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新中学生と保護者さん必見!中学のつまずきポイントは勉強と…? 『中学校ってどんなとこ?』刊行記念コラム②

「中学校は小学校の延長だと思っていたら、そうではなかった」と話す児童養護施設職員のKさん。Kさんのこの言葉をきっかけに『中学校ってどんなとこ?』が誕生しました。

Kさんはこれまでに、55人のお子さんと生活をともにされてきました。
今回の記事では、Kさんが感じる小学校と中学校の違いや、思春期のお子さんとの接し方についてお聞きしたいと思います。

本書の制作秘話&いただいた感想をまとめた、前回記事はこちら

ずっと「中学入学準備の本」を望んでいた


―――このたびは企画のアイデアをいただいて、ありがとうございます!

長年「あったらいいのに」と思い続けてきた本が形になって、感動しています。

―――中学校入学の本があるといいのに、と思われたのはどのような経緯からですか?

最初が幼児担当だったので、小学校入学準備の絵本を読み聞かせてあげていました。「小学校ってこういうところだよ」って絵本で見せて、どんなところかを想像させて「楽しみだね」っていう話ができたんです。

その後、小学校高学年の子たちを受け持ったときに、中学入学準備の本を探したんですけど、なくて。言葉で言っても想像する力もまだないですし、時間が経つとみんな「そんなこと言ってたっけ?」という感じになるので、やっぱり本だったらわかってもらえるのかな、って。

―――勉強の本や、友だちとの付き合い方、スマホの使い方など別々の本はありますが、1冊にまとまったものは確かにないですよね。

そうなんです。買い集めるのも大変なので、1冊にまとまったものがほしいなと思いました。

勉強の「優劣」が子どもの自信を大きく左右するように


―――Kさんがお子さんたちに伝えておきたい、小学校と中学校の違いはなんでしょうか?

ひとつは勉強面です。小学校では担任の先生がほとんどの教科を教えてくれたけど、中学校では教科ごとの先生が教えることになって、先生も個性豊かで、合う合わないもありますよね。

中間・期末テストも範囲が広くて、こんなにしんどいのか、とか。頑張ってるつもりでも成績が上がらなかったり。自分自身もそういうところでつまずいてたかなと思うので。

第1章「中学校の勉強って、どんなことをするの?」より
初めての定期テスト、軽く見ていると大変なことに……経験ありませんか?

言葉では伝えていますが、いざその時になるまではわからなくて。入学後につまずいてしまって、不登校になる、ということもありました。

 ―――テストの成績が思ったようにならなくて、不登校に。

60点取ればいいんだよ、って言ってるんですけどね。

小学生のときは、たいして勉強しなくても90点くらい当たり前だけど、中学校ではがっつり勉強しないといけないですし。

この本にもありましたが、中学校からも、勉強計画の指導があって、計画を立てる宿題が出ます。ただ、子どもたちが「できる」と思った計画表は、見積もりが甘くて計画倒れになり、やりとげることができず、つまずいちゃう。

だから、そういった中学校の勉強の難しさや、テストには準備が必要なんだという心構えがこの本でできたらと思います。

第1章「中学校の勉強って、どんなことをするの?」より
計画を立ててTO DOを実行する習慣は、将来の仕事にも活きていきます。


友だちとの人間関係はより複雑に…… 


―――もうひとつはなんでしょう?

 もうひとつは、友だちなどの人間関係ですね。

小学校だったら、クラスもみんな仲がよかったりするんですけど、中学校に上がると、いろんな子がいて、ターゲットを順番に変えていじめが行われていたり。自分の居場所づくりのために人を蹴落とすことも、中学生はやることがあるので。

第3章「中学校での友だちとの付き合い方」より
「いじめにあったら大人に相談を」と本では促しています。子どもが悩みを打ち明けやすい関係を築きたい。


裏切られちゃうこともあれば、親友ができることも
あって。いろんな経験ができるのが中学生だよって思っています。

第3章「中学校での友だちとの付き合い方」より
思春期の親友とは、一生の付き合いになることも。中学校での出会いが楽しみですね。


―――それを口頭で伝えるのは難しいですね。

自分の体験談として伝えるようにはしているんですけどね。

この本を読んでも、やっぱり忘れちゃうとは思うんです。
でも常にそばに置いておいてもらえたら、友だち関係に悩んだときにふと読んで、自分の感覚は間違いじゃないぞって思ってもらえたらいいなって。読み返すことが大事ですよね。

―――そうですね、入学後に困ったときに「そういえば」と、読み返してもらえたらいいですよね。
部活の章は入学前に読むことを想定していますが、勉強や、友だち、スマホなどそれ以外の章は入学後にも役立つ情報が載っているから、3年間のお守りのようにしてもらえたらいいなと思っています。

答え合わせじゃないけど。

―――そうそう、折に触れて読んでもらえる本になったらな、と。

 みんな少なからずいろんな経験をすると思うので、「自分だけじゃない」っていうことをこの本を読んで気づいてもらえたらいいですよね。
子どもは「自分だけ」と思って人生を悲観するけど、ほかの人もそんな風に思っているかもしれないってわかってもらえれば、気持ちが違うと思うんです。

親もはじめて「中学生の親」になり、戸惑うことも


―――親御さんたちから、大人が読んでもおもしろいという声をいただきました。「お母さんにイライラしてしまう」のページとか、「いままさにうちの子がこの状態」っておっしゃって、じっと読まれていたり。

 私もじっくり読みました。文字嫌いだけど(笑)

