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居残りとお菓子②

数年前そのエピソードを何気なく兄に話しました
とても気持ち悪がられたのと同時に
お前は小さい時からそういう不気味さを醸し出していた、と言われました

僕からすると兄はいかにも善良な市民です
道徳を重んじ、夢に向かって努力する
幸せな将来の為に勉強し働く
当たり前の事を当たり前にこなす
聖人のような存在です

はっきり言ってそんな真っ当な人間の方がよっぽど不気味に見える
そんな風に言い返すとこれまたそういう所が気持ち悪いと言われてしまいました
ごもっともです




寂しい振りをするとお菓子が貰える
被害者(のように見える)でいると周りが構ってくれる
よくある構図です

しかし僕はそこまでそれに味を占めませんでした

保育士さんがお菓子をくれるのは僕がグズったりすると疲れるからです
母がお菓子を買ってくれるのは罪滅ぼしの意識からです

保身という立ち振る舞いに気付いてきたのです


途中からは保育士さんも構ってくれなくなりました
僕があまり寂しがっている様子ではないとわかったからです

むしろラッキーでした
放っておいて欲しいくらいです
一人遊びの楽しい時間はお菓子のある無しに関わりません

母も同じです
お菓子をこっそり買ってもらった事が家に帰って兄弟にバレると、お前だけズルい!と怒られたからです
そんな事になるなら別にお菓子は要りません

そうして僕の居残りの時間はただの延長された閉鎖空間になりました
それでいいのです

おかげで保育所の端から端に渡ってプラレールを淡々と作り上げることが出来たから満足です
ままごとも大声で一人で好きな役を好きな展開で演じられたので満足です

片付けて、また次の朝友達に会います
居残り中僕が何をして遊んでいたかを知りません
満足した僕は今日、人気のオモチャの奪い合いに参加しません
高みの見物です

今の僕にお菓子を与えるのは僕だけです

さて電子花壇は寂しそうに見えるでしょうか

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