分数とは? 古代エジプト数学の特徴の一つは、エジプト分数と呼ばれている数を用いていることです。「エジプト分数は、幼稚で制限の多い方法だ」などいう意見をこれまでよく聞きました。“数”は一度習得して慣れてしまうと異質のものはなかなか受け入れがたいものです。現代人の私たちから見れば、原始的で奇妙な方法に見えるかもしれませんが、先入観を持たずにまずよく理解することが必要です。エジプト分数はとても理にかなった記数法ですし、アルキメデスのようなヘレニズム期の数学者たちや、フィボナ