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自分マガジン お薦め本

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私が読んで面白かった本を紹介します。ジャンルは様々です。世間に余り知られていないであろうマイナー本から、メジャーな本まであります。
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#本の紹介

お勧めシリーズ本#6 『百鬼夜行シリーズ』

久しぶりに本の紹介をします。『百鬼夜行シリーズ』は、京極夏彦さんが書いた妖怪をモチーフにした推理小説です。このシリーズには、主人公と呼べる人が数名いますが、謎解き役である古書店主・中禅寺の屋号から京極堂シリーズと呼ばれることも多いようです。しかし、作者の京極先生はシリーズ名を特定はしていないみたいです。 このシリーズに出会ったのは、京極先生のデビュー作である『姑獲鳥の夏』でした。京極先生の書名には難読漢字が多く、ルビが無いとほとんど読めません。これが、このシリーズの一つの特

お勧めシリーズ本#5 『池袋ウエストゲートパーク』シリーズ

  『池袋ウエストゲートパーク』は、石田衣良さんの連作短編小説集シリーズです。 このシリーズは、ここで紹介する必要がないほど、有名なシリーズ本です。 略称はIWGP(=Ikebukuro West Gate Park)ですが、プロレス好きならIWGPが新日本プロレスが開催したIWGP(International Wrestling Grand Prix;国際レスリング大賞)リーグ戦の名称と同じ略称であることがすぐにわかります。 石田さんは、ひょっとするとプロレスファンなのかも

驚きの発想#1『重力への挑戦』

 小説は、ストーリーが面白くなければ印象に残りませんが、状況や主人公の設定自体が面白いと思った本が、結構あります。何回続くかわかりませんが、個人的に面白いと思った作品を少しづつ紹介したいと思います。  サイエンスフィクション(SF; 空想科学小説)は、それこそ発想が自由で、色々な状況や主人公が設定できます。しかし、ホモサピエンスであるSF作家は意外と保守的で、宇宙人(異星人)にもその保守性が色濃く残っています。確かに、多種多様な○○星人がいますが、バルタン星人やメトロン星人

お勧め”シリーズ本”#3 「刑事マルティン・ベック」シリーズ

 今回は、ちょっと渋めの警察小説を紹介します。マルティン・ベックは、マイ・シューヴァルとペール・ヴァールーの夫婦が合作した警察小説に登場する架空の警察官です。アメリカや日本でも、二人の合作によるミステリーはありますが、夫婦合作というのは大変珍しいと思います。また、この物語の舞台は、北欧スウェーデンの首都であるストックホルムです。  マルチン・ベックを主人公とした長編10冊からなるこのシリーズには、「犯罪の物語」というシリーズ名がつけられているそうです。このシリーズ本の邦題は

お勧め”シリーズ本”#2 『徳川家康』

 戦国時代の三英傑の一人・徳川家康は、知らない人がいない超有名な戦国武将です。これまた超有名な豊臣秀吉の死後、関ヶ原の戦いや大坂冬の陣&夏の陣で豊臣氏を滅ぼし、265年間も続く江戸幕府を開いた初代将軍です。  小説『徳川家康』は、歴史小説家の山岡荘八さんが書いた徳川家康が主人公の長編歴史小説です。元々は、新聞に連載された連載小説でしたが、その後18年かけて完成させた大河小説です。この本は、幅広い読者を獲得して、累計5000万部突破という戦後最大のベストセラーとなります。この

お勧め”シリーズ本”#1 『赤頭巾ちゃん気をつけて』

 ”赤頭巾”は、グリム童話などに収録されている有名な童話です。ストーリーの詳細は知らなくても、”赤頭巾”は知っているはずです。でも今ドキ、頭巾という言葉は死語で、ほとんど使われていません。頭巾で思い付く言葉は防空頭巾(今なら防災頭巾?)くらいです。  この赤頭巾をモチーフにした小説が、庄司薫さんの『赤頭巾ちゃん気をつけて』です。庄司さん(男性)は、この小説で1969年の芥川賞を受賞しています。本の中身は、読んでから楽しんでもらうことにして、時代背景だけを掻いつまんで説明しま

お薦めマイナー本#10 さあ 数学しよう!

