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観戦記: 2024 J2第1節 熊本 vs 清水



いよいよ開幕です

待ちに待った2024 J2開幕戦。悔しい結果で終わった東京VとのPO決勝から約2.5ヵ月。遂に新シーズンが開幕しました。
昨季はリカルド監督体制下で開幕から7試合勝ちなし。第8節以降の秋葉監督体制下での成績は町田を上回る1位だったため、結果的には、この開幕ダッシュの躓きが最後まで響くことになりました。
監督や選手たちからもスタートが大事だという意見が繰り返しありましたので、誰がどう考えてもこの初戦は大事でした。
相手は清水の元監督でもある大木武監督率いる熊本。昨年終盤にホームで1-3という苦杯を舐めた相手です。平川や島村など目立つ若手は引き抜かれたものの多くの選手が残留し、手強い相手といえます。

清水スタメン・サブの狙いとは?

清水の先発は上記の通り、現地観戦した鹿児島キャンプでのTM磐田戦@白波スタジアムからは右SFの西澤から松崎への変更のみとなりました。磐田戦で右WGの西澤選手のところは少し苦戦しているなと思っていたのと、最後途中交代で入った松崎が短時間で良いプレーをしていたので、納得のスタメン変更でした。西澤は好きな選手ですが、今の右WGに求められるのは、狭いスペースでも前を向いて相手DFに仕掛けて外せる選手だと思うので、適性的に、左利きでもある快をチョイスしたのは理解できます。
次にサブですが、二種登録したばかりのまだ高校2年生、西原選手を大抜擢。西原はおそらく三笘をすごく研究していて、右利きながら左WGとして縦への仕掛けが鋭いアタッカーです。北爪やブラガはどちらかというとスペースがあると活きるタイプであり、清水がリードして相手が前掛かりになると相手にとっては有効でる一方、清水がビハインドになった時の引き気味になった相手をこじ開けるためには西原のような選手が必要であり、サブに置いたのでしょう。シート貼りの番号が44番だったので個人的にもこの起用には運命的なものを感じました。


シート貼りは44番目

その他、新外国人ブラガ含めて順当なメンバーとなりました。高橋・矢島・郡司・川本あたりがコンディション面を考慮してベンチから外れたのだと思います。昨季ほぼ全試合フル出場した白崎がサブというのもボランチのスタメン争いはし烈を極めていますね。

えがお健康スタジアムに入場!


初めてのえがお健康スタジアム

昨季は熊本遠征はできなかったので、この試合が初のえがお健康スタジアムでした。陸上トラックもあり見にくいのかなと思っていましたが、実際にはスタンドの傾斜もかなりあり、前段最後列に座りましたが、アイスタより距離は遠いものの、全体を見渡すことができ見やすかったです。ちなみに私は右CBをやっていたこともあり、このゴール裏の少し右側のポジションが最も好きなんです。

いつもゴール裏少し右寄り

新加入選手のコールは?

期待した権田選手の新チャントは開幕戦では無しでした。一方で相手のCKの際に権田コールがあるなど、権田選手をこれまで以上に後押しする雰囲気はあったように思います。
また試合前に、スタメン・サブの新加入選手についてコールが紹介されました。記憶が曖昧なので合っているかわかりませんが以下のようなイメージです。

