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AIだけでは不十分

デジタルネイティブ・スマホネイティブならぬ、AIネイティブの時代がもうそこまできている。

デジタル・スマホにおいて圧倒的に出遅れた日本が、AIネイティブの時代には、世界のトップランナーになれる。

そんな希望を、絵空事ではなく、具体的なアクションプランにまで落としこんだ書籍が『シン・二ホン』である。

著者は『イシューからはじめよ』で有名な安宅和人氏。安宅氏は2016年頃からこのシン・二ホンという言葉を使い始め、その後、国の意思決定に関わる重要な会議に幾度と招かれ、持論を述べている(経済産業省の産業構造審議会、内閣府の教育再生実行会議、経団連の未来社会協創タスクフォース等)

未来のために、いま日本は何をすべきか?

これが本書で投げかけられている壮大なイシューとなる。

この途方もなく大きなテーマに対して、多くの具体的施策が投げかけられている。

例えば、AIを活用する準備ができた個人・企業の状態をつくることを「AI-ready化」と銘打ち、AI活用に対する姿勢、必要な人材など、10つの重要なポイントをまとめている。

また、後半部分では、国としての予算配分や、産学連携で構築するべきエコステムなど、国家レベルの提言にもボリュームがさかれている。

これまでシン・ニホンというテーマで100以上の会議で提言をしてきた筆者の思考の総まとめのような本である。

少し余談だが、コロナが悪化していく局面で安宅氏が投稿した記事がとても話題になった。人や活動が密集するトレンドが、大きく反転し、「開疎」に向かうという話だ。

今まで当たり前にコンパクトにまとまることを是として都市設計、空間が覆されることで、様々な変化が起きる。

例えば、多くの人がすでに体験した通り、「ライブ感漂う状態で空間的に離れた人とリアルにつながる」ことが増えるため、必然的にそのための空間や技術の開発が進む。

具体的に言えば、オフィスの必要性は相当程度軽視されるようになる。その影響で、「職住近接」ではなく、「職住一体」型の住宅の開発やリノベーションが進む。また、参加者外秘のビジネス討議を行うためには、そこがセキュアかどうかも示せることが求められるようになる。

このように、人が物理的に離れた状態にあることを前提として、多くのものごとが刷新されていくのだろう。未来のためにしなければならなことはさらに増えている

冒頭のイシューにもどる。

未来のために、いま日本は何をすべきか?

このイシューに対して、本書ではシンプルな「未来の方程式」を示している。

未来 = 課題 × 技術 × デザイン

課題・技術については詳細は別にしろ、なんとなくイメージはつかめる。

しかし、ここに並ぶ「デザイン」とはなんだろうか。

ここでいうデザインとは単純な「意匠」をあらわすものではない。

例えば、iTunesに代表されるソフトウェアとの完全なる融合を含めた「商品/サービス設計」、デジタル音源の版権処理、それを流通させるクラウドの仕組みまで含めたビジネスの「モデル設計」までが、すべて一体となったデザインのことだ。

日本語では「デザイン」というと意匠にとどまった意味になりがちだがそうではない。

本書では「新たな価値観の挑戦とそれを形にする力」であると表現されている。

そして、ここ「デザイン」する力が、日本が復活する一つの鍵でもあるという。

なぜなら、日本人は世界にも深い知覚を持ち、新たな挑戦をしてきた国の一つだからだ。

その証明の一つとして、東京、京都、大阪は世界の都市の中で最もミシュランの星が多いトップ3でる。これは日本人の食味覚やそれにまつわる多面的な経験に対する近くの深さと広さが寄与しているといえるだろう。

『シン・二ホン』はサブタイトルがAI×データとなっているため、高度な技術だけにフォーカスされた書籍のように思われがちだが、上述の「未来の方程式」を見ても分かるように、「課題とデザイン」という技術的な側面ではない部分にも着目しているところが面白い。

ましてや、afterコロナの世界は、誰も目にしたことのない世界。

テクノロジーの活用はもちろんのこと、それと同等かそれ以上に、「新たな課題(イシュー)を設定する力」と、「未来を描いていくデザイン力」が求められてくるのだろう。

AIを使いこなせる、というだけでなく、AIで誰のどんな課題を解決するのか?、AIと共にどんな未来を歩んでいくべきか?、ということを考えられなくてはいけない。

シン・二ホンはbeforeコロナでの提言にも拘らず、いまこそ早急に実践すべき提言が多く含まれており、一読の価値ありです(ボリューム結構ありますが笑)。

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