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日の丸弁当の思い出

 小学生の時は、好き嫌いの激しい偏食児童だったこともあり、給食が苦手でした。その当時、うちの田舎の中学校はお弁当でしたので、「中学からはお弁当だ!」と楽しみにしていたのですが、私が中学に入学するタイミングで給食センターができて、中学も給食になってしまいました。母親は弁当を作らなくて済むと大喜びでしたが、私は「あと3年も給食か…」とかなりガッカリしました。

 高校になって、やっと弁当になりました。私が通った田舎の高校には食堂(学食)は無く、お昼は弁当か購買部(売店みたいな場所)で買える総菜パンでした。当時、パートで働いていた母は、朝の出勤が早い時間帯でしたが、早起きして弁当を作ってくれました。忙しい中で母が作ってくれた弁当には感謝していますが、自分にとっては普通のオカズだったので強い思い出はありません。しかし、高校の同級生の弁当には強烈な思い出があります。

 高校2年生の時だったと思います。その友達の弁当は、いつもは彼の母親が作っているのですが、その母親が体調不良のため、彼自身が作る羽目になったそうです。料理経験がほとんど無い素人が作れるものは限られています。月曜日は、魚肉ソーセージを炒めたものと卵焼き、それとご飯と梅干といった内容の、オカズがちょっとだけ入った日の丸弁当でした。タイトル画像のような付け合わせ野菜なども無く、ご飯とオカズの割合が8:2のシンプルな弁当でした。火曜日も全く同じ弁当でした。水曜日も木曜日も同じ内容でした。そんなわけで、その友達の弁当が、日を追うごとに周囲の注目を集めるようになりました。

 金曜日のお昼になりました。その友達とは席が離れていたので、「今日も同じかな?」と思いながら、自分の弁当を食べようとしたところ、「ウォー」と大きな歓声が聞こえてきました。例の友達の周辺がザワついています。どうやら今までとは違う弁当だということが、雰囲気で伝わってきました。「一体どんな弁当なんだ?」。ざわざわした雑音の中、「松茸が入ってる~!」と声がします。思わず席を立って、彼の弁当を覗きに行きました。確かに、松茸が入っていました。しかも弁当のおよそ半分、少なくても4割くらいが松茸で埋まっていました。あんな量の松茸を初めて見ました。次の一週間は、その”松茸弁当”の話題で持ちきりでした。

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