  • 蓮川・・・はすかわ はすかわ

  • 住吉・・・ジェラ ジェラ ジェラ

  • 中村・・・なかむーらー なかむーらー なかむーらー

  • 松崎・・・まつざき まつざき 

  • 沖・・・お き ゆーや お き ゆーや

  • ブラガ・・・ブラガ ブラガ  ルーカスブラガ

  • 西原・・・もとき もとき もとき

個人的には、ルーカスブラガのリズムと中村のトーンが気に入りました。

前半所感: 熊本1-0清水

  • 熊本のハイプレスをかわすための清水の対策は中村の「アンカー落ち」

  • 「左起点右抜け」でチャンスを作るものの不運な形で失点

  • 去年の悪夢が蘇るも選手もサポーターもリバウンドメンタリティを発揮

清水が試合前のコイントスで勝ち、太陽を背負う側のピッチを選択のでしょうか、熊本のキックオフで、待ちにまった開幕戦がはじまりました。
序盤は、最初に北川がシュートを放ったものの、その後は熊本ペース。熊本のペ・松岡選手を中心とした清水両CBへのプレスがハマり、清水はなかなかビルドアップできない時間が続きます。高い位置で奪った熊本がゴールに迫るシーンもありました。
ここを打開したのが新加入の71番、中村亮太朗選手。いわゆる「アンカー落ち」で最終ラインの両CBの間に入り、組み立てを開始。おそらくフィーリングの合う乾も下がって中村を助け、清水がスムーズにビルドアップできるようになりました。
その後の熊本の攻撃はCBから清水のディフェンスラインの裏へのロングボールが主体になりました。一度だけフィジカルに優れるペ選手に裏を取られてシュートに持ち込まれるシーンはありましたが、ターゲットにされやすい山原含めて粘り強く守っていました。
その後左サイドでボールが回り、北川のポストプレーから右サイドに流し、松崎のシュートや宮本のミドルシュートに繋がり、良い形ができ始めました。左起点でゲームを作ることで熊本の3バックを清水の左に寄せて、右の大外のスペースを松崎がつくという狙い通りの形。左利きのドリブラーである松崎が前向きでフリーで受けることでカットインからのシュートや原のオーバーラップによるクロスなど多彩な攻撃に繋がります。
ところがペースをつかみかけたと思った矢先の前半39分。思わぬ形で失点をしてしまいます。ゴールからある程度離れた位置でのFK。相手の豊田選手が左足で巻いたキックが風にも乗って、誰にも触れずにゴールに吸い込まれるという不運な形での失点となりました。権田選手はアウェイ山形戦でも似たような形での失点を許しており、ここには課題があるのでしょうか。私はGKやったことないのでわかりませんが、誰にも触れないことを想定しておいて、その場合でもセーブできる位置に立つということが必要だったかもしれません。
この失点の時、無理やり忘れていた昨季の辛い感情が急に沸き起こりました。

「今年もこんな感じか、、、。」

でしパルス

でも負けている時ほど大きな声援でという言葉を思い出し、気持ちを奮い立て直しました。
選手たちもこの失点でスイッチが入ったのか、更に運動量が増えて、盛り返したところで前半終了となりました。

ハーフタイム: くまモン登場

内容はそこまで悪くなかったのにも関わらず、0-1のビハインドで折り返す形となりました。サブを含めて、純粋なFWは北川だけというメンバー構成で最も恐れていたのが先制点を取られること。後半15分で点を返せない場合には苦しい戦いになるぞと覚悟しました。ハーフタイムでの書き込みを紹介しておきます。

後半15分まで点を取れず、熊本が引いてきた場合には、上記のオプションしかないと考えていました。実際にはそれまでに追いついたため、そこまで形を崩さずに戦えましたが。でも同点で西原を投入したのはやはり仕掛けることのできる選手を使いたかったという意図を感じました。
ハーフタイムにくまモンが清水側のゴール裏にも挨拶に来てくれました。めちゃくちゃ暗かったので、なんだか元気もらえた気がしました。

くまモン参上

後半所感: 熊本0-2清水(合計1-2)

  • 「攻撃的SB」山原の値千金の同点弾

  • 17歳最年少記録での西原の出場

  • 終了間際のチーム全員で奪った逆転ゴール

後半開始。熊本も全く守りに入らず、両チームがチャンスを演出します。立ち上がり早々は清水。原がカウンターからニアに強烈なシュートを放つも相手GK田代選手のスーパーセーブ。チャンスの後にはピンチあり。その後熊本も攻勢を仕掛けてきます。ハーフタイムに大木監督から後半立ち上がり15分でゲームを決めて来いと選手に発破をかけたのでしょう。
後半4分、清水はこの試合で最大のピンチを迎え、3連続シュートを浴びます。しかし権田の好セーブ、ジェラの跳ね返し、蓮川のゴールラインでのクリアと、体を貼ったディフェンス陣が何とか守り切ります。後半は点を取りに行く以上このような展開は想定内でした。
そうした中で後半15分、おそらく選手交代のカードを切る決断前最後のタイミングで待望の同点弾が生まれます。しかも清水が狙っていた形での得点。松崎がハーフライン付近でボールを奪い、乾→北川→山原と繋ぎ、山原がクロスと見せかけて切り返した後に、右足でゴール右隅にカーブをかけた素晴らしいシュート。ボールを左右に動かして、SBがフィニッシュに絡むという今年の清水の攻撃戦術通りの形で、良いタイミングで同点に追いつきます。PO決勝で悔しさから号泣し、複数クラブのオファーを断って清水に残留し、攻撃的SBを目指して14番に背番号を替えた山原選手が、今季清水の初ゴールというのも本当に泣けてきますね。

同点に追いつかれたのちに、大木監督が先に動きます。伊東→大本、また良い動きをしていたペが負傷により、大﨑を投入。前線の脅威となっていたペ選手の交代は、正直清水にとっては助かりました。
それを見て秋葉監督は後半29分に疲れのみえる松崎からブラガ、後半38分にはカルリに代えて17歳・高校2年生の西原を投入。サイドで活力を保つことで試合を優勢に進めます。
そして終了間際の後半43分。ついに清水が逆転ゴールを決めます。西原の原への素晴らしいサイドチェンジから、ブラガ→宮本に渡り、3番目の動きで裏に抜け出した原に絶妙なスルーパス。完璧に裏をとった原からのグラウンダーのクロスが、戻りながらのディフェンスを余儀なくされた相手DFに当たってゴール。OGではありましたが、1点目に続いて清水がやりたい形で崩したシーンになりました。クールなイメージの原ですが、ゴール裏までサポーターと喜びを分かち合い、煽りに来てくれました。それだけこの試合にかける想いが強かったのでしょう。なんかすごく感動しましたよ。(相方は泣いてました☺)

