「カ」

蚊が飛んできた。もちろん俺はそれをはたき見事仕留めた。俺の手のひらでは賊が盗った俺の血がたらたら流れているじゃないか。しかし俺は「これ、あなたにお返しいたします」なんて蚊が言っているとは思えない。言っているとすれば「くそぅてめえがはたきさえしなかったらこの血をもって子作りできたんだがなあ」という盗人猛々しい文句だ。俺はむかついたので、その血、俺の血を、蚊をどかしてペロペロ舐めた。蚊の死骸はその拍子に床に落ち、埃やゴミと同じ部類に分類された。

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