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 私の人生を大きく変えたのは、たぶん中三の時の担任の先生です。担任の先生は、数学の先生でしたが、授業の記憶は全くありません。先生には申し訳ないのですが、たぶん、面白くもない真面目な授業だったんだろうと思います。

 進路を決める三者面談の時でした。私の成績は良くも悪くもなかったのですが、市内唯一の高校へは余裕で入れる成績でした。そんなわけで、受験勉強どころか、普段の勉強もほとんどしていませんでした。しかし、三者面談の前に受けた模擬試験の散々な成績が出ていたので、先生から何か言われるなと、覚悟していました。

 三者面談には母が来ていましたが、担任の先生は母への挨拶を済ませると、私に向かって言いました。「高校はこのままでも十分通ると思う。でも大学はどうするんだ?」。頭の中にドカーンと雷が落ちました。私の故郷は田舎で、高校まではありましたが、近くに大学はありません。私の中では、”高校まではみんなが行くみたいだから、行っておこう”ぐらいの感覚でした。両親は中卒でしたし、親戚に大卒の人は一人もいませんでした。また、この時まで、将来のことも全然考えていませんでした。

 そのあとも、先生は一言も勉強しろとは言いませんでした。三者面談は平穏に終わりましたが、なぜか”大学はどうするんだ?”の言葉が頭から離れません。この先生の一言で、「そうか、高校の上には、大学というのがあるんだな」と、はじめて大学を強く意識することになりました。どうして先生がそんなことを言ったのかは、未だにわかりません。最近さぼっているからハッパでもかけてやろう、くらいの軽い気持ちだったのかもしれません。

 その後、私は高校、大学、大学院と進むことになりました。先生の一言が無かったら、大学、ましてや大学院などは考えなかったはずです。先生の何気ない一言で、私の人生は大きく変わりました。

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