壽太郎

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そのお知らせを見たのは長めの正月休みを終えて地元から東京に帰る新幹線の中だった。いつものように何の気なしにTwitterを見ていたら突如タイムラインが「え?」とか「なんで?」といった短い投稿で埋め尽くされていき、あ、これは何かあったなと直感で悟った。私のフォローしてる人はセクシー以外のグループとの掛け持ちも多いから、他のグループで何かあったのかな〜と当初は脳天気に考えていたが、あまりに全員がツイートするものだから、ん?これはもしかして我らがセクシーゾーンのことか?と少しだけ構

    • アイドル

      9月は手のひらに山盛りにあった宝石が指の隙間からボトボトこぼれて割れていくのをただ歯を食いしばって眺めていることしか出来ないような、怒りと虚無とが充満した月だった。数年間オタクをしてきた中でこれまでもキツいなとか苦しいなとか思う場面は色々あったけど、2023年9月はまさに地獄と呼ぶにふさわしい季節だった。だった、と希望を込めて過去形にしたけど序章にすぎないのかもしれない。 * 健人くんが個人インスタに7/29に投稿したYOASOBI「アイドル」のリールが9/16に1,000

      • 『天使の涙』

        8月末にザ・アリーナが終わって以降、己のテンションと連動するかのように気温は急激に低下するわ生きる楽しみは無くなるわですっかりがらんどうになっていた私を救ったのがウォン・カーウァイ4K上映でした。0時になった瞬間オンラインチケット予約戦に参加したり、Googleマップを駆使して初めての映画館に飛び込んだり、カーウァイの映画を観に行くたびにさながらコンサートのような高揚感を得ることが出来た。2022年の秋の記憶は金城武とトニー・レオン、レスリー・チャンに彩られていたと言っても過

        • 『かか』

          信仰と血縁が主なテーマだけど、テーマからして弩級の中上イズムですね。主人公熊野にも行ってるし。 読み終わった後に感想サイトを巡回したら「理解出来なかった」という感想が4割くらいあって純粋に羨ましいなと思った。この世の中にはこれが分からない人生があって、そういう人とも一緒に社会をやっていて、そして平然とやってゆかねばならないのだ。 とにかく文体が独特で読み進めるのに苦労したけど慣れたら早かった。『推し、燃ゆ。』を読んだ時にも感じたことだけど、宇佐見りんは個別の事象を世界の全部

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        • 感想
          11本
        • 日々のこと
          6本
        • アイドルのこと
          13本

        記事

          ハートの日

          生まれつき運があまり良くない。絶望的に悪いというわけではないが、お世辞にも良いとは言えない、そんな人生を送ってきた。そんな私とは対照的に妹は昔から運が良く、家族で宝くじを買うことになれば妹が代表して窓口に買いに行き、私が行くことはついぞなかった。幼いながらにこの世には運の良い人間とそうじゃない人間が存在するのだということを知った。私のソウルコミックである『ピューと吹く!ジャガー』の中でジャガーさんがピヨ彦を「今回はたまたま運のない人生だっただけさ」と慰め、ピヨ彦が反論するシー

          ハートの日

          『桜のような僕の恋人』

          私はジム・ジャームッシュ作品のような、いわゆる"何も起こらない映画"が好きです。人々の日常が淡々と描かれていて大きなことは何も起こらないけど、視点の切り取り方次第で日常は映画に・街は舞台になる。私はジャームッシュに人々の営みはただそこに存在するだけで十分に映画足りうるのだと教えてもらった。つまり自分の好みとして何かが起こる映画や、ここが感動ポイントです!って作り手に誘導されてる映画がかなり苦手なんですね。そんな自分の趣味趣向を把握している中、"恋人が・難病で・死ぬ"という、ド

          『桜のような僕の恋人』

          『たぶん悪魔が』

          美しさおよび美しさを追求する活動というのは人類の文化を発展させる重要なエッセンスであるが、時に停滞させるはたらきもする、というのが兼ねてからの私の持論であり、今日またその論が強固になった。主演のアントワーヌ・モニエの退廃的かつ神経質な美しさに気を取られ、一部セリフが入ってこなかったこの作品『たぶん悪魔が』を観てである。悪癖ということは重々承知していて、改善したいと思ってはいるのだが、私は造形が美しすぎる人間と対峙すると、「このスッと通った高い鼻!豊かな扇のようなまつ毛!光を湛

          『たぶん悪魔が』

          池袋

          久しぶりに何の予定もない土日だった。金曜日は1週間ぶりに出社して22時締め切りの資料データを21:57に入稿し、達成感に包まれながらコンビニで冷凍のねぎ焼きとノンアルの檸檬堂を買って帰路についた。 平日は基本的に5時間睡眠なので、蓄積した睡眠負債を返済すべく土日は予定がなければ10時間くらい寝ている。休みの日は自然に起きるまで寝るという人は多いと思うけど、私がそれをやると起床が13時以降になる。一級遮光カーテンの威力は伊達じゃない。 そしてこの土曜も例に漏れず14時に起きた。

