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『金沢 古民家カフェ日和』刊行記念!茶屋街を一望するカフェ「波結」全文公開

この夏、川口葉子さん人気シリーズ「古民家カフェ日和」の第3弾、金沢 古民家カフェ日和(7月30日刊)が発売になりました。
この刊行を記念して、全3回のnote連載を行います。

連載第2回となる本記事では、本書で紹介している、ひがし茶屋街を一望するカフェ「波結」の本文を全文公開いたします。
なかなか遠出しづらい状況ですが、カフェを通して古都・金沢の歴史に触れ、美しい写真を眺めて、旅気分をお楽しみいただけたら幸いです。

川口葉子著『金沢 古民家カフェ日和』
連載第1回「はじめに」公開はこちら

波結

元は芸妓さん愛用の美容室
茶屋街を一望するカフェ

〈ひがし茶屋街〉

 雨に濡れそぼつ石畳の路地の両脇にお茶屋建築が並び、つきあたりに卯辰山の緑が見える ―― そんな情趣溢れる風景を見渡すのに最高のカフェが「波結(はゆわ)」。
 築百五十年になる建物は、以前は芸妓さんの髪を結っていた「さくらい美容室」で、大きく掲げた「コールドパーマ」の看板で親しまれていたそう。

ひがし茶屋街のメインストリート、二番丁を端から端まで見渡せる2階席。江戸後期から明治初期にかけて建てられたお茶屋建築が続く風景は貴重なもの。ひがし茶屋街の歴史は、1820年に加賀藩が城下に点在していた茶屋を浅野川のほとりに集め、加賀藩公認の茶屋街として町割りを整備したことに始まる。さくらい美容室はすぐ裏手に移転して、現在も営業を続けている。


 店主の高岡愛さんはすぐ近くで北陸の若手工芸作家の作品を扱うギャラリー&ショップ「縁えにしら煌」を代表のご主人と営んでおり、自身も箔デザイナーとして活躍している。

「波結の二階は、美容室だった時代は桜井さんの住まいで、きれいにお使いになっていました。改修後も柱は元のまま残してあります」

 店名の「波」はパーマのウェーブを、「結」は髪結いを意味する。半世紀以上にわたって茶屋街の人々の生活と共にあった美容室の記憶が、店名に刻まれているのだ。
 連想を広げるなら、「波」は茶屋街を歩く人波や浅野川の優しい波を、さらには時代の波をも表しているかもしれない。そして「結」は人と人、人とアートを結んでいくこと。

 そんな連想を楽しみながら上生菓子と抹茶のセットをいただいた。
 九谷焼の抹茶碗は、華やかな色彩を駆使しながらも落ち着いた表情だ。可憐な上生菓子は、加賀市で明治時代から営まれている「御菓子調進所山海堂」製。花のかたちをした上生菓子の横に、葉っぱ色の金平糖がちょこんと三つ。どうぞゆっくり楽しんで ―― そんなおもてなしの気持ちが伝わってくる。

お重に入った「抹茶づくし膳」。箸置きがわりの水引はスタッフの手づくり。
次回の連載では、旧別荘地の洋館を活かしたカフェ「古鶴堂」を全文公開!
家主のおばあさんが語ったという、遠い夏の日の記憶に胸が切なくなります。

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城下町・金沢の記憶を宿す、魅力的な古民家カフェをご紹介しています。


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変わりゆく街・東京にいまなお残る、懐かしい古民家カフェをご案内。


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京都版の刊行を記念したnoteの連載はこちらから ↓

川口葉子(かわぐち・ようこ)
ライター、喫茶写真家。全国2000軒以上のカフェや喫茶店を訪れてきた経験をもとに、多様なメディアでその魅力を発信し続けている。
著書に『東京 古民家カフェ日和』『京都 古民家カフェ日和』(ともに世界文化社)、『喫茶人かく語りき』(実業之日本社)、『名古屋カフェ散歩』(祥伝社)他多数。

(記事作成:担当編集・大友)