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③「息子をおんぶ」で、おもちゃの勉強


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市主催の子育て広場に息子と行きました。
公園デビューならぬ「子育て支援施設デビュー」です。
当時はまだ子育て支援センターというものはほとんどありませんでした。『子育て支援センターなどというものを作ると、子どもをスタッフに任せて自分は休憩する母親が増えてしまう』という意見を吐く人が少なくなかった頃です。常設のセンターはなく、月に1度、週に何度かイベントとしてホールなどで遊び場が設置されている程度でした。

遊び場といっても、用意されているおもちゃは寄贈された古いぬいぐるみ(UFOキャッチャーの景品が多かった)しかなく、ほこりっぽくて、アレルギー体質の子はもちろん、赤ちゃんたちに安心して手渡せるようなものではありませんでした。
見るにみかねて、数人の友人と一緒に「木のおもちゃなどいいおもちゃをもっと取り入れてほしい」と訴えに役所へ行きました。
役所の方は「みなさんは保育士とか幼稚園の先生とかですか?違うんですか?主婦の意見を一々聞いて言う通りおもちゃを買っていたら、予算がなくなるんですよ!」と冷たく突っぱねられて、話もロクに聞いてもらえず、悔しい思いをしました。
しかし同時に「保育士か幼稚園教諭かと聞いてきたから、何か子どもの育ちに関する“肩書き”があれば、話を聞いてくれるのかもしれない」と思い、「何か資格を取ろう」と一念発起しました。

赤ちゃんの息子は寝る時間が長い。今までは自分も寝たり家事をしていたけれど、眠っている間は勉強時間にする日々が始まりました。とはいえ、学校へ行く時間もお金もないので、もっぱら図書館で本を借りて読むことからスタート。
「遊び」「おもちゃ」「子どもの育ち」についての本は片っ端から読みました。「シュタイナー」「モンテッソーリ」「フィンランド式教育法」などなど、各国のいろんな教育法やそれに伴うおもちゃ・教具について学びました。あぁ、どうして大学で法学部なぞ選んだのか!幼児教育科に行っとけばよかった…。

さらに、通信教育で資格を取得できるという手軽さが魅力で(民間団体の通信教育だし、資格商法っぽいなーと思いましたが、学びたい気持ちがすごく強かったのです)NPO法人が認定しているおもちゃの資格を2001年に取得しました。通信教育とはいえ、最後に東京でスクーリングを2日間受講しなければならないのがネック…。乳児を置いて上京だなんて。母乳だし。受講するかどうか、かなり悩みました。でも、夫がすんなりと「ふたりで頑張ってみるから、行っておいでよ」と言ってくれたので、息子を夫に託して上京することができました。2日間のスクーリングを無事に受講できました。

ハクをつけるために、資格名が書かれた名刺をパソコンで作り、サロンに揃えてほしいおすすめおもちゃのリストを作り、役所を再訪問。
すると「ほぉ!資格をお持ちですか!」と丁重な態度で、あっさりおもちゃのリストを受け取っていただけました。常設の子育てサロンを検討していた時期でもあったので、提案したおもちゃを導入してもらえました。肩書の力は、かなりあった(=資格商法とはいえ、利用価値はあった!)。

しばらくして、木のおもちゃを揃えた子育てサロンは、スタッフの間で「子どもたちの遊び方が変わった」と評判に。行政主催の乳幼児の保護者向け子育て講座の講師として招かれるようになりました。ラジオ出演や地元紙のコラム執筆のお仕事もいただき、おもちゃ・遊びを「仕事」にできるのかもしれない、と考え始めました。
とはいえ、保育園に息子を預けるつもりはなかったので、常に子連れでした。お仕事のご依頼をいただいた時は「息子連れでよければ」とお尋ねし、OKをいただいたら受けるという徹底ぶりでした。
なぜ保育園を考えなかったか。
アレルギーはストレスも原因だとか、保育園に預けることを実家の母にあれこれ言われるのではないかというこじらせぶりとか、色んな思い込みが私をがんじがらめにしていた時期でした。何よりも、保育園に預けて働くほどの収入も見込めないし、その自信もありませんでした。

テレビやラジオのお仕事のときは(周囲からは驚かれましたが)息子を背中におんぶして出演しました。おもちゃ選びの話をする私の背中で「あうー」と、突然しゃべる息子。ラジオでもバッチリ放送されました。

私は今でも講師の仕事を受けるとき「託児つき講座」より「親子で一緒に受講するスタイル」に設定していただくことが多いです。
おもちゃをたくさん持参して、遊んでいるわが子を見つめながら話を聞いていただく方が、子どもも母親も安心するし、遊ぶ我が子の姿を見ることで必ず気づきがあるからです。
そしてその子どもたちの中に、いつも息子が混ざっていました。当時、息子はまだ1歳でした。3歳までにアレルギー体質で苦労しない体に体質改善する!という根拠のない決意を持っていたので、「ごはんや掃除など息子との暮らしに手と時間をかけることが私にとっては一番大事、次が仕事」と思っていました。振り返ると、そこまで意固地になる必要はなかったかもしれません。初めての子育てで、少々がんばりすぎていたのかもしれませんね。
ただ、子どもと一緒に過ごせる時間は期間限定です。親より自分の時間を優先する思春期を迎えた今、乳幼児期に気が済むまで共にいて良かったと思います。

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