見出し画像

意識高い系会社に低い系が入社したはなし【最終回】

退職バトル

約2年働いたが、
意識の高低差や今まで書いてきたような仕事内容(特に未入金対応)・会社の風習に耐えられなくなり、
遂にわたしは退職を決意した。
実際他にやりたい仕事があったというのもある。

もちろんこの会社がすんなり辞めさせてくれるわけがないのは分かっていた。

面談地獄の幕開けである。

まずは上司にお話ししたいことがありますメールを飛ばし、自ら面談をセッティング。
バトル開始だ。

わたしは開口一番、「今年いっぱいで辞めたいと思っています」と伝えた。
結論から先に伝えるのはこの会社で毎回要求されてきたことだ。
上司の時間を奪っているという自覚を持ち、結論から先に、しかも端的に話すことが求められる。
なんて理想的な伝え方をしたのだろうかと我ながら惚れ惚れした。

「メールが来た時点でそう言うと思ったよ。結論から言うと、ダメです。」

なるほどさすが長年務めているだけあって、
しっかり結論返しをかましてきた。

なぜ辞めたいのかを説明したが、
もちろん覆ることはなかった。

そんなことは想定内だ。

そして後日また面談がセッティングされ、
2回戦が始まった。

「お前はさぁ、なんでこの会社入ったんだっけ?」

「成長したいからです(そう言わないと入れない会社だったからです)」

「お前はもう成長したんだっけ?やり切ったんだっけ?」

「いいえ(語尾『だっけ?』やめろ)」

「じゃあダメじゃん」

「今後生きていく上で、この仕事をやり切る必要はないと判断しました」

「……。お前はまだ苦手な壁を乗り越える力が付いてないと思うんだよ。飛び込み苦手だろ?それ乗り越えてないだろ?」

「壁は好きなことをやっているときに生じるものと、嫌なことをやっているときに生じるもの2種類あると思っていて、前者を乗り越える力は既に持っています。後者は私には必要ありません。嫌なことはやらないからです。」

「……。また社会人やりたいと思った時に、途中で諦めたことは損になるぞ?」

「大丈夫です。2度と会社員にはならないので。」

「そうか…。まぁとりあえず、あと一回話させて。俺も考えるから。」



「これは勝ち確だ!」と脳内で拳を突き上げた。
朝会の時誰にも見せたことのないくらいの拳を (※前回参照)。

それにしても我ながら口喧嘩の強さには感心した(喧嘩ではない)。
あまりに感心しすぎて一言一句覚えている自分も気持ち悪いけれど。
理路整然と話す力はおそらくこの会社でついたと思うので、辞める時に役立つとは本当に感謝だ。


そしてまた後日。
遂に最終バトルが幕を開けた。

「考えてみたんだけど、俺はお前を応援することにした。」

「ありがとうございます!!」

不戦勝だった。
なんていい上司なんだろうと感動した。
あっさり退職が決まった。

だがそのあとなぜか部長とテレビ電話で面談させられるというイベントが発生した。
普通は退職時部長との面談などない。
怒鳴られるのかと恐る恐る挑んだが、
「期待していたのに残念だ」
というありきたりな台詞をいただいた。

本当に申し訳ないしか言いようがなかった。

そしてある年の年末をもって無事退職した。
担当クライアントが案外悲しんでくれて感傷的になったりした。

その後はまた自営業に戻り、小さな飲食店をひとりマイペースに営んでいる。
朝会もなければ未入金対応もない。
なんなら飛び込み営業をされる側になった。
みんな適度にさぼれよ…と心の中で激励を送っている。





転職を急いで自分を偽り意識高い系会社に入ってしまった結果、
確かに嫌な思いをたくさんした。
泣いたこともあった。
けれどこうして今思い返せば面白い経験ができたし、
この会社で出会った人たちのことは今でも好きだ。
何より働いた結果『向いていない』と思ったからこそ、今の自分の仕事に迷いなく取り組むことができている。
この会社に入社したことはひとつも後悔していない。
会社側は雇ったことを後悔しているかもしれないけれど。笑

今転職に迷っている人は、
もしかするとわたしのように転職先選びを失敗するかもしれない。
入ってみたら思っていたのと違うかもしれない。
私の大好きなMr.Childrenの歌詞を拝借すると、

今僕のいる場所が
探してたのと違っても
間違いじゃない
きっと答えは ひとつじゃない
Any /Mr.Children

のである。
それを失敗と捉えるのか、いい経験と捉えるのかは個人次第だ。

何度も手を加えた汚れた自画像に、
また12色の心で好きな背景を描きたしていけばいい。

なんて良い歌詞なんだろう。

みんな失敗を恐れず、ぜひ新しい環境へ飛び出してみてほしい。
もしそこで意識の高低差に悩むことがあれば、わたしと友達になろう。



あとがき

大袈裟ですがあとがきを書かせて下さい。

今回ずっと書きたかったエッセイに挑戦しました。

ほとんど誰も読まないだろう
自己満足でいいし書こう

そう思って書き始めたのですが、
なんと通算1000pvを超えるほど読んでいただきました。
本当にありがとうございます。

時には面白かったです!とコメントまでいただいて、大層励みになりました。

前職のことを散々いじらせていただきましたが、
見知らぬ誰かに笑っていただけたのならこれほど嬉しいことはありません。
それだけで就職した意味があります(?)

そして散々上司のこともいじらせていただいたのですが、
彼は本当にいい人でしたし、今でも交流は続いています。
不器用でまっすぐな人です。
おそらくこのエッセイを読んでも笑いとばしてくれるに違いありません。

彼のおかげで、仕事内容は嫌すぎたけれど、わたしの社会人生活は少しマシだったと思っています。
こんな生意気な社員と向き合ってくれたこと、
今も交流してくれていること、
本当に嬉しく思っているし、
おこがましいけれど今は一個人として彼のことを応援しています。

最後まで読んでいただき
本当にありがとうございました!

またお会いしましょう!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?