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心地よい手間 「没頭するための要素 」

※本投稿は株式会社デンソーデザイン部の自主研究活動であり、
弊社の開発案件や事業をご紹介するものではありません

こんにちは、株式会社デンソー 先行デザインチームのモリカワです。

プロフィール


前回までは、「不便益」のリサーチを通して、私が考える「心地よい手間」の条件を整理してきました。

今回は、「フロー体験」の話を交え、人はどんなことに没頭するのか?という部分を整理し、今後どんな研究にするのかをご紹介します。

フロー体験

「フロー体験」とは、自分が取り組む対象に心理的エネルギーを集中させている状態(スポーツでいうゾーンに入る)を指し、その状態にある人は強い楽しみを感じることや、自分の限界を引き延ばし成長することができるとされています。
その構成要素のうち、私が注目している内容を要約したのが次の6点です。

・適度な難易度の課題であること
・自己統制感があること
・リアルタイムで直接的なフィードバックがあること
・集中の邪魔をする外乱がないこと
・自分にとって価値のある活動であること
・明確な目標を持てること

この他にも、「時間感覚のゆがみ」や「自己認識感覚の低下」などが構成要素として挙げられますが、「気づけば時間が過ぎていた」というような感覚は、何かに没頭した結果、副次的に発生するものだと考えられます。
なので今回は、没頭に至る前提として必要な要素という観点で選びました。

前半3点は私が「不便益」のリサーチを通して整理してきた「心地よい手間」の条件に通じる部分が多く、没頭して楽しさを感じるには「手間」が必要ではないか?という仮説を補強する情報を得られました。

そして後半3点から、「手間」の「内容」と同じくらい「動機づけ」が重要になること見えてきました。

適切な動機づけ

実は「手間」に魅力を感じ研究を始めた私も、「手間」は嫌な物事である方が多いです。

例えば、
・オフィスで備品を購入するのに関係各所に許可を取りに回る
・定期的な業務報告の為に資料をまとめる
・食事の後の皿洗い
などなど、嫌な事を挙げればきりがありません。
皿洗いに関しては、手の込んだ料理を作ることは好きなくせに、自分でもわがままな性格だと思います。

いったい「好きな手間」と「嫌な手間」の違いは何なのか?

それが前章で触れた「動機づけ」が成功しているかどうかだと考えています。

料理を作ることが好きな私が、皿洗いの重要性を理解しつつも好きになれないように、人それぞれの属性に応じたツボが有り、ツボにハマらない限り、「手間」は苦痛にしかならないのではないでしょうか?

今後の研究について

これまでの学びから、私が漠然と良さを感じていた「心地よい手間」に対して、手間の内容に必要な条件動機づけの重要性が見えてきました。
次回からは、この2つを軸に次のような実験のフェーズに移りたいと考えております。

「手間の内容に必要な条件」に関する実験
 ・「手間」の質・量による没頭度の変化
 ・ヴァーチャルとリアルによる違い
 ・自動化ならではの楽しさはあるか?
など
「動機づけの重要性」に関する実験
 ・心理テストを用いた属性分類
 ・属性ごとの「手間」のマッチングテスト
など

これまでは、文献リサーチがベースの文字ばかりの記事になっておりましたが、次回からは実験準備の風景を含め、楽しい情報を共有できればと思います。
最後までご覧いただき、有難うございました。
また宜しくお願いします。

本記事の参考文献