第5章「中学生のこころとからだの成長」より
小6のお母さんが「まさに娘がこの状態」と熱心に読まれていたページ。


―――子どもたちのためにと思って作っていたけど、大人のためになる部分もあるんだなって。

 親御さんの心持ちが変われば、子どもも変わるだろうと思います。

中学入学後に、子どもが置かれている背景があの本でわかると思うので。勉強なのか友だちなのか部活なのか。悩んでいることが探しやすいんじゃないかと思います。

―――本を使って「親子で準備できるといい」とおっしゃっていたのはそういう部分もあるんですね。

 よっぽどじゃないと、中学生になって「今日こういうことがあったよ」って言わないと思うんです。中学校がどういうところかわかっていれば、言葉をかけるきっかけにもなるだろうし。「いま部活どうなってるの?」「テストはどうだった?」とか。

―――そうですね、テスト後に明らかに様子がおかしかったら。

テストが思った結果じゃなかったんだな、とか。

―――部活の大会前に様子がおかしかったら、いま部活が大変なのかなとか。

全部が全部、話してくれるわけじゃないと思うので、とっかかりになるかなと。

やってあげられるのは小学生まで! 中学生になったらそっと見守って


―――Kさんは、これまで55人のお子さんを担当されたそうですが、中学生に接するときは、どんなことに気を付けていますか?

年齢問わずですが、「あなたのことを大事に思ってるよ、気にかけてますよ」と、メッセージが伝わればいいなぁと思ってます。

中学生の子には、思春期らしい冷めた態度や言い方にイラッとさせられることも正直、多いですよ(笑)。かと思えば、さっきの「あれは何だ?」と思うくらい、甘えた態度を取ってきたり。

こちらの感情は振り回されっぱなしですが、口酸っぱく言ったり、やってあげられるのは小学生まで。中学生になったら友だちも増えて、紆余曲折しながら自分なりに考えを構築している時期なんだろうと思うので、そっと見守るようにしています。

―――見守る……、なかなか難しいですね。つい口出ししちゃいそうです。

あーだこーだと言いたくなるけど、押しつけられると嫌がって拒絶したり、間逆なことをしたりします。なので、「私は〇〇思うんだけどなぁ」と、いわゆるアイ・メッセージで伝えてみるとか。

第3章「中学校での友だちとの付き合い方」より
本書で紹介している「アイ・メッセージ」。親子のコミュニケーションにも役立ちそう。


でもやるのは、本人なので。伝えたあとは子どもに任せます。失敗があるのは当たり前と考えて、大人はド~ンと構えておく。長ーい目で子どもを信じてみることが大切かなぁと思ってます。

―――失敗することが見えていても指摘しちゃいけないんですね。

そうですね。
あとは、
●「おはよう」の返事がなくても、大人は毎日「おはよう」と声をかける。●折に触れて、名前で呼びかけて会話する。
●共通の話題がなくても、同じ空間にいる。

子どもがやっていること、たとえば趣味とか、ゲーム、学校で流行っていることとかに興味を持って、聞いてみることなんかも大切です。

感情や態度などの空気は伝染しやすいものだと思うので、大人がおおらかで朗らかな雰囲気であれば、子どもも窮屈なく過ごせるんだろうなぁ〜と、体感してます。

―――なるほど……。大人がカリカリしているのはよくないんですね。逆に、しないほうがいいことはありますか?

子どもの感情はコロコロ変わるので、大人は振り回され過ぎないこと

嵐のように理不尽に当たり散らされ、あっという間に何事もなくカラッと過ぎることも多いので、後からグチグチと責め立てないこと、ですかね。「私、イヤだったんだけど」くらいは伝えても良いと思います。ここでもアイ・メッセージですね。

何も会話がなくなったら溝が出来ていることになるので要注意。そうならないために、日常の何気ない会話ができる関係性を作っておくことが大事かなぁと思います。

―――この本が、子どもたちのお役に立てることはありそうでしょうか?

大人目線かもしれませんけど、いい本だなと思っています。子どもがまず読むことが大切ですけど、読んでくれればいい方向に進むかなと。少なくとも親御さんの心強い味方になるかなと思っています。

兄弟がいれば、お兄ちゃんおねえちゃんの背中を見て中学の様子がわかりますが、いまは一人っ子が多いから教えないとわからないですし。

―――この本は、いままでなかったっていう理由で図書館でも多く取り扱っていて。予約待ち5~6件、多ければ20件弱なんていう図書館も複数あって。ニーズがあるんだなって感じています。

そうなんですね。よかった、よかった。
小学校の高学年のクラスの学級文庫なんかにも置いていただきたいですね。

―――ほんとほんと、ぜひ全国の小学校で!笑

経験に裏打ちされたKさんのお話には説得力がありました。中学生になったら、うるさく言わず、見守ること――。肝に銘じておきたいです。
次回は、本から少し離れて、Kさんの児童養護施設でのお仕事の内容について伺います。

◆総監修
升野伸子(ますの のぶこ)
筑波大学附属中学校 副校長
公民科教育・ジェンダー論 東京大学経済学部卒業。お茶の水女子大学修了。大妻中学高等学校教諭を経て、現職。共著とし『女性の視点でつくる社会科授業』(学文社))『入門 社会・地歴・公民科教育―確かな実践力を身に付ける』(梓出版社)『中学歴史 生徒が夢中になる!アクティブ・ラーニング&導入ネタ80』(明治図書出版)など多数。

◆第 4 章監修
多田義男
(ただ よしお)
筑波大学附属中学校 教諭
教科:技術・家庭科(技術分野)
東京都公立学校主幹教諭などを経て現職。情報学に関する研究、道徳教育に関する研究、授業実践多数。東京都を中心に研修会の講師を務める。

◆第 5 章監修
道幸玲奈(どうこう れいな)
筑波大学附属中学校 養護教諭
東京都公立中学校での勤務を経て現職。自分も相手も大切にできるいのちの教育に取り組んでいる。

記事作成:編集担当 大友恵

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