原選手の笑顔、最高ですね。
その後、吉田・西澤・白崎の3枚替え。これは時間稼ぎの狙いはあったと思いますが、ポジションの確認に現場は混乱。もう少しわかりやすい交代でも良かったですね。白崎がワントップの位置に入ってましたもんね。ATは6分だったはずですが、実際には10分で終了。終了間際のゴール前のFKは余計でしたね。さすがにFK後のCKまで蹴らせたのは主審に「?」でしたが。
清水エスパルス、開幕戦勝利です!!

総括

この試合、ゴール期待値のグラフからもわかる通り、両チーム一進一退の攻防で好ゲームでした。熊本が去年に引き続き良いチームを作り上げている印象。新戦力・若手も躍動していましたね。

ゴール期待値はほぼ互角

スタッツを見てもボール支配率やパス数では清水が上回るものの、シュートの本数やCK数では熊本に軍配。特に追加点を入れられていたら全く違った展開になっていましたね。

スタッツではシュート本数で熊本優勢

これらを見ても結果がどう転がってもおかしくありませんでした。それだけに先制点を取られるという苦しい展開で、逆転まで持ち込んだということは去年から精神面でも大きな積み上げがあったのかなと、評価できる結果になりました。
まだまだカルリや乾は、万全時よりもボールロストが多くて、連携面はこれからのように思えましたし、原と松崎などのコンビはまだ伸びしろがありそうです。
全体としては、北川も下がることが多いため、ボックス内に人数が不足すること。まだサイドの裏を取った時に、クロスの精度やボックス内の動きなどが整理されていないように思えることなど、攻撃面に課題はあるように思いました。松崎のクロスにカルリが合わせる。一度サイドにはたいた北川が裏に動きなおしてゴールを決めるなどが出てくると厚みが増すし面白いと思います。守備面はこの時期としては完成度が高く、攻守両面で戦術的にも昨年から積み上がっている印象を受けました。

MVPは誰か?

ゴールに直接絡んだ山原・原はもちろんですが、でし的なMVP候補は、蓮川・宮本・中村亮太朗の3名です。3人ともMVP級の働きで迷いましたが、攻守両面で動き回り、清水の新たなダイナモとして躍進した、中村選手を上げたいと思います。

中村選手のボールタッチ位置ヒートマップ

ヒートマップから、中村選手がいかにピッチを縦横無尽に走り回っているかがわかります。甲府時代はもう少し最小の運動量で効率的にパスを捌くタイプの選手だと思っていましたが、ここまで運動量が多いとはポジティブサプライズです。また守備の時にスプリントをかけて鋭くプレスに言ったり、浮き球を競りに行く姿も印象的でした。新調した金の短髪の見た目通り、まさに「ウルフ中村」といった感じでした。ちなみにプライベートの中村選手はめちゃくちゃオシャです。
あと個人スタッツですごいと思ったのが、GKの権田選手。相手の田代選手はパス数が16で成功数が7(成功率44%)に対して、権田はパス数が48で成功数が40(成功率83%)です。権田がフィールドプレイヤーと同等以上に試合の組み立てに参加していることがわかりますね。FP10人対11人と数的優位を作ることができるため、現在サッカーではこれは非常に大きいことです。清水の今季のビルドアップとして、最終ラインからパスを繋いでいく形が開幕戦でも見えましたが、権田がこれに貢献していることは言うまでもありません。

権田選手の個人スタッツ

次節に向けて

いかがでしたでしょうか。最初ということで書きたいことが山ほどあり、何と6,000字の大作になってしまいました。またまだ読者からは読みにくいだろうなと反省しておりますが、note初心者ということでご容赦ください。
3日後にはホーム開幕戦、第2節愛媛戦ですね。愛媛も昨年J3優勝の勢いのまま、初戦をホームで勝ち、さらに勢いを増して、アイスタに乗り込んでくると思います。2016年に対戦した際は2試合ともドロー。決して楽に勝てる相手ではありません。
但し、清水エスパルスのかける想いもこれまでとは全然違います。昨季もホーム開幕戦の水戸戦でスコアレスドローとなったことがスタートダッシュ失敗の要因になりました。今年は絶対に勝たないといけません。
今季からシーズンオーナーになりましたので、愛媛戦も相方と参戦予定です。次回は愛媛戦展望について書きたいと思います。
今後もどうぞよろしくお願いします_(._.)_

A熊本戦勝利後にパチリ

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