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スギアカツキ【たまごのはなし】第35回 人気の卵料理専門店のエッグベネディクトに学んだ、おいしいひと時

日々、さまざまな卵料理を楽しんでいます。外食の場合、自然と足が向くのが、「卵料理の専門店」。今回は、東京・六本木にある「eggcellent(エッグセレント)」というプレミアムエッグにこだわるレストランで出合った、“ちょっと変わったエッグベネディクト”のお話をしたいと思います。

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エッグセレントは、コンサルティング会社(これだけに括れない魅力ある企業)である株式会社リヴァンプが新業態として立ち上げた、卵料理専門の飲食ブランド。オーガニック卵で有名な山梨県・黒富士農場から毎朝直送される産み立て卵を使って作る目玉焼きやパンケーキは、安定感のあるおいしさで、リピーターを喜ばせています。

そして私が特にお気に入りなのが、「A.M.キヌアベネディクト」というメニュー。

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エッグベネディクトといえば、マフィンパンの上にハムやベーコンが敷かれ、ポーチドエッグを乗せて、オランデーズソース(卵黄をバターとレモン果汁を加えて乳化させたフランスのソース)をあふれんばかりにかけた、アメリカ発祥の卵料理。

しかしながら、こちらのキヌアベネディクトは、使う具材や味付けに至るまで、レシピの根本が覆るような、大変インパクトのある一皿なんです。マフィンの代わりに、スーパーフードである「キヌア」をたっぷり使ったヘルシーライスを採用し、和食でおなじみの“漬けマグロ”が具材として使われています。そして、オランデーズソースは麦味噌ベースで作られ、飾りにはレンコンチップス。この組み合わせは、日本人だけでなく、世界中の和食ファンのDNAを刺激するようですね。優しい味わいながらも、また無性に食べたくなる強い魅力を持ったユニークな料理に仕上がっています。ちなみに、メニュー名のA.M.のAはアボカド、Mはマグロなんだとか。

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私はこのメニューに、食への探求心を強く感じます。伝統に忠実な王道料理も良いですが、提供する場所やシーンによって、食材や調理法をアレンジし、料理に変化を与えていく姿勢は、人生観にもつながるような気がしてなりません。

もしかすると、使う食材にこだわりやプライドを持つことこそが、柔軟な発想や遊び心を可能にするのかもしれません。ポーチドエッグのトロトロ感を堪能しながら、健やかなエネルギーをお腹いっぱいに取り入れた、幸せなひと時になりました。

長く大事にしてきたモノを温めながらも、新しい変化を怖がらず、力強く発信し続けること。相手に好奇心や喜びを与えることに情熱的であること。この卵料理一皿から、そんな大きな気付きをもらい、元気に帰宅したのでした。

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たまごも、米も、味噌も。そしてヒトの人生も。食は人生に通じるとも申しましょうか、すべてにおいて、可能性は無限大なのです。


※キヌアとは……
たんぱく質を豊富に含み(13~14%)、白米、小麦、トウモロコシに比べ、マグネシウム、リン、鉄分などのミネラルやビタミンB群(特に葉酸)も多く含まれる雑穀。スーパーフードの一つとして、日本でも注目を浴びている。


文・写真:スギアカツキ/食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)、女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。
「みなさん、一番大好きな食べ物ってなんですか? 考えるだけで楽しくなりますが、私は『たまご』という食材に行きつきます。世界中どこでも食べることができ、その国・エリア独特の料理法で調理され、広く愛されている。そしてなにより、たまごのことを考えるだけで、ワクワクうれしい気分になってしまうんです。そこで、連載名を『たまごのはなし』と題し、たまごにまつわる“おいしい・たのしい・うれしい”エピソードを綴っていきたいなと思います」
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