池袋

久しぶりに何の予定もない土日だった。金曜日は1週間ぶりに出社して22時締め切りの資料データを21:57に入稿し、達成感に包まれながらコンビニで冷凍のねぎ焼きとノンアルの檸檬堂を買って帰路についた。
平日は基本的に5時間睡眠なので、蓄積した睡眠負債を返済すべく土日は予定がなければ10時間くらい寝ている。休みの日は自然に起きるまで寝るという人は多いと思うけど、私がそれをやると起床が13時以降になる。一級遮光カーテンの威力は伊達じゃない。
そしてこの土曜も例に漏れず14時に起きた。とりあえず昼ご飯とはもう呼べない、何ご飯か定義出来ない曖昧なご飯を食べ、アマプラで『飼育』を観た。のっけから嘔吐のシーンがあり食後に観たことを後悔した。その後、スーパーに夜ご飯の買い出しに行き、…何を買ったか忘れた。今3分くらい考えたけどマジで何も思い出せなくて脳の危機を感じている。とりあえず何かを買って作って食べた。
夜は『大奥』を観た。ポニーテールの涼やかな美男子・大倉くんが主演のニノに美貌でマウントを取っていた。なんとなく選んだ映画だったからジャニーズが2人も出てくるとは思わずびっくりした。なかなか面白かったなと満足しながら映画鑑賞リストに書き加えようとしたところ、なんと2013年に鑑賞済みだった。確かに観たはずなのに、キャストもストーリーも結末も何もかもを忘れていた。これは9年前のことだからさすがに仕方ないよね。それより昨日食べた夜ご飯を思い出せないことの方がヤバい。
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今日は13時に起きた。14時に起きるともう何も出来ない気がするけど、13時はまだ何か出来る気がする。この1時間の差は大きい。ということで今日はずっと買いに行こうと思っていた新しいカーテンを買いに行くことに決めた。自由が丘か渋谷か新宿に行くつもりだったけど、どの店に行こうか下調べをしたりTwitterを眺めたりリヴリーの世話をしてるうちにいつのまにか15時になっていた。どこも電車で30分以内に着くけど、ここから服を着替えたり化粧をしたり…という出かけるまでのタスクに掛かる時間を考えるとどんどん億劫になってきた。ただ、土日どちらも何もしないのはちょっと勿体ないという感情もあり、たどり着いたのは池袋という結論だった。
池袋は家から10分以内で着く。天気が良ければチャリで行くこともある、家から一番近いターミナル駅だ。多くを望まなければ大抵のものは手に入る。不服ながら池袋に行くことにした。
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上京前は池袋も渋谷も新宿も銀座も全部同じようなものだと思っていた。テレビでそれぞれを比較する企画などがあっても、全部似たような都会じゃねえかと白けていた。けど東京に住んだことで必然的に各地の解像度が上がり、どれも全く違う性格を持つことを知った。そして残念ながら池袋はちょっとダサかった。
理想の100%のものは手に入らないけど80%のものは手に入る、池袋はそういう街だ。ルミネもパルコも東武も西武もあるけれど、全てを満たすには何かが足りない。でもそれは池袋が不完全なのではなく周りが完全すぎるがゆえ、相対的に物足りない印象になるだけなのだ。もし池袋が地方都市に在ったら一強になれる力量は間違いなくあるが、東京に在ると途端に四番手、五番手に成り下がる。でも池袋はそういう序列争いには無関心で、己を過剰に良くも見せず卑下もせず、ただそこに在る。そんな心持ちだからマルイに撤退されるんじゃ…と指摘したくもなるが、その無関心さこそが池袋の趣なのかもしれない。
池袋は望みの100%を叶えてはくれないけど、同時に池袋も私に100%を望まない。さっと眉毛だけ描いてちょっとよれた服を着てやって来ても、見逃してくれる寛容さがある。全てを受け入れる…と言えるほどの包容力は感じないけど、何者も拒否しない、池袋はそういう街だ。

そしてやっぱり理想の100%のものには出会えなかったから、今日はカーテンを買うのを辞めた。

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