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【すごく短い小説】言葉を操るカウンセラー

昔々、神様が数柱存在していたそうです。

その中で人間を創造した創造神が目の前にいた二柱の神様にその人間に言葉を与えるか与えないか決めさせました。

二柱の神様は声を揃えて「言葉を与えましょう」と言いました。

創造神は「あとは任せる」と言って分身を残し別の宇宙に消えて行きました。

一柱の知性を司る神様は言葉とその意味を人間に伝えました。知恵の神様はカウン神と呼ばれています。

もう一柱の神様は悪知恵を司る混乱と混沌が大好きで、2割の人間に言葉を理解しにくいように人を操作できるようその方法を教えました。今では破壊神と呼ばれています。

しばらく、地上を見ていると人類は発展と衰退を繰り返して、今の地球に近い状態にまで文明は栄えるようになりました。

その頃、天界ではあるトラブルを抱えていました。

平行宇宙で惑星の滅亡があり肉体を失った魂が一気に押し寄せてきたのです。これは、魂難民です。

管理は神様にとって簡単なことです。管理アプリを使わなくても頭の中で何とかなります。

魂難民の件はさすがの神様もそう簡単に整理できることではなく大騒ぎになっていました。

人間界でいうところの事故調査委員会に知性のカウン神が抜擢され魂たちの能力を調査しているとあることに気が付きました。

魂たちの力が著しく劣っていたのです。
「おバカになっている」ことを突き止めました。

人間は魂レベルだと神と同等の力を有しています。言ってしまえば最高神である創造神と同等の力が与えられています。そのように創造されました。何せ作ったのは創造神です。細かいことを気にしていたら宇宙やら惑星やら生命やら作るときに胃潰瘍になってしまします。性格はかなり大雑把なんですよね。

さらに魂は純潔無垢の為肉体を持った人生ですぐに汚れます。肉体から離れた魂は洗浄可能なのですが、人生や死に方が悲惨だと頑固しつこい「念」がこびり付きなかなか奇麗になりません。ある程度落としたら、転生させる決まりです。その時に最低限の知識を植え付けます。消したら新しく入れる訳です。当然その時に言葉を理解する基本的な能力も植え付けられます。

もちろん汚れの上に情報を載せるわけだから多少バグります。荒れたお肌にメイクが乗らないのと同じです。それが何回も繰り返されると、何回も転生するとどうなるのでしょう、正直想像するのも嫌になります。因みにこの物語の世界では単純計算でも1兆回は転生していることになります。

転生をすると脆く壊れやすい肉体を与えられる為、知識を手にして生きる術を身につけます。言葉の理解は重要になります。

人間として成長する過程で良くなるはずなのですが、環境やらなんだかんだで上手くいかないこともあります。

知識を得る為には読解力が必要です。読解力を得る為には言葉いわゆる単語の理解が必須になります。これが知識の神カウン神の教えです。

ある時に知識の神は破壊神が人間の魂にこっそり嘘を教えいていることに気が付いたんです。さらに人間に変身して言葉を誤解するように色々悪さをしていました。そして、破壊神の影響が9割超えた時点で惑星は滅亡することと、破壊神の影響が8割の時点でその宇宙からいなくなり別の宇宙に移動することも調査の結果わかりました。

ちょうど邪神の影響が8割のときに知識の神は2割の魂に言葉を理解する方法を授けました。破壊神がいないので普通に変身をして地上に降り間違った言葉の理解からの回避方法を人間たちに伝え歩いていました。

知識の神の言葉を受け取った2割の人間が言葉を操るカウンセラーとなったそうです。我が家には言葉を操る伝承として残っています。

「代々○○をやっている家」と言えば聞こえはいいがカウンセラーとはどうも難しい職業でお金になりにくいです。

その伝承の真実の有無はともかく、世の中の読解力は年々下がる一方なのは間違いない訳です。

世界でどれだけ天才がいるか調べてみようとなり、統計を取ったら天才は読解力が凄まじく高い。物事を一回で理解できるなどなど、まぁいい事ばかり出てくるのですが、唯一人を見下してしまう傾向がある。との一文もありました。

まぁ、天才と呼ばれる人は「自分がわかる事を分からない人が多いそれはバカなのではないか」と思うのは致し方ない事です。

今日、私の裏稼業であるカウンセラー、言葉を正確知りたい人から呼び出されたところです。

今の世の中、破壊神の為かは判りませんが混沌としてまして何か良い事をすると怪しまれます(笑)