 今回は、数学嫌いな人が絶対に手に取ることが無いと思われる、数学入門の本を紹介します。本のタイトル(邦題)は『さあ 数学しよう!』です。英語のタイトルはもっとシンプルで、1単語の『MATH!』です。  この本の作者であるサージ・ラング(Serge Lang)は、フランス・パリ生まれのアメリカの数学者です。10代の頃に家族でアメリカへ移住し、1946年カリフォルニア工科大学を卒業後、1951年にプリンストン大学で博士号を取得しました。1955年からシカゴ大学、コロンビア大学、

お薦めマイナー本(番外編) すゞしろ日記

 『すゞしろ日記』は、画家・山口晃さんが描いた漫画エッセイです。私が最初にこの漫画エッセイに出会ったのは、東大出版会が出している『UP』(ユーピー)というPR誌に掲載されたものでした。UP自体が小さなPR誌ですから、この漫画エッセイも小さく、びっしり書かれたセリフを読むのは大変でした。しかし、その面白さから、毎号楽しみにしていました。  山口画伯は緻密で美しい日本画を描く人で、その道では有名ですので、美術系の雑誌ばかりでなくて、漫画の表紙などでも目にすることが出来ます。なの

お薦めマイナー本#8 時の娘

 ルパン3世は有名ですが、リチャード3世は日本ではあまり知られていません。リチャード3世(Richard III)は、ヨーク朝最後のイングランド王で、薔薇戦争の最後を飾る王様です。薔薇戦争とは、赤薔薇が記章のランカスター家と、白薔薇が記章のヨーク家(リチャード3世)が争ったため、後世にそう呼ばれた内乱です。  リチャード3世はシェイクスピアによって、ヨーク朝を滅ぼした後継王朝であるテューダー朝の敵役として稀代の奸物(悪役)に描かれ、その人物像が後世に広く伝わったと言われてい

お薦めマイナー本#7 日高山伏物語

 今回紹介するのは、児童文学にカテゴライズされる『日高山伏物語』です。日高山伏物語は、動物を主人公にした児童文学で有名な椋 鳩十(むく はとじゅう)の作品です。  椋鳩十は鹿児島出身の元・教員で、鹿児島県立図書館長も務めたことのある作家です。私も小学生の頃に、この本を含めて何冊か読んだことがありました。ただし、この日高山伏物語は、椋鳩十の中でも異色な作品です。  日高山伏というので、日高地方の山伏の話かと思ったら、作者の出身地である鹿児島のお話でした。また、山伏を長い間”

お薦めマイナー本#6 ガリバー旅行記

 ガリバーと小人の国の話は、絵本になったりもしているので有名です。しかし、『ガリバー旅行記』を風刺小説としてきちんと読んだ人は少ないと思います。私は大学生の頃にこの本を読んで、断片的ではないガリバー旅行記を知りました。  『ガリヴァー旅行記』は、アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトにより、執筆された風刺小説です。正式な題名はとても長くて、『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』です。この長いタイトルからもわ

お薦めマイナー本#5 ほら吹き男爵の冒険

 『ほら吹き男爵の冒険』は、実在の18世紀のプロイセン貴族・ミュンヒハウゼン男爵が語ったとされる奇想天外な物語を集めたものです。この物語の主人公”ミュンヒハウゼン男爵”ことカール・フリードリヒ・ヒエロニュムスは、現・ドイツの実在の人物です。最初の本は18世紀に書かれましたが、19世紀に数多くの作家たちによって加筆され、さまざまな言語に翻訳されたため、物語には100以上のバリエーションが存在します。映画化もされているので、欧米ではメジャーな読み物ですが、日本ではあまり知られてい

お薦めマイナー本#4 黒後家蜘蛛の会

 この本『黒後家蜘蛛の会』をマイナー本に分類したら、アシモフのファンやミステリーファンに怒られるかもしれません。しかし、一般的にはあまり知られていないと思うので、怒られるのを覚悟で”マイナー本”として紹介します。  アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)は、その著作が500冊以上を数えるアメリカ合衆国の超有名作家です。アシモフが扱うテーマは科学・言語・歴史・聖書など多岐に亘っていますが、特にSFが有名です。アシモフは、アーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインラ

お薦めマイナー本#3 三日月とクロワッサン

 今回は、理系の人には”爆笑必至”のエッセイ集『三日月とクロワッサン』を紹介します。タイトルは女性を意識したようなオシャレな響きがありますが、騙されてはいけません。この本はガチで理系な主に男子にお薦めです。といっても、難しい内容ではないので、誰でも気楽に読めます。  筆者の須藤靖さんは、何と東大大学院理学系の教授で、専門は宇宙物理学です。たぶん(?)その道の大家で、ダークマターの存在などを研究しているそうです。この本は東大出版会というお堅いところが出している『UP(ユーピー