インドの名所っぽい名前のカレー屋を巡りインドへ旅行した気になってみた
人生観を変えたい。30歳を過ぎると大抵のことには驚きや発見がなくなる。
いや、なくなるわけではないのだが、ある程度予想がつくのだ。この感動はあの時の〇〇に近いなとかこの体験の楽しさって〇〇みたいとか。
僕の中での圧倒的な人生観の変化は『中学2年の時、町にすき家ができたこと』に他ない。北陸の片田舎に産まれた僕にとって初めて食べた牛丼の味は人生観が変わる衝撃だった。
僕だけでなく、学校中の人間が衝撃を受けていた。3種のチーズ牛丼なんて美味しいを通り越して恐ろしかった。こんな食べ物がこの世にあっていいのか。僕の人生を二分化するならばすき家前・すき家後に分かれるだろう。
前置きが長くなってしまったが、そんな過去の経験とも紐づかない人生観をひっくり返す出来事はないものか…。調べると『インドへ行くと人生観が変わる』というフレーズにぶち当たる。
インドか。確かに行きたい。ただこれまた30歳を過ぎると、いろいろと億劫になる。海外旅行にえいやっ!と行く気概も気力もない。どうしたものかと思っていたら、タージマハルを発見したのだ。
そう思うとタージマハルってカレー屋、何度か見たことがあるな。もしかしたらインドの名所っぽいカレー屋は日本にたくさんあって、そこを巡ることで海外に行かずとも手軽にインド旅行した気持ちになるのでは…。よしっ!やってみよう。あわよくば人生観が変わることを祈って。
旅行の計画を立てる
そうと決まれば旅行先を決めよう。ポイントは下の条件を満たすこと。
①インドの名所っぽい名前であること、②カレー屋として存在すること
そのうえで考えた行き先リストはこんな感じ。
まずはタージマハルをグーグルマップで検索してみる。
面白かったのが、タージ・マハール富山本店。恐らく本店はインドのタージマハルだ。
関東近郊だけでも多種多様なタージマハルがあった。気になるのはタージマハルの正式な呼び方問題。磯野貴理子さんが磯野貴理に改名して再び磯野貴理子に名前を戻したようにタージマハルも色々複雑なんだろうな。
ひとまず関東近郊いずれかのタージマハルは訪ねることができそう。
次はガンジス川。
調べてびっくり!静岡を中心に12店舗構える『インド料理ガンジス川』というチェーン店の存在を知る。地図を見て駿河湾沿いに複数店舗を構えているところにガンジス川へのリスペクトが伺えてとても良い。が、今回は日程的に静岡へ行くのは厳しいため『ガンジス』でも探してみる。
ガンジスもあった〜!やったー!こんな風に自分の都合とにらめっこしながら旅の予定を組む時間が楽しかったんだよなと改めて旅の魅力を思い出す。
最後はデリーとムンバイ。
まずはデリー。
そしてムンバイ。
最初の予想通り、地名のカレー屋は複数あった。今回はインドの名所っぽい料理店を巡る旅だが、これ世界の名所っぽい料理店でもいけるんじゃない!?
世界旅行の楽しみが増え、ワクワクが止まらない。
そんな訳で今回の行き先は下表の通り。
さて、行き先が決まれば、あとは当日まで妄想を膨らますだけだ。
ニューデリ
東京で連日のように35℃を超えた8月上旬の朝9時。僕は登戸駅からほど近いニューデリに来ていた。
ちなみにインドの8月の平均気温は28℃〜33℃。うん、本当にインド旅行だな、これは。
実は大学時代2年ほど登戸に住んでおり、ニューデリは何度も来たことがある。サグ(ほうれん草)チキンカレーがとても美味しかった。
学生の頃は味を求めて通っていたからこそ、インドっぽさには注目をしたことがない。今日は時間的にお店がまだ空いていないため、がっつり外観からインドを感じることにしよう。
看板にはニューデリの店名の後ろにタージマハルが描かれている。
そう考えると海外でTOKYOって店を出すなら富士山か忍者を後ろに描くと良いのかも。
むしろくっ付けて富士山に登る忍者なんて最高にCOOLだ。
海外ではやり過ぎくらいがちょうど良い。
インドは世界遺産の数がアジアで2番目に多い。ちなみにタージマハルやアーグラ城塞などに代表される歴史的建造物が主とのこと。そんな基礎知識を念頭に置くと看板の隣にあるスタンド灰皿も何かインドにある建造物に見えてくる不思議。
何が良いってこれだけのインドに触れられるニューデリの隣が「なの花薬局」だということ。Googleマップの発達で世界中どこでもオンライン旅行できるようになった。テクノロジーはとっても凄い。
ただ何の技術がなくとも、自分の住むエリアからほんの少し足を伸ばすだけで異文化は感じることができるのだ。
ガンジス
さぁ、ここからは観光名所であり、ヒンドゥー教徒から聖なる川として崇められるガンジス(川)へ向かう。
ガンジスは創業70年。ちなみにガンジス川に関する情報はインダス文明末期からあるらしく、紀元前1900年頃から流れていたのではないかとのこと。ガンジス川、全長も長けりゃ(2525キロ)、歴史も長い。
本日の日替わりを発見!!!皆さん分かりますか?ガンジスのひがわりですよ。これ、「ガンジスがわ」ってことですよ。やったー!!!あれ?僕1人だけ興奮してます?旅のテンション合わせてください。
外観が良すぎて、なかなか店内に入れず申し訳ない。ただ、このオススメ紹介の看板をよーく見てほしいんです。
これ、チキンカツも福神漬もサラダも何かの画像を切り抜いたものを上から貼りつけているんです。
なんで??目玉のメニューじゃないの??
