心のサポーターに期待したい

心のサポーター100万人養成?

まだ正式リリースがなく独自情報状態なので、あまり注目されないのは仕方がないのかもしれませんが、このようなニュースがありました。

 厚生労働省は今年度から、うつ病などの精神疾患や心の不調に悩む人を支える「心のサポーター(ここサポ)」の養成を始める。精神疾患への偏見や差別を解消し、地域で安心して暮らせる社会の実現につなげるねらいだ。自治体の住民向け講座を通じて養成し、2033年度末までに100万人の確保を目指す。 引用:【独自】「心のサポーター」100万人養成…うつ病など不調に悩む人、地域で支援

yahooニュースのコメント欄などを拝見すると、だいぶ批判的なコメントが多いです。批判的な中には「公認心理師ができたばかりなのに、またあたらしい資格を作るのか」とか、「やりがい搾取をするだけなのではないか」といった意見がみられました。

個人的には、何事も否定するのではなく「どう生かすか」しか考えないので、この話題についても肯定的に考えています。

心のサポーターは「やりがい搾取」や「公認心理師の代わり」ではない

まず、心のサポーターについては、以下の資料に記載されています。

厚生労働省:障害保健福祉関係主管課長会議資料(令和3年3月12日)
心のサポーター養成事業(新)
精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムを構築する上では、地域住
民の理解や支えも重要であるが、「精神障害に対応した地域包括ケアシステ
ムの構築推進事業」を活用した普及啓発事業を行っている自治体数は3割程
度と低く、また、双方向的なものは少ない。
そのため、令和3年度から新たにメンタルヘルス・ファーストエイドの考
2え方に基づいた「心のサポーター養成事業」を全国8ヶ所程度でモデル的に実施することとしている。
心のサポーターは、メンタルヘルスの問題を抱える家族の方やその同僚などに対する、傾聴を中心とした支援者のことを指しており、各地域で心のサポーターが養成されていくことで、地域における普及啓発にも寄与し、精神疾患の予防や早期介入につながるものと考えている。
なお、メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方を活用している例として、自殺対策におけるゲートキーパー養成が挙げられ、専門性の有無にかか
わらず支援の輪が広がっている。また、地域住民が支援の輪に入る取組とし
て認知症サポーターの養成が進められている。
「心のサポーター養成事業」の実施等については、当課から改めてご案内するが、令和3年度の春~夏頃の開始を予定している。本事業では、都道府県等において養成研修を実施いただく予定であり、国が委託する事業実施団体が講師の派遣や研修プログラム、資格認定証の準備などの支援を予定している。実施いただく都道府県等に極力費用負担が生じないよう検討しているので、本事業の実施について、ご検討いただきたい。

これを見ると、「心のサポーター」は
・地域包括ケアシステム構築の一環として
・メンタルヘルスファーストエイドの考え方に基づき
・専門性の有無にかかわらず、地域住民の支援として
創設されることがわかります。

ちなみに心のサポーター以前にも地域包括ケアシステムの一環として、文中にも登場する「ゲートキーパー」や、「認知症サポーター」があります。
2005年から養成が始まった認知症サポーターは約1300万人(3月末時点)いるそうです。そう考えると、先の記事にあるように2033年(12年後)までに100万人規模であるならば実現可能でしょうし、堅実な目標設定ですね。
そして、もう一つ大事なことは既に存在する「ゲートキーパー」や「認知症サポーター」がいるから「公認心理師がいらない」とか、「やりがい搾取だ」といった実際の話を私は聞いたことがありません。つまり、いま危惧されている「心のサポーター」についても公認心理師とのすみわけや、やりがい搾取の問題といったことは、ほとんど心配しなくてよいでしょう。

心のサポーターの狙いと期待

メンタルヘルス不調の人が職場や家族・地域にいた場合、周囲の人も精神疾患などに誤解や偏見があったのでは適切な声掛けができません。その結果「自分の対応が本当に正しいのだろうか」と悩んだり、「あのとき、こうしておけばよかった」と後悔される人を多く知っています。
メンタルヘルス不調の本人も不調の自覚がなかったり、不調の自覚があっても治療に否定的な場合も多いです。
このような時に、そばにいる誰かが声をかけ、治療など適切な対応を進めること、これが心のサポーターの役割だと考えます。つまり、メンタルヘルス不調者への対応についての正しい知識を身に着け、不適切な対応をせず、必要なリソースを紹介する。その結果、周囲の人は迷わず、抱え込まず、後悔しない対応ができます。

もちろん、メンタルヘルス不調者への対応に唯一絶対の正解などはありませんし、うまくいかないこともあるでしょう。でも、できる限りのことを行うきっかけに「心のサポーター」はなるでしょう。

今後、より具体的な情報が出てくると思いますので、その都度、またお伝えいたします。
また、この取り組みについて、可能な限り協力したいと考えています。

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