冗談です。いわゆる副業禁止の会社に勤めてまして、カウンセラーだけでは食べていけませんし、この技術を特許化して売ろう物なら倫理委員会に呼び出され説教3時間を聞かされました。由緒正しきカウンセリングの技術なわけです。

肉体労働ラブでございます。人助けしない者は食うべからず。です。

まぁ、そんなこと言ってもできない事はあります。致し方ない訳です。できる範囲で人助けをすることにしました。

愚痴もこの辺でそろそろ、依頼主のところに到着しそうです。

依頼主のパパカルトさんよりメッセージをこんないただきました。
最近娘が「意味がわからない」と言葉を連呼しています。「なんの意味がわからないの」と聞くと「意味がわからないことが意味わからない」と言うのです。どうして良いか分かりません。是非、言葉カウンセラーのお恵みをいただければと思います。お礼は通常カウンセリングの5倍をご用意しております。正確には25万J $をご用意いたしました。

私、ジミは感動で気絶しそうです。この金額かなり魅力的です。ありがたいです。基本的に5時間のカウンセリングで25万J $感謝しかありません。通常価格は10万J $です。決して金の亡者ではありません正しい価値の交換です。

我が一族のカウンセリングは人の話を聞くことはもちろん、その人が困っている分野の読み物や言葉を話してもらい解決することが主な方法です。

さてとクライアントに会いに行きますか。

タワーマンションの中にあるメゾネットタイプお城っぽい作りの廊下をクライアントのパパカルトさんが娘のユリさんの部屋まで案内をしてくれました。ドアを開けると20畳もある部屋です。

ジミ
「こんにちは、言葉カウンセラーのジミです」
「信仰する神様は知識の神になります」

ユリ
「はじめまして、ジミさん私はユリです」
「信仰する神は破壊神様です」

ジミ
「うん、ガチですね。ユリさんはどの分野でお困りですか?」

ユリ
「いきなり、本題にですか。アイスブレイクって言葉はご存知ですか?」

ジミ
「あー、人と仲良くなる為に出身地はどうだこうだとか言うやつですよね。アイスブレイクとは、初対面の人同士が出会う時、その緊張をときほぐすための手法。集まった人を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気を作り、そこに集まった目的の達成に積極的に関わってもらえるよう働きかける技術を指す」

ユリ
「ご存知なら使えばいいのに!!」

ジミ
「確かにそうですね。ただ、あなたには必要ないと思ったんです。話しやすいし、私が来た意図はご存知のようでしたから」

ユリ
「確かにそうね。私の混乱を落ち着かせてくれるのよね。でも私の神は破壊神様よ大丈夫なの?」

ジミ
あ、ご安心ください。破壊神様は2、3世紀前に別の宇宙に行かれたので影響も少なく問題解決は早く進むと思います。(嘘か本当はどうでもいい話ですけどね)

ユリ
「神託・・・あんた誰だギャーオー」

ユリさんが突然暴れだしました。あ~最悪です。物場で浮かせてるしESP能力者だったんですかね、破壊神のところは人材が豊富なことです。しかし憑き物ですよお払いがいりますね。カウンセリングどころではないですね。飛んでくる花瓶を避けたらはさみが腕にかすりました地味に痛いです。足の小指をぶつけた時ぐらい痛いです。あれ、パパカルトさんがユリさん背後にと思っていたら花瓶をユリさんに叩きつけます。マジかよです。パパカルトさん「娘がとんでもないことをしてもうしわけない」と言ってますけどあなたもなかなかですよ実の娘が狂ったとはいえ花瓶でぶん殴る親はなかなかいません。

まあ、暴れられても面倒なのでユリさんをソファーに縛り付けましょう。

ユリ
「は、ここは誰、あたしは何処」

もう一発殴っときましょう。と思わず本音を口に出してしまいそうです。
細かい説明はパパカルトさんがしてくれましたので本題に戻ります。

ユリ
「神託を受けられたんですか?」

ジミ
「昔話になっていたんですよ。伝承ってやつですね。私は平気ですが一応化学万能の事態なのであまり口にしない方がいいと思います」

ユリ
「そうですね。気が変になった人と勘違いされちゃいますね」

ジミ
「本題に入ってもいいですか?意味が分からないとのことですが」

ユリ
「あ、私がこまっている分野ですよね。本とか言葉とかで意味の分からないものでしたね」

ジミ
「はい、言葉の意味を理解しているかと、その言葉に嫌な感情がこびりついていないかを調べてこびりついているのなら消したいと思います」

ユリ
「そんなことできるんですか?因みにそれが終わるとどうなるんですか?」

ジミ
「人によりますが、知能が回復します」

ユリ
「それ怪しくないですか?」

ジミ
「よーく言ってることは分かります。自分も初めはそう思いましたから、体験してもらうのが1番です。なので、私を信用してくださいとは言いません。嫌いな感じがする言葉を私に差し出してください。それをあなたの理解にたどり着くまでお手伝いします」

