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古書店に入った

少し前の出来事📕

外出、用事を済ませて真っ直ぐ帰らずに散歩がてら街をフラフラ

古書店を見つけた
路面店ではなく、年季の入った雑居ビルの2階
ビルの前に出ていた看板が目に止まった
とても素敵な名前の店だったので興味をそそった

誘われるように暗く急な階段を登って店に入ってみた

店主らしき人が一人
レジの奥で買取した本の検品をしてる様子
入店した僕をチラッとだけ見てまた作業に戻る
小さめなBGM、形容しがたい音楽
前衛音楽とボサノバを足して割ってないみたいな変な曲

僕はというと、別に本が欲しかった訳では無い
しかも普段からあまり本を読まないので入ったところで目的もないし、どの棚をどう見ても何も分からない

10分ほど店内をぐるぐる見回って、結局何も買わずに店を出た
結果だけみればただの冷やかし客だっただろう

では何故古書店に入ったのか


それは、僕がまだ運命のような偶然の出会いや
ドラマチックな妄想を捨てきれずにいるからだ

雰囲気のある古書店、ふと立ち寄るとそこには

主人公であり続けたいと望む僕の10代が
脳内で安い小説の書き出しを思いつきだしたのだ

突然の幸運に導かれたい
誰かに、何かに選ばれて特別な存在になりたい、と

だけど平等に突然の不運によって強制的に生命が終了するという危機感を常にちゃんと持っている
僕の20代がそう言い聞かせた

実際、古書店の雰囲気は良かった
古い紙の匂いが充満してて居心地も良かった

だけど僕はもうあの店には行けない
身勝手な 映え に消費される側の気分はあまりいいものではないと憂慮している

もちろん店主からするとなんの記憶にも残らない客だっただろう
だけど僕はあの店主、あの空間を汚したくはない
僅かなリスクも取りたくない
もう二度と行かない

元から一人ぼっちなのに
改めて一人ぼっちになった気がした

おわり

2024/4/22 夕方のこと

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