          「やり切ったでしょ、超楽しかった!」

           2020年、世界は未曾有の大厄災に見舞われ、ほとんどの人類が大なり小なり何かしらの計画を狂わされた年だったと思う。4年以上前から決まっていたオリンピックでさえ延期を余儀なくされ、国や大人が入念に計画したものさえあのように呆気なくしおれゆくことがあるのだという無力感を突きつけられた年だった。2020年初頭からじわじわと私達の生活に侵入しはじめたコロナは、あれから1年経った今でもまだ生活に暗い影を落としている。もし歴史が巨大なExcelで管理されているのなら、"2020"の行を

          「やり切ったでしょ、超楽しかった!」

          『推し、燃ゆ』と親友の話

          「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という鮮烈な書き出しがツイッター上で話題になっていた例の小説を読み切った。アイドルオタクの主人公が推しを推す話と聞いていたから、私の話じゃん!と意気揚々と手に取ったけど、私の話じゃなかった。 触れ込み通り、オタク特有かつオタク普遍の感情が、嫌味のない比喩とテンポのいい短い文章で表現されていて、共感するところも多かったし、この深度の自己内省を21歳という若さで行って小説という形に昇華した作者の才能に脱帽した。しかし、この熱量を自分のもの

          『推し、燃ゆ』と親友の話

          背負うもの

          3月29日、全ジャニーズグループの1発目といういささか重い期待を背負い、SexyZoneは無観客の横浜アリーナに登場した。セトリはSexyZone(曲)、RUN、MELODY、cha-cha-chaチャンピオン、勝利の日まで、勇気100%というラインナップで、所謂いつもの定番ではなかった。成る程、この出口の見えない沈鬱な状況下の中で開催されるライブにピッタリな選曲だった。そんな彼らが一発目だったから、当然他のグループも自分達の持ち歌の中でそういうメッセージ性の濃い曲を披露する

          背負うもの

          『ぼくは麻理のなか』

          人間を神格化した人間と神格化された人間の話。気軽な感じで見れるラブコメかと思ってたら意図せず登場人物全員の自意識がねじれこじれした話でつい一気見してしまった。分類的には「渇き。」に近い雰囲気。 一番ハッとしたのは、小森の人格が入った麻理が意図せずエロ本を見てしまうシーンで、「吉崎さんの眼球でそんなもの見ないで」と依が怒って麻理の目を覆うシーン。依は麻理の外面だけ見て分かったフリしてる連中たちを軽蔑して生きてきた人間だけど、内面を分かったつもりでいる方がよっぽどグロテスクだと思

          『ぼくは麻理のなか』

          2020年の(not)FLAT FIELD

          2020年の(not)FLAT FIELD

          愛してると君になんて伝えていたの?

          中島健人くん、26歳のお誕生日おめでとう。このところ暗いニュースばかりだったけど、あなたの生まれた3月13日だけは目に入るもの全てがきらきらと光を放ち、何もかもがまばゆく輝いていた。3月13日にオープンした近所のカフェも、スターバックスの新作のバタースコッチも、何もかもがあなたの生まれた日を祝福しているように見えた。"好きなアイドルがこの世に生まれた日"というただそれだけで、地球を抱き抱えて走りたいほど愛おしかった。愛じゃ地球は救えないかもしれないけど、その地球の片隅で生きる

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          アカデミー賞での健人くんを見て

          昔、ごきげんようという番組で「僕、コンタクトレンズの2weeksをツーウィークって言うのが嫌いなんですよね。トゥーウィークスって言うんです」と話し、小堺一機と番協のお客さんの爆笑を掻っ攫っていた健人くんがいた。その番組以外でも、どんな些細な英語の発音にもこだわり、誰に何を言われようとも絶対にポリシーを曲げない姿を見て、面白い人だなぁとこれまでずっと愉快な眼差しを向けてきたけれど、先日のアカデミー賞の生中継を目の当たりにしてそんな風に見ていた自分を恥じた。「英語が喋れるわけでは

          アカデミー賞での健人くんを見て

          「子供の頃、胸に刻んだ言葉がある。最も個人的なことが最も創造的であるというマーティンスコセッシ監督の言葉だ。」 ポン・ジュノ 第92回アカデミー賞でのスピーチ

          「子供の頃、胸に刻んだ言葉がある。最も個人的なことが最も創造的であるというマーティンスコセッシ監督の言葉だ。」 ポン・ジュノ 第92回アカデミー賞でのスピーチ