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中学校は小学校の延長じゃない!?『中学校ってどんなとこ?』誕生秘話 刊行記念コラム①

中学校に入学する日の朝のこと、覚えていますか?

私はよく覚えています。
緊張して、何時に家を出ようか、リュックを背負ってリビングをうろうろしていた朝を。

そんな経験も手伝って、今年1月に刊行した『中学校ってどんなとこ?』という小学5~6年生向けの本を担当しました。

中学生活をとりまく、勉強・部活・友だち・スマホ・こころとからだなど、盛りだくさんのテーマを、マンガとイラストで解説しています。

児童養護施設の職員さんの切実な声がきっかけに


本書が生まれたきっかけは、児童養護施設の職員の方の声でした。
「中学校は小学校の延長だと思っていたが、そうではなかった」といいます。

「中学校では、勉強の難易度がアップし、人間関係で躓きやすく、不登校が増える。ときに自殺者も。
思春期を迎える前の小学生のうちに、親は子どもに『これからもサポートするよ』と伝え、親も中学校について理解してあげることが大切

子ども本人も、中学校がどんなところなのか、あらかじめ知っておくことで不安を減らすことができる。そのための本があるといいのに……とすごく思っている」

私はこのお話を聞いて、自分の経験も重なり、「これは世の中に必要とされている本だ!」と強く感じました。
調べてみましたが、確かに、小学校の入学準備の本はたくさんあるのに、中学校の入学準備のための本はありませんでした。

8割の小6が「中学入学に不安がある」


さらに「中1ギャップ」と呼ばれる現象があることを知りました。

「中1ギャップ」とは、中学入学後、小学校との環境の違いになじめず、不登校、いじめ、学習意欲の低下などを起こすこと。

10年近く前に問題視され、当時の東京都の調査では「中学入学に不安がある」と答えた小学6年生は約8割にも上りました。

ReseMom https://resemom.jp/article/2011/03/25/1718.html


「中学校が不安な子が、こんなにたくさんいる…!」
本書の必要性を、より実感する調査結果でした。

「中1ギャップ」対策として、小学校5学年からの教科担任制の導入や、公立中学校の見学会、中学校の先生の小学校出張授業など、国や自治体も取り組みを進めてきました。

しかし、このコロナ禍。見学会は中止になり、小学生が中学校について知る機会が減っているのが現状です。

本書ができれば、「中1ギャップ」対策としてご家庭でも役立てていただけるはず
その思いで、企画をスタートさせました。

現役小・中学生の声も取り入れてボリューミーな一冊に!

「勉強は難しくなるのかな?」
「部活って何するの?」
「先輩って怖そうだな……」

監修の先生方やフリーの編集さんとも相談しながら、入学前にこんな本があったら嬉しかったな……と思う要素を詰め込みました。

本編は、ふだん本を読まない子でも楽しめるように、マンガとイラストで読みやすく。

プロローグ「中学校ってどんなとこ?」より
「マンガがすごくいい!」「絵がかわいい!」と、小学生の子たちからもとても好評でした。


巻頭には、リアルな中学校の様子がわかるように、実際の中学校を取材した写真ページも入れました。

巻頭「リアルな中学校ってこんなとこ!」より
都内の中学校に撮影をご協力いただきました。
「学業と部活の両立が大変」という声も聞かれました。

大人から子どもへの一方的な本を作るのではなく、子どもたちのリアルな声も入れたくて、現役・小中学生によるQ&Aコーナーを作りました。

第2章「部活って、どんなことするの?」より
小中学生44名にご協力いただき、Q&Aコーナーが完成しました。
中学生のしっかりした回答に驚かされることも。


できあがったサンプルページは小学6年生に見てもらって感想をいただき、指摘は可能な範囲で改良
多くの方にご協力いただいて、この1冊が完成しました。

実際のアンケートの一部。ラフを書いて「文が長いから、分けたほうがいい」と指摘してくれた子もいて、しびれました……。「長いかな?」と悩んでいた部分だったのです。
ほとんどのページを組んだ後だったのですが、修正しました。


そしてできあがったのが、「この1冊あれば入学準備はOK!」といえる、192ページのボリューム感ある1冊です。

巻頭「リアルな中学校ってこんなとこ!」より
第1章「中学校の勉強って、どんなことをするの?」より
第2章「部活って、どんなことをするの?」より
第3章「中学校での友だちとの付き合い方」より
第4章「スマホ、SNSとの上手な付き合い方」より
第5章「中学生のこころとからだの成長」より
第6章「中学生だから知っておきたい大切なこと」より

本書にいただいた感想

本書を読んでいただいた感想の一部をご紹介します!