チキンカツは切り抜きめっちゃ頑張ったけど、福神漬でやや集中が切れてサラダ適当になってません!?
僕はこういう海外の「だいたい合ってればオッケーでしょ」と言わんばかりの大味な感じが大好きだ。
どうですか…?これがインドじゃなかったらどこなのさって位のインドを味わえたのではないでしょうか?
…でも、こんなもんじゃないんですよ。
あぁ、幸せだ。ここがインドではないなんてことがあろうか、いやない。
思わず反語が出るくらい、僕は全身でインドを感じている。
驚くことに、この壁画にもタージマハルが!
インドの人々にとって大切なものであることが伺える。
そして、待望のお昼ご飯。カレー2種類はもちろん、ひがわりカレーの牛スジを選択。僕のスプーンがカレーという川を沐浴。
肝心の味は…もちろん美味しい。僕は居酒屋にあれば必ずと言っていいほど牛すじ煮込みを頼む。店によって醤油・塩・味噌…それぞれの味付けで提供されるが、牛すじはどの味付けとも相性が良いのだ。
そんな全盛期の松井稼頭央ばりのユーティリティプレイヤーな牛すじがメンバー全員を活かしながら、味という能力を高めてくれるカレーと組むのだから、もうたまらない。
赤木と木暮がずっと支えてきたカレーという土台に牛すじという花道が加わった…それがこのガンジスのカレーなんですよ。
僕は小学校の給食で牛乳を一番最後に飲む子どもだった。主食がパンの時ならまだ分かるが、どうしてもご飯と牛乳が合うとは思えなかったからだ。ただ、ラッシー…君はご飯とも合わせられる気がするよ。
それはインドに来たようなこの感覚がそうさせるのか、ラッシーの爽やかな後味なのか。答えは分からないが、とても満たされたランチだ。
また来よう、今度はベリーダンスの時に。
タージマハル
いよいよ、最後はタージマハル。
ここまで名所まわる中、
描かれていたので期待高まる。
思わず韻を踏みつつ、店内へin。
ニューデリ・ガンジスとも違う高級感のある店内。海外旅行の最終日、少し背伸びしてこんなお店に入ったなぁ。
大学2年生の時、初めて香港に一人旅をした。とにかく不安だし、心細かった。当時の彼女から「寂しくなったら読んでね」と渡してもらった手紙は香港の空港で読んだ。5行くらいだし、内容もないものだったが、泣いた。
そんなセンチメンタルジャーニーよろしくな中でジェスチャーと拙い英語を駆使して、ビビりながらも少しずつ異国の地を楽しんでいた1週間。乗り切った後の高級感のある中華料理屋さんは不思議な達成感があった。
そんな風に思い出に浸っていると、バターチキンカレーが到着。僕はバターチキンカレーには全幅の信頼を寄せている。大学時代に無印良品のバターチキンカレーを食べた時の衝撃は今でも忘れられない。
この味が、無印良品…いや全国のファミリーマートで手に入れることができるとは世の中は恐ろしいと恐れおののいたものだ。
もちろん、ここタージマハルのバターチキンカレーも抜群だった。いくつものスパイスとバターの濃厚さが折り重なった深い味わいがたまらない。「重ね重ね申し訳ございません。」と何度も謝る僕なんか比にならないくらい、味わいが折り重なっている。
食べ物を食べ物で例えてしまい恐縮だが、ドトールのミルクレープと良い勝負の折り重なり方だ。
日に2度ラッシーを飲むのは初体験だったが、ラッシーは何回飲んでも美味しい。そして、飲みながら今日の旅行を振り返るこの時間…まさに至福だ。
この旅行、物理的な移動距離でいうと30キロ弱。ただ、心の移動距離でいうとインドまで確実に行っている。
いや、インドだけじゃない。以前、自身が訪れた旅行先を振り返ることの出来るむちゃくちゃ良い時間になっている。
海外旅行好きの皆さん、手軽に海外の雰囲気を味わいつつ、過去の楽しかった旅行を思い出せるので、是非やってみてください~!!
後日談
今回のインドの名所っぽい店名旅行は最高に楽しかったが、もう一つのテーマであった『人生観が変わったのか』についても述べておきたい。
結論から言うと人生観は変わらなかった。
ただ、小さな変化はある。
分からない名前のインド料理屋を調べるようになったのだ。
サンガムはガンジス川とヤムナー川、サラスヴァニティー川の合流する地点の名前。インドの中で最高の聖地と呼ばれることもあるらしい(*諸説あり)。恐らく使うことのない知識を主体的に調べる時間はいつだってたまらなく幸せだ。
この旅行をしない限り、僕はこんな風に調べることはなかった。
人生観が大きく変わることなんて、今後も起きないかもしれない。
でも小さく小さく、くだらないことで自分を変えていく…そんな日々には出来るのかも。
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