映画館で見た初めての映画

 　故郷は田舎なので、映画館はありません。しかし、小学校1-2年生の頃までは小さな映画館がありました。

　当時住んでいた借家には、お風呂がありませんでした。なので、家族で近くの銭湯に通っていました。銭湯の脱衣所には、映画館で上映する映画の宣伝のためのポスターが貼ってありました。子供の頃は恐竜や怪獣が好きだったので、ガメラやゴジラのポスターには心がトキメキました。

　初めて映画館で映画を見たのは、小学1年生の夏休みでした。初めての夏休み前の終業式の時、なぜだか映画の割引券がクラスの生徒全員に配られました。記憶が朧気ですが、同時にチキンラーメンの試供品も配られてたように記憶しています。インスタントラーメンの普及のための戦略だったんでしょうか･･･。理由は全くわかりません。

　割引券の映画タイトルが、この『地球最大の決戦』でした。”三大怪獣”のサブタイトルの通り、ゴジラ、モスラ、ラドンが出てきます。この三大怪獣が協力して、宇宙から来た怪獣キングギドラを倒すというのが、ストーリーです。待て待て、怪獣は4匹じゃないかと思う人も多いでしょうが、キングギドラは宇宙から来た怪獣なので、ドメスティックな三大怪獣には含めません。

　母には、｢学校で券が配られたんだから、行かないと叱られる｣とか奇妙な理由を付けて、何とか行かせてもらうことに成功しました。ただし、弟を連れて行くのが条件です。親になった今ならわかりますが、母は、夏休みで四六時中いる子供達から解放されたかったのだと思います。当時6歳くらいでしたが、百円札を握りしめて、弟と二人で映画館に行きました。

　子供なので、ストーリーは関係ありません。ゴジラやモスラが出てくるだけで大興奮です。それから、双子の歌手ザ・ピーナッツが演じる”インファント島の小美人”に、なんだかドキドキした記憶があります。あのころ、女の子の双子は必ず、｢ザ・ピーナッツみたい｣と言われていました。

　テレビの普及による映画産業の斜陽とともに、地方の映画館がドンドン潰れて行きました。残念ながら、私の田舎の映画館も間もなく閉館しました。