見出し画像

油断大敵のエロビート~サザンオールスターズ

マキタスポーツとスージー鈴木の暴走が楽しいBSの「ザ・カセットテープ・ミュージック」。80年代のドライブに欠かせなかったのは、王道のサザンオールスターズでした。あっけらかんとエロいロックビート、とりわけ「ステレオ太陽族」から「NUDE MAN」「綺麗」「人気者で行こう」に至る4枚はほんとうによく聴きました。八木正生がサポートメンバーに入りバンドサウンドが一段ステージアップした「ステレオ太陽族」、「綺麗」からはシンセサイザーを本格的に導入と、この時期のサザンのアルバムは発売ごとに進化を遂げ、その着実な「脱皮ぶり」には目を見張るものがありました(脱皮は続く2枚組アルバム「KAMAKURA」で一つの句読点を迎えます)。

この軽快なエロビートに、巧妙な言葉の「罠」や「毒」があることを感じたのも、この頃です。それまでは少しエッチで面白い歌詞、位の認識しかありませんでした。「たかが歌詞じゃねえか、こんなもん」という本がありますが、本人がどう言おうが歌詞もこの時期確実に進化しています。代表的なのは、やはりコレです。

夢に見る姿の良さと美形のBluejean
身体と欲でエリ好みのラプソディー
Oh,Miss Brand-New day
みな同じそぶり
Oh,Miss Brand-New way
誰かと似た身なり

意味のないはやりの言葉と見栄のillusion
教えられたままのしぐさに酔ってる
Oh,Miss Brand-New day
月並みを愛し
Oh,Miss Brand-New way
お出かけの前に

終わらない彼と寝てるnight time
濡れたムードを買い占めて
(後略)

今でも妻はこの「ミス・ブランニュー・デイ」を聴くと「耳が痛い」と言います。時代の気分(世はまさに女子大生ブーム)をキャッチ―に表現した名曲だと私も思います。この「ミス・ブランニュー・デイ」が収録された「人気者で行こう」には「女のカッパ」という曲で、「ルーズでシュール」な歌詞の中に、唐突に

何もしない人が笑える時代

なんてフレーズがぶち込まれます。繰り返しますが、本人が何と言おうが勘繰ってしまうのが聴いてしまったものの性というものでございます。その後、桑田佳祐がその「罠」や「毒」をこの世のよしなし事からマツリゴトまで広汎に、時には過激に仕掛けているのは、アルバムを聴いている人にはおわかりの事と思います。あの頃、うわべだけの心地良いポップミュージックとして消費していたら、今も彼・彼らを聴いていることはなかったでしょう。

(蛇足)因みに、うたことばの達人で「かなわないなあ」と思うアーチストを3人と言われ真っ先に浮かぶアーチスト(職業作詞家を除く)が3人います、桑田佳祐・中島みゆき・井上陽水です。古い奴なのでそのへんはご容赦ください。この3人の作るうたことばの世界は、どこにトラップが仕掛けられているか、今も刺激に満ちあふれています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?