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日本はもはや豊かな国ではない

今年も(公財)日本生産性本部の労働生産性の国際比較が発表された。

https://www.jpc-net.jp/research/detail/005009.html

経済協力開発機構 (OECD) 加盟国,つまり,比較的豊かな37ヶ国での比較の結果だ。その最新データとして,2019年の各国の数字が示されているから,以下,それに基づいて話を進めたい。

その国に住む人が豊かかどうかを見るには,ひとり当たりの指標を見るとよい。まず,ひとり当たりの年間 GDP,つまり,その国に住むひとりがこの一年間に稼ぎ出した金額で比較すると,日本は 37 ヶ国中 21 位。お隣の韓国は 22 位でほとんど同じだ。次にひとり当たりの年間の労働生産性で比較すると,日本は 26 位,ちなみに韓国は 24 位で日本より高い。さらに,時間あたりの労働生産性となると,日本は 21 位,韓国は 31 位となる。これらの数字を簡単にまとめると,インフラ投資など過去の蓄積も使って 1 年間に稼ぎ出す金額という意味では,日本と韓国はほぼ互角。働き方改革の成果もあってか,1 時間あたりの生産性では,日本は韓国よりも上位であるが,残業も含めて年間の生産性となると韓国の方が上ということになる。文化的にも比較的近いお隣の国との比較はこんな感じであるが,もっと大切なことは,ニュースで見るようないわゆる欧米の先進国は,全て日本,韓国より上位で,その下に位置するのは OECD 加盟国とはいってもちよっと豊かとは思えない国々であるということだ。つまり,日本,韓国は,いわゆる先進国の最底辺の豊かさということになる。ただし,日本は GDP でいうと 1990 年の 8 位からどんどん順位を下げていて,下降中であることにも注意が必要だ。

別に順位なんか気にせず,その国で幸せに生きていければ,それでいいじゃないかという人もいるだろう。ただ,もう少し想像力を持ってほしい。日本と同様に順位をどんどん下げている国にイタリアがある。ひとり当たりの稼ぐ力が下がると,税収が減るなどして社会インフラに回すお金が減る。このため,イタリアは,病院を維持することができなくなり,統廃合を進めていた。そこに感染拡大が来て医療崩壊。同じような条件であっても経済的に元気なドイツでは医療崩壊は生じない。つまり,国の豊かさは,生死にもかかわることなのである。

記事「本気で中小企業の生産性向上について考えてみた」

に続く。

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