文明とは何ですか?、と聞かれれば多くの人が答えに窮するはずです。19世紀から20世紀に活躍した考古学者のゴードン・チャイルドによれば、文明と非文明の区別をする指標は次の通りです。
1)効果的な食料生産、2)大きな人口、3)職業と階級の分化、4)都市、5)
冶金術、6)文字、7)記念碑的な公共建造物(ピラミッドなど)、8)合理科学の発達、9)支配的な芸術様式
ここに挙げた指標は、文明が出来上がるまでの一連の流れとして理解できます。まず農耕が開始され、効果的な食料生産によって農耕民たちは大きな人口を抱えるようになります。これによって大きな余剰農産物が生まれ、その富を元にして農業以外を生業とするスペシャリストが生まれ、多様な職業に従事する人々が生まれます。また、食糧生産をより効率的にするためには灌漑施設の建設などの土木作業が不可欠であり、これを可能にするために社会の組織化(都市化)が推進されます。さらには、これらの事業はしばしば豊穣などを神に祈るための信仰と結びつき・・・、といった具合です。
ただし、これらの指標はあくまでも一例であって、一部の指標を満たさない文明も存在していました。エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明などのいわゆる四大文明は、これらの9つの指標を満足していますが、中央アメリカのアンデス文明は文字を持っていません。また、アステカ文明やマヤ文明では、冶金術が鉄器レベルまでには達していませんでした。
文明と似た言葉に文化(カルチャー)というのがあります。こちらも定義が難しいのですが、短く言えば『社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体』のことです。具体的には、言語・習俗・道徳・宗教・種々の制度などがそれに当たります。文化は国家や宗教レベルで語られることが多いので、アメリカ文化、イスラム文化、日本文化などと呼ばれます。
文化の中には、文化の一部分を構成して独自性を持つものがあり、それをサブカルチャー(略称・サブカル)と呼びます。サブカルチャーの対義語は、高度なカルチャーということでハイカルチャーと言います。日本ではサブカルチャーが発生・進化しやすようです。能や歌舞伎は今でこそ伝統芸能ですが、始まった当初はサブカルでした。サブカルの種類は様々ですが、アニメ、アイドル、声優、特撮、ライトノベル、コスプレ等々、列挙したらキリがありません。
ハイカルチャー(と考えられているもの)が受け手側にある程度の素養・教養を要求するのに対し、サブカルチャーは受け手を選別しません。つまり、サブカルは参入障壁が低く、本人の好き/嫌いに依存します。そのため、サブカルチャーは、ハイカルチャーより下に見られがちです。しかし、サブカル/ハイカルに貴賎はありません。サブカルの中でもアニメやコスプレは、いまや世界的に認知されています。無駄こそ文化だ!。
最近、日本の科学技術の凋落傾向が報じられることが多いようですが、技術立国を標榜している日本としては由々しき問題です。どうやら、日本人の関心が”科学技術”に向いていないようです。”スキの力”は偉大です。科学が熱烈にスキと言える”科学オタク”を育てないことには、日本の未来は厳しいものになるでしょう。いまこそ”スキの力”が問われているような気がします。
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