花札の絵柄にもなっているように、イノシシ(猪)とシカ(鹿)は日本人に馴染みの深い動物です。おそらく、縄文時代の狩猟でも狩りのターゲットになって、我々のご先祖の胃袋を満たしたことでしょう。
ところで、イノシシというのは”イ(猪)という動物のシシ(肉)”という意味だというのを、知っていますか?。元々イノシシは、1音の”イ”と呼ばれていました。十二支を順番に言えば「ネ、ウシ、トラ、・・・、トリ、イヌ、イ」となり、イノシシが最後に来ますが、これはイノシシを省略しているのではなく、元々こう呼んでいたのです。しかし、イと言えばその肉が連想されるので、いつしか”イのシシ(肉)”という呼び名が定着しました。シシ(肉)は現在ではあまり使われなくなりましたが、肉付きが良いという意味の”太り肉(ふとりじし)”という日本語に、その姿を残しています。
実は、シカも同じような経緯で”シカ”と呼ばれるようになりました。シカも元々は、1音の”カ”と呼ばれていました。しかしその後、イノシシと同じ理由で”カのシシ(肉)”と呼ばれるようになりました。こちらは、カノシシがひっくり返って、さらに短くなり、シカと呼ばれるようになったようです。
縄文時代は、”イ”も”カ”も良く食べられていたのでしょうが、仏教が伝来して庶民に普及していくと、動物、とくに四足獣を食べることが憚られるようになります。しかし、伝統的な食習慣は急には変えられません。イノシシはモモンジイ(年取ったモモンガ)と言い換えて、鳥として食べていたし、ウサギも鵜(ウ)鷺(サギ)と言い換えて、同じように鳥と(解釈)して食べていました。全く、詐欺(サギ)のような話です。
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