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ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家|森美術館で27年ぶりの個展

2024年も後半戦。先日東京都現代美術館で始まった「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」や三菱一号館美術館の再開記念展「再開館記念―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」など注目の展覧会が目白押しだ。

そんな中、個人的に楽しみなのが2024年9月25日(水)より森美術館で開幕する「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」である。

六本木ヒルズの入り口にある「ママン」をご存知だろうか。六本木駅からエスカレーターを上った先に突如現われる巨大なクモの彫刻。

この作品を制作したのがルイーズ・ブルジョワである。ロンドンのテート・モダンをはじめ、世界で9体展示されている。

私は今回個展が開催されることを知り、一冊の絵本を購入した。「ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家」。彼女の人生を綴った絵本である。

彼女の創作の源は、幼い頃の経験、家族、特に母との思い出であった。タペストリーを修復する家に生まれた彼女は、織物の種類、織りかた、糸の染めかたを母から教えてもらった。一方、父親の支配的な態度が、深い悲しみと恐怖心を植え付けた。

子ども時代の魔法は、わたしのなかか、けっして消えはしなかった。その神秘も、悲劇も、消えることはなかった。

ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家

二十歳の頃、母が亡くなってしまう。そのときから美術をまなびはじめるようになる。

おかあさんの姿は すこしもクモには 似ていなかったけれど こわれたものを なおすところが 同じでした。

ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家

彼女は布を集め、刻み、ふたたび繋ぎあわせて作品を作った。母と同じように。失ったもの、欠けたものを完全なかたちにもどすために。


やさしい色彩の絵本。彼女の作品に対する想いが詰まっているように感じる。ぜひ手に取って読んでいただきたい。そして、もう一度六本木ヒルズの「ママン」を見に行こう。

今回27年ぶりの個展は彫刻、絵画、ドローイング、インスタレーションなど約100点で構成され、その半数以上が日本で初公開となる。彫刻だけではない、様々なアプローチの作品を一堂に見ることができるので非常に楽しみである。

2024年9月25日(水)より森美術館で開幕。ぜひ足を運んでみよう。

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