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絵の無いマンガ#3 『人には言えない副業』

副業とは、兼業やサイドビジネスとも呼ばれ、本業以外の仕事で収入を得ることを意味する。日本では明確に法律で副業が禁止されているわけではないが、俺には人には言えない副業がある。

俺の現在の本業は、IT関連企業での契約社員だ。契約社員の雇用条件は、正社員と比べるとやや劣るが、会社に忠誠心の無い俺にしたら、自分のスキルが活かせて自由が利く理想的な働き方だ。俺の名前は鈴木みのる。おそらく日本に100名以上の同姓同名がいそうな平凡な名前だ。最近はキラキラネームのような変わった名前をつける親も多いと聞くが、うちの親は常識人だったようだ。

どこにもあるような、ありふれた話なので、興味があったら読んでくれ。

俺。28歳。フツメン。年収400万。嫁有り。子無し。
嫁。26歳。やや美人。年収300万。物流関係の契約社員。

嫁とは半年前に結婚した。一年前に、会社の同僚が話をもってきた合コンで知り合ったのがキッカケだった。嫁とは趣味も合い、あれよあれよという間に結婚していたというのが実感だ。お互いに両親との関係が良好ではなかったこともあり、結婚式は身近な人だけでおこなった。それでも、嫁は文句を言うこともなく、ハネムーンのような甘い数か月を過ごした。

妻の様子が変わったのは、一か月前からだった。共働きなので、家事は分担していたが、嫁の仕事が忙しいこともあり、嫁の残業が増え、俺が家事を負担することが多くなった。もともと一人暮らしが長く、料理や掃除洗濯には苦労しない。しかし、「今日も疲れた~」といって夜遅くに帰ってきて、俺に辛く当たるのに正直うんざりした。

その日は会社の飲み会があったらしく、嫁はかなり酔って帰って来た。いつもはスマホを手放さない嫁だったが、シャワーを浴びる時にスマホをソファに放り出した。シャワーの途中で何度かスマホが鳴ったので、悪いと思いつつスマホを覗くと、無防備にもロックはかかっておらず、嫁の勤務先の部長からのLINEだった。その内容は、妻の浮気を示す証拠で、俺は思わず自分のスマホでスクショした。

次の日、俺はさっそく興信所に出向いて、妻の浮気の証拠を集めてもらうことにした。LINEのやりとりから、水曜日に会うことが多かったようで、その情報は興信所に伝えておいた。案の定、嫁を尾行した興信所の探偵は、妻と部長がホテルに入っていく証拠写真を撮ることに成功した。また、浮気相手である部長の個人情報も調べてくれた。

俺は、これらの資料を持って弁護士事務所を訪ねた。この弁護士は、離婚問題が得意の弁護士で、「これだけ証拠がそろっていれば、負けることはありません。離婚手続きを進めて、慰謝料を請求しましょう」と言ってくれた。多少のゴタゴタはあったが、嫁への財産分与は無しで慰謝料300万円、不倫相手の部長には慰謝料500万円を要求して一括で支払ってもらった。元嫁は契約社員の仕事をクビとなり、部長は妻と離婚し地方の支社に左遷されたそうだ。

結婚期間は半年間と短かったが、俺の結婚生活が終了した。これで不自由から解放される。ところで、俺の副業は何だって?。気付いている人もいるかもしれないが、俺の副業は”離婚詐欺”だ。この離婚劇は、最初から仕組まれたもので、上司と不倫しているおバカな元嫁をターゲットにしたのだ。興信所の探偵ももちろんグルだ。弁護士の先生だけは、善意の第三者だ。ニセ弁護士を装うのは、それだけで弁護士法に触れるので、そんな危ない橋は渡れない。

二人合わせて800万円の慰謝料はまずまずの収入だ。また、部長の元妻さんからの依頼料200万円を含めると、半年間我慢した甲斐があったというものだ。さあ、もうすぐ契約社員の雇用期間が切れるころだ。そろそろ次の街に引越しする準備を始めよう。

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