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ウィルスの有効活用!

コロナウイルスやサル痘ウイルスなど、人類の健康を脅かす新しいウイルスが次々と出てきています。強毒性のウイルスは人類の脅威ですが、そこまで毒性のないウイルスは、人類と共存してきました。近年、ゲノム解析技術が向上してきて、安価に遺伝子の配列が調べられるようになりました。すると人間の遺伝子には、ウイルス由来と考えられる遺伝子配列が数多く残されていることが判ってきました。

人類が進化する過程のどこかで、ウイルスに感染し、そのウイルスが遺伝子内に居座っているのです。ウイルスは宿主である人類を滅ぼしては、自分たちの繁栄(増殖)はないので、宿主を殺さない程度に生き延びる戦略を取ります。その成果の一部が、他の生物の遺伝子内への侵入です。ウイルスではありませんが、細胞内でエネルギーを供給するミトコンドリアは、太古では別の生物であったと考えられています。

ウイルスの特徴として、その強い感染力が挙げられます。近年、ウイルスの強い感染力を使った治療法が開発されつつあります。この遺伝子治療の概要は、次の通りです。まず感染力の強いウイルスを見つけて、病気を発症しないように無毒化します。次に、このウイルス中に癌細胞だけを攻撃するような遺伝子を組み込みます。こうやって改造したウイルスを注射などで、体内にいれます。うまく行くと、この人工ウイルスが癌細胞だけを攻撃します。テレビの特集で見た時には、脳腫瘍や悪性リンパ腫などの癌の治療に効果をあげていました。

癌以外にも、このような遺伝子治療は有効なようです。パーキンソン病などの遺伝性の疾病は、今のところ治療法がありません。このような病気は、遺伝子の一部が欠落していたり、働かなくなっているのが原因だと考えられています。番組で見たのは、遺伝的に運動神経が働きにくい遺伝性の病気でした。この病気を追って生まれた子供は、筋肉がうまく使えないので、2歳くらいまでしか生きられないとのことでした。しかし、運動神経を活性化する遺伝子を組み込んだウイルスを使った治療では、運動機能が改善され、普通の子供と同じようにすくすくと育っていました。

ウイルスを使った遺伝子治療は、まだ万能ではありません。しかし、さらに遺伝子治療の技術が進めば、普通の病気で人間が亡くなることは難しくなる時代が来るかもしれませんね。

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