ユリ
「まぁ、怪しいと言ってもやってみてから考えたいと思います」

そのあと、ユリさんと私で困難を抱えている言葉をいくつか理解にたどり着くまで処理しました。ソファーに縛っているのを外そうと思ったのですが、ユリさんから「縛られているほうが落ち着く」とのことだったのでそのままカウンセリングを行いました。

ユリ
「気になる言葉を見つけました。正義って言葉を聞くとイラつきます」

ジミ
「わかりました。その言葉になにがありますか?イラつく理由は分かりますか?」

ユリ
「いいやー、子供の頃正義の鉄拳って言われて叩かれて、正義ってなに!っと思うんですよね」

ジミ
「興味深いですね。確かにそれは正しい定義か一度見てみましょう」

ユリ
「どうしよう辞書が開けないわ、スマホも「正義」と変換できません」

拒絶反応がすごいです。これは理解したときの能力回復が楽しみです。

ジミ
「分かりましたこちらをご覧ください。正義の定義です」

1 人の道にかなっていて正しいこと。
2 正しい意義。また、正しい解釈。
3 人間の社会行動の評価基準で、その違反に対し厳格な制裁を伴う規範。

「イラつく内容はありますか?」

ユリ
「いいえ、多分定義自体に問題はないです。むしろ、ちゃんと理解しました。でもイラつきが止まらない」

ジミ
「わかりました。ではイラつく理由を掘り下げましょう」

ユリ
「やっぱり正義の鉄拳ね。そこには正義はなかった、相手の一方的な思い、子供だからそう思ったのね、あー腹立つ」

しばらくユリさんの話を聞いていました。正義と連呼されて物を投げつけられて痛い思いをしてそれもイラつく原因だったようです。すぐにすっきりした顔つきと「もう大丈夫」と答えてくれました。

ジミ
「ユリさん調子はいかがですか?」

ユキ
「あれ、正義について特に問題はないと思う」

ジミ
「そうですか、では正義の定義を念のために正確に理解しましょう」

ユキ
「分かったわ」

「ユキさんは小物を使い定義を一つまた一つと例を挙げながら理解していきました」

ジミ
「ユキさん調子はどうですか?」

ユキ
「完全に理解した感じがします」

ジミ
「素晴らしいですね。では、学んでいる書物を読んで見て下さい。問題はありますか?」

ユキ
「あ、大丈夫みたいです」

ジミ
「素晴らしい。では本を読む時に通常のトラブルの対処法として、言葉の意味が理解できない時はすぐに調べて下さい」

ユキさんには言葉を理解する為に調べる方法をお伝えしました。すごく地味な方法ですが誰でも簡単にそれを行うことができます。

ユキ
「ありがとう」

ジミ
「では今日はここまでにしたいと思います。ユキさんまた何かあったら教えてください。このカウンセリングの特性上時間が掛かりますし初めはお金もかかります。でもあなた次第でいくらでも向上することは可能です」

ユキ
「そうねなんとなく分かった。今日はありがとう」

ジミ
「こちらこそ、では、楽しい読書を進めて下さい」

ユキさんは作業完了書に署名をしてくれました。
そして、パパカルトさんから電子マネー決済で25万J $頂きました。

ジミは今日も地味に言葉カウンセラーをしています。

それもこれも、破壊神のずる賢さと、知識の神が創造新の後始末をするためにジミに押し付けられたはっきり言ってとばっちりです。

今日もため息をつきながら副業に精を出すことにしました。しかし、今月の依頼は多いですね。言葉を操るカウンセラーはいったんお休みして、聞くだけカウンセラーに戻そうかと思うくらいです。これが人類救済になっていると言われても実感はわきませんがそうらしいです。

愚痴をいっていたらもう次の予約が入りました。

え、なぜ人を助けるのかって?

そりゃ決まってますよ自分を助けるためです。一族の使命とはいえ人助けが好きなんですよ。といったほうが聞こえはいいですかね

では皆さんまたの機会にお会いしましょう。

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