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意識高い系会社に低い系が入社したはなし⑥
宴会芸の覇者
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いまはもうコロナでそんな阿呆な会社は存在しないだろうが、
当時は令和とは思えない宴会芸が存在した。
まず新人は新人歓迎会で宴会芸をしなければならない。
まだ会社に馴染みきれていない状態での宴会芸は本当に地獄だ。
そしてもちろん歓迎会のみならず各宴会で宴会芸担当が割り振られる。
これは先輩後輩全く関係なくランダムで選出される。
ちなみに宴会の司会という役割もあるのだが、
司会者は司会者で宴会芸をしなければならない。
ゲシュタルト崩壊寸前である。
昨今のパワハラに厳しい風潮により、
「1人でもやりたくない人がいたらやらなくてもいい」
と一応毎回上司から言われるのだが、
もちろん誰もNOとは言えない。
そんなことを言えば社内で居づらくなるのは目に見えているからだ。
…宴会芸を断れば居づらくなるってなんや?
とにかくそれほどこの会社では
宴会芸は重要視されていたのだ。
宴会芸のために残業もするし、
宴会芸の衣装を買うために外回り中買い物もするし、
なんならカラオケボックスに集まってネタ合わせもする。
全国の社員が某スタジアムに集まるとんでもない規模のパーティー(キラキラ会社特有)では、
全国の達人たちによる宴会芸がわざわざ大舞台で披露される。
まさか舞台もこんな使われ方をするとは思ってもいなかっただろう。
そして恥ずかしながらかく言う私も、
嫌々ではあるものの魂を込めて宴会芸に取り組んでいた。
魂を込めていた理由はただ一つ。
「やるからには絶対にスベりたくない」からだった。
特に関西人の私にとってスベるというのは地獄そのものだった。
東京03のコントをアレンジして台本も書いたし、
イチから創作で作り上げたコントまである。
そしてありがたいことに(?)毎度大好評だった。
宴会芸を終えたあと握手を求められたりもした。
一緒に組んだ相手には「今まででいちばんいいものを見せることができた」といたく感動された。
…M1か?
こうしてスベりたくないという一心で取り組んだわたしは、
不幸なことに宴会芸の覇者になってしまっていた。
おそらく初回でスベり倒しておけば
もうこいつにやらせてはいけない
という雰囲気になっていたのだろう。
あんなに何度もやらされることはなかったはずだ。
だがわたしの中の関西魂がそうさせてはくれなかった。
後悔はしていない。
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