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鍋島焼でひと休み。

展示の一部入れ替えがあるので、ぜひもう一度観てみたいとの妻のリクエストにより渋谷の松濤美術館で開催中の「エミール・ガレ展」を再訪。平日にもかかわらず館内は前回に比べずいぶんと人が多い。

小一時間で観覧し終え、曇りがちで穏やかな日よりなのを幸いに渋谷の街までのんびり歩いて行く。谷へ降りる手前に戸栗美術館というミュージアムがあるのでそのラウンジで気分転換がてらのひと休みをしようという目論見。伊万里焼や鍋島焼などを中心とした陶磁器専門の美術館だ。旧鍋島藩の屋敷跡に建てられていて「鍋島と金襴手ー繰り返しの美ー」という企画展が開催されていた。佐賀鍋島藩から将軍家への献上品や大名家・公家などへの贈答品として用いられた焼物が鍋島焼で伊万里の藩窯で製作されている。一方、金襴手とは伊万里焼の様式で、有田の民窯で作られ国内外で人気を博したという説明がある。

エミール・ガレの盛況ぶりとは対照的にこちらは訪れる人も少なく静かな時間が流れている。門外漢がゆっくりと観るにはこの方がずっといい。若い女性が一人で熱心に作品一点一点を追っている。学生さんだろうか、そのうち何やらメモかスケッチをしはじめた。ここは撮影禁止なのだ。「とりあえず撮っておこう」は何も観ないことと同義語だということを忘れないようにしないといけない。

「繰り返しの美」というサブタイトルにある通り、連続文様や踏返しと呼ばれる図様がフィーチャーされている。その端正な意匠のひとつひとつをゆっくり眺めていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。

ラウンジといっても、100円也を箱に入れセルフサービスでコーヒーやお茶を紙コップに入れていただくだけの簡易的なもの。そして、しばしガラス越しに小さな庭を眺めながらソファでくつろぐ。それでも美術品を鑑賞したあとのこんな時間は、小洒落たつもりのそこらの店よりずっと贅沢な時間なのは間違いない。ショップで妻が和三盆を見つけて購入。美術館を出て雑踏の谷底へ向かう。

ラウンジから眺める小さな庭。さりげなく「鋳鉄製24ポンド砲」なんてのがあるのだが。

蛇足

近くの松濤公園にある話題のトイレ。いろいろ蘊蓄が披瀝されているものの、いざ目の前にすると隈研吾だろうが「それがどうした」という感じ。一見トイレとはわからないということは、切羽詰まってトイレを探している人には意地ワルこの上ない。いくつかの個室で構成されているがピクトグラムも極めてわかりにくい。「森のコミチ」とか名付けて「意識高い」が上滑ってないかな。ちなみに妻が入ったときは、中もびちゃびちゃで決してきれいとは言えなかったらしい。


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