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詞のトラップを見つける。

ついぞ勉学に励むこともなく歳だけを重ねてしまった。英語だけでももう少し真面目に取り組めばよかった。後悔先に立たず。何が困るといって、気に入った洋楽に歌われている内容を、逐一訳詞に頼らなければならない。「おお、ディラン、君は何をそんなにブルーにこんがらがっているんだい」てな調子だ。

訳詞といっても、十人の訳者がいれば十色の訳が出来上がる。つかめるのはその「大意」だけだ。それがもどかしい。優れた詞(詩)には、必ず重層的に、いくつもの仕掛けが潜んでいる。シンプルな詞(詩)ほど油断は禁物だ。それがボンクラ頭にとって訳詞では見つけきれない。

天国というものは無いと想像しな
むつかしいことではないよ
同様に、地獄というものも無いと
僕らの上には空があるだけ
その下でみんなが
日々暮らしているにすぎないのだと

国というものは無いと想像しな
できないことではないよ
殺す名目も犠牲になる名目も無いのだと
それに宗教というものも無いのだと
ただ、人間が
平和に暮らしているだけだと

僕のことを夢想家だと言うのかな
でもこう考えているのは僕一人ではない
いつの日かあなたも分かってくれたなら
そうしたら世界は一つなんだけどな

所有というものは無いと想像しな
あなたにはできるかな
ガツガツすべき事はなにも無いと
人はみな兄弟だと
みんなが分かち合い
助け合っていくのだと

僕のことを夢想家だと言うのかな
でもこう考えているのは僕一人ではない
いつの日かあなたも分かってくれたなら
そうしたら皆が一体なんだけどな

(岩谷宏訳)

「IMAGINE」なんかその最たるもの。訳さなくても大まかな大意はわかる。でも「理解」の範疇を超えない。詞を「理解」してどうする。うわべの字面(それも日本語訳)で、やれ理想論だ、そんな世界は誰も望まないだなどと言っている人もいるようだが、これは詞なのです。そりゃまんまそんな世界はワタクシも望んではおりません。Johnという人間が「IMAGINE」という詞にそっと、あるいは確信犯的に潜ませた想い(罠と呼んでもいいかも知れない)を、このシンプルな歌詞から欠片でもいいから見つけ出せれば、この詞世界は、きっともっと広がる。

昔々、高田渡の「自衛隊に入ろう」を聞いて、本当に自衛隊から使用の打診が来たとかこないとか。いやはやコトバというものは厄介だ(だからこうしてウダウダと呟いている)。







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