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本気で中小企業の生産性向上について考えてみた

日本経済を救うため中小企業の生産性向上を目的として,note 上で,e コマースサイト構築ソフトウェアやチームコラボレーションツールのオープンソース開発をやってみようという話。

記事「日本はもはや豊かな国ではない」

で,その国の経済力は,単なる豊かさを示すだけでなく,人の生死にもかかわるものであることを述べた。また,日本の急激な高齢化と人口減少を考えると,支えてもらう人たち(高齢者)が増えて,支える人たち(労働人口)が減るのであるから,経済力は,この側面からも重要であることが分かる。現在,日本人の収入に占める福祉負担の割合は 40 % 弱だが,現在の状況が続けば,2040 年頃には 50 % 近くに達する(D. アトキンソン,「日本人の勝算」図表 2-5)。つまり,急激な高齢化・人口減少により,収入の半分程度を福祉に負担する必要が生じてしまう。収入の半分が他人の福祉のためになくなってしまうと考えると,厳しい状況であることが実感できる。ここで重要となるのが,労働生産性向上という考え方だ。

幸か不幸か,上記の記事「日本はもはや豊かな国ではない」に書いたように,日本の労働生産性は,かなり低い。仮にであるが,もし,労働生産性を 2 倍に高めることができれば,収入の 50 % を占める福祉負担は,25 % ということになり,十分にやっていける,というか,相当良い状態になる。荒っぽい計算であるが,労働生産性を倍にするということは,今,1 時間に 1 個売れているものを 2 個売るということである。そのためには,全ての仕事を倍のスピードでやればよいことになる(生産だけでなくマーケティングも含めて)。現在やっている仕事をそのまま倍のスピードでこなすことは当然できない。重要なのは,「不要な仕事を省略すること」と「機械の力を借りること」となる。現在,政府が取り組んでいるのは,前者の代表として押印の廃止,後者の代表としてデジタル化ということだろうか。

上記アトキンソンさんの著書によれば,日本では,中小企業の労働生産性が特に低いらしい。日本人のほとんどは中小企業で働いているから,なんとかこれを向上させなければならない。「不要な仕事を省略すること」は別の記事に譲るとして,この記事では,「機械の力を借りること」つまり「デジタル化」について考えてみたい。

「デジタル化」は,日本人の特性を考えれば,思ったより簡単に実現できるかも知れない。記事「コマーシャルから見えてくること」

に書いたように,日本人は何かに取り組むとき,競争相手を出し抜くためというよりも,みんなやっているなら私たちもやろうという意識が強い。それが公的なもの(お墨付きがあるもの)であれば,取り組む可能性がさらに高まる

デジタル化すべき仕事のプロセスとして重要なのは,ものを売るプロセス組織内部で仕事を進めるプロセスの 2 つである。ものを売るプロセスと言うと,まず,思いつくのがアマゾンであろう。これは,B2C であるが,実は,B2B にも適用できる。つまり,日本中の中小企業が,自分たちの製品を売るために e コマースサイトを立ち上げる。そうすれば,日本中の中小企業が,まずは,日本中の企業や人を取引先,つまり,顧客とすることができる。その e コマースサイトが英語対応となれば,世界の企業や人を取引先にすることができる。そんなこと分かってる!と言われるかも知れないが,アイデアはここからである。先に,公的なものであれば取り組む可能性が高くなると言ったが,まさに,ここである。デジタル庁が,その e コマースのインフラを提供する。つまり,e コマースサイトのソフトウェアの開発を先導し,そして,そのサービスを提供する。ただし,デジタル庁は,これまでと同じ轍を踏んではならない。言い換えると,このソフトウェア開発を日本の大手 IT 企業にやらせてはいけない。ソフトウェア開発の分野では,オープンソースの方が,スピード,コスト,そして信頼性,全ての面でプリプライエタリのソフトウェアを上回るということが知られている。中小企業の生産性を向上するための資金が,日本の大手 IT 企業の経営を助けるために使われては本末転倒である。オープンソースにしても,外国の誰も日本語 e コマースサイト構築のソフトを欲しいとは思わない。次に,このサービスの提供は,アマゾンの AWS サービスと同じと考えれば簡単だ。むしろ,最初は AWS でよいかも知れない。サーバ上に e コマースのインフラを構築した状態で,中小企業にサービスを提供する。中小企業は,パソコン 1 台で始められる。投資は不要だ。

もうひとつのデジタル化すべきプロセスである組織内部での仕事のプロセスはどうか。完全にアメリカに先を越された。最近,Slack, Microsoft Teams などのチームコラボレーションツールを使っているが,驚くほどの生産性向上である。例えば,同じ会社の別の部署に仕事の連絡をするとき,通常は,メールを使うのが一般的であろう。まず,メールアドレスを検索して,文章の最初に 〜部〜課 〜様 から始まって「お疲れさまです」なんて打ったりする。cc: が多い場合には,あの人にも cc: しなきゃなんて気を遣わなければならない。でも,チームコラボレーションツールを使えば,仕事ごとにチャネルが作られているので,そこのビジネスチャットに用件のみを書くだけ。添付ファイルも共有しているので,メールでやりとりして,いちいちセーブしてそこに書き足して送り返すのではなく,チャネル内で共有しているひとつのファイルをお互いに編集する。そして,そのチャットとファイルが連携することで,チャットによる用件とファイルによる作業が有機的に連携する。チームのメンバーは,誰でもチャットを見ることができるから cc: の心配もない。その他,仕事ごとに目標を設定して,それがどのくらい達成されているのかを,あらゆる角度から可視化するツールや,各人からの報告を自動的にエクセルに取りまとめるツール,日本人の大好きな順番に承認していくツールまである。このチームコラボレーションツールの日本版を,デジタル庁が先導して開発し,中小企業に提供するのである。Slack, Teams と聞いて二の足を踏む中小企業経営者も,デジタル庁謹製ということになれば,ちょっとやってみようかなということになる。ここでもう一回言っておきたいことは,やはり,オープンソースで開発することである。生産性向上は,中小企業のためであり,日本の大手 IT 企業の経営を助けることにすり替わってはいけない。

以上,中小企業の生産性向上のための私案を書いてみた。是非,noter の皆さんの意見が欲しい。例えば,YouTube を活用した使い方の啓蒙などのアイデアも出して欲しい。そして,note 上で,e コマースサイト構築ソフトウェアやチームコラボレーションツールのオープンソース開発が進んだら面白いと思っている。

最後に,2 倍の生産性向上と聞くと,ものすごく忙しい状況を思い浮かべる人がいるかも知れないので,誤解を解いておきたい。生産性向上には「不要な仕事を省略すること」と「機械の力を借りること」(デジタル化)が必須である。むしろ,不要な仕事を省略せず,機械の力も借りずに人力でやろうとするから忙しくなる。実は,これが現状だ。単純な例であるが,仕事のメールを 1 通書く時間で,仕事のチャットを 2 つ以上投稿することができれば生産性は倍ということになる。しかもチャットであれば,添付ファイルであるエクセル表などと有機的に連携しており,そのやりとりはさらに効率的となる。

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