「まあいいや」の呪い。
「まあいいや」という言葉は本当に恐ろしいな、と。
「おじさんがする嫌な行動」と言えばいろいろあると思うが、僕が一番嫌悪感を抱いていたのが「指をなめる」という行為だ。
新聞しかり、お札しかり、文庫本しかり。僕が子供の頃に見てきたおじさん達で圧倒的に嫌だった行為がこの「指をなめる」だった。
今でも「おじさんの嫌な行動ランキング」みたいなものを見ると、指をなめる行為はランクインするほどなので、これは僕だけではなく世間一般的に嫌がられている行為なのだろう。
たとえそれが身内ではなく赤の他人がしていたとしても、あまり周りはいい気分にならないのである。
そんな大人になるものか。僕は最後までかっこいいおじさんでいるぞと子供の頃に誓いを立てて今まで生きてきたのだが、最近これが破られつつある。
ビニール袋がめくれないのだ。
環境保全の影響でスーパーやコンビニでもらえるビニール袋が数年前から有料になったので、僕はビニール袋をホームセンターで買って節約しているのだが、このホームセンターのビニール袋がなかなかに強者で一向にめくれてくれない。
あれだけ油分のあった肌も、年とともに干からびてきたのだろう。サラッサラでカスッカス。どう頑張ってもめくれないのだ。
それでもなんとか頑張って、雨の日は車の窓についた水滴で指を濡らしてみたりと「おじさんの嫌な行動」を取らずに獅子奮迅の戦いを見せてきたのだが、いよいよ最近限界がきた。
そう。指をなめ始めたのだ。
だって、そっちの方が早いんだもん。
この時の心境は「まあ、人が見てる前で指をなめなきゃいいや」くらいに思っていたのだが、おそらくこれもそのうち「まあいいや」と人前でもなめるようになるのだろう。
「まあいいや」という言葉は、人を老化させる一番の呪言なのだ。
とりあえず、今はなんとかビニール袋だけにとどまり、本や新聞などの紙類はなんとかギリギリ保っている指の油分でめくれるが、これもそのうち枯渇するのだろう。僕は年々干からびてゆく。アジの気持ちがよくわかるぜ。
ということで、僕は少しでも老化を防ぎ、かっこいいおじさんでい続けるために、この「まあいいや」という言葉を使わないようにしたいと思います。
でも、アジと言えばアレですよね。
あのー、ほら、最近の、
あれ、何を言おうとしてたんだっけ。
まあ、いいや。
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