【小学5~6年生の親御さん】
●『最近、なぜかママにイライラしちゃう』というページにドキッとした。いま、まさに親子でぶつかっている問題が載っていて、大人が読んでもためになる(40代・会社員)
自分を守るために大切なこと、つまずいたときに自分で考えるヒントが詰まっていて、子どもにぜひ読んでほしいと思った(40代・会社員)
子どもが夢中で読んでいて、渡してよかった。改めて、中学生活について親子で話し合う機会を持てた(40代・会社員)

【小学6年生】
●中学校入学が不安だったので、この本を読んで少しホッとしました
●勉強が不安だったので、最低限やればいいことがわかって安心した。ノートの取り方もマネしたいと思った
●知らないことも説明がわかりやすかった。中学受験もがんばろうと思いました

【小中学校の先生】
●この本にはアイメッセージについてや、友だちを作るために大切なことなど、ソーシャルスキルも書いてあってすごい。教師こそこの本を読むべきだと思う(小学校校長)
●小中連携は大切にしている。イベントでは中学校の教科別授業や部活についての話がほとんどだが、この本を読んでみて、友だちの作り方や思春期のイライラなど、心のケアももっとしっかり対策したいと思った。コロナの影響で小中連携の活動が少なくなってしまっているため、学級文庫としてこの本を置くのもいいと思う(小学校校長)
●勉強や部活など、目に見えて違うものがわかりやすく書かれているだけではなく、友だちとの関係や、自分が新生活の中でどう振る舞ったらいいのか、家族に対する気持ちの変化をどう捉えたらいいのかなど、目に見えない違いもしっかり丁寧に書かれていることがとても魅力的だった(中学校教諭)
●質問がこまかくひとつひとつ子どもたちに寄り添っていて、「分からなくて不安だけど何が分からないのかも分からない」という子どもたちにぴったりだと思いました(中学校教諭)

スマホやSNSの登場、コロナ、経済格差、学歴偏重社会など、中学生を取り巻く状況は、親の時代とは変わってきています。

ぜひ、お子さんが本格的な思春期を迎える前に、親子で中学生活について話し合ってみてください。
そして、「これからもあなたを大切に思っているよ」「困ったことがあったら、どんなことでも言ってね」と言葉をかけてみてはいかがでしょうか。

ご親戚に中学入学を控えているお子さんがいらしたら、ぜひ入学祝いにもお役立てください!


次回は、本書をつくるきっかけとなった児童養護施設の方に、55名の子どもたちと生活をともにして感じた、小学校と中学校のギャップや、中学生との接し方について伺ったお話を紹介します。お楽しみに!
⇒次回の記事はこちら

◆総監修
升野伸子(ますの のぶこ)
筑波大学附属中学校 副校長
公民科教育・ジェンダー論 東京大学経済学部卒業。お茶の水女子大学修了。大妻中学高等学校教諭を経て、現職。共著とし『女性の視点でつくる社会科授業』(学文社))『入門 社会・地歴・公民科教育―確かな実践力を身に付ける』(梓出版社)『中学歴史 生徒が夢中になる!アクティブ・ラーニング&導入ネタ80』(明治図書出版)など多数。

◆第 4 章監修
多田義男
(ただ よしお)
筑波大学附属中学校 教諭
教科:技術・家庭科(技術分野)
東京都公立学校主幹教諭などを経て現職。情報学に関する研究、道徳教育に関する研究、授業実践多数。東京都を中心に研修会の講師を務める。

◆第 5 章監修
道幸玲奈(どうこう れいな)
筑波大学附属中学校 養護教諭
東京都公立中学校での勤務を経て現職。自分も相手も大切にできるいのちの教育に取り組んでいる。

記事作成:編集担当 大友恵

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