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「おいしい」は悠久の時を超える。今、欲しい感性が迸っていた。

今日はひょんなことから、六本木に行きました。
(朝起きた段階では全然いく予定がなかったので、巡り合わせとは面白いものですね。奥さんのおかげで、この展示にたどり着くことができました。)
たまたま友人が森美術館のミュージアムショップで働き出したということを聞いて、久々に行ってみたら今日はハマった企画展「おいしい浮世絵展」がやっていました。
内容が少しバラバラになっていますが、学びの深い企画展でした。

おいしい浮世絵展
https://oishii-ukiyoe.jp/

「浮世絵」といえば、最先端の情報発信ツール。
浮世絵を通して江戸時代の食文化を今に伝えるというもので、江戸湾で取れた魚介類(「江戸前」と呼ばれているもの)、迷路のような河川を使って運ばれてくる野菜が当時の食の基本で、その当時の様子を視覚的に現代に伝えてくれる浮世絵の数々はとても面白い。
また、浮世絵は今でいうSNSみたいなものですね。流行りのお洒落も料理も旅行も、すべて浮世絵から広まっていきました。当時のファッションアイコンである、歌舞伎役者や人気遊女をモデルにし、最も「映える」瞬間を切り取った瞬間瞬間に「粋」があったんだろうなと思わさせられました。

江戸の街と町人の暮らし
江戸の町では火事が頻繁に起こっていたせいで、家の中で火を使った調理は禁じられていたため、町民たちは屋台での食事を楽しんでいた。
天ぷら、鰻、寿司、そば、豆腐。
そして今のような夏の季節は白玉や冷水なども盛んに売られていたという。魚市場は日本橋のたもとにあり、冷蔵庫がない時代なだけに採りたてばかりのものを必要なだけ買って調理をしていたから、常に新鮮なものが揃っていた台所。

江戸時代の庶民の食事の基本はごはん、味噌汁、漬物だけという超シンプルな「一汁一菜」。ご飯を炊くのは明後日の一回だけで、朝食が炊きたてのご飯と味噌汁、昼食が冷や飯と「アサリのむき身と切り干し大根の煮物」など、野菜もしくは魚などのおかず。そして夕食がお茶漬けと漬物。また豆からつくられる豆腐や納豆も人気食材だったらしい。

また、量が少ないように思われるが、そのご飯の消費量は凄まじかった。なんと成人男性は1日5合!を食べていたそうだ(だから「脚気」が多かったのだが...)。将軍のお膝元であった江戸は、全国から年貢米などが集められるため、米の流通システムも整備されていた。だから、長屋の住民でも精米した白い米を食べることができ、「白米を食べられること」は江戸っ子の特権であったのだ。

そして展示の中でも特に気になったのが「旅と名物」
歌川広重の東海道五三次之内(1797)
十返舎一九の東海道中膝栗毛(1802)
これらで盛り上がる「東海道」も題材になっています。

この東海道中には旅の真髄がありそうと思うようなシーンが何個も出てきます。ほんとに食い物と景色だけで、成立していく江戸「日本橋」 to 京都「三条大橋」の492キロ。
しかも、53の宿場はあれど、歩けるわけないじゃんと思うしかない順路。
宿場には、必ず美味い食べ物と人の出会いがある。
これは当時の喜びや驚きとしては凄かったんじゃないかと推察できます。

最後に。
以下、本展の紹介文から。「江戸時代が終わってから150年以上の歳月が流れた今、そこに描かれている状況や習慣の中には忘れ去られてしまったものもしばしばあります。少し後ろを振り返る気持ちで、江戸時代の暮らしや食について紐解き、当時の人たちの生活に思いを馳せることで、きっと浮世絵はよりあざやかに、いきいきと、私たちに語りかけてきてくれるのではないでしょうか」

正にそう。
「おいしい」は悠久の時を超えて、そこの食・文化・風土・流通を繋がる重要な要素になっている。
いい企画展でした。





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