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アンノウン・デスティニィ 第13話「アンノウン・ベイビー(1)

第1話は、こちらから、どうぞ。

第13話:アンノウン・ベイビー(1)

【2035年5月10日、もとの世界、東京・品川】 
 つくば市にある国立基礎応用科学研究所の3階のD棟とC棟を結ぶ空中回廊。ほんの小一時間ほど前、アスカはそこからワープに成功した、おそらく。だがその直後、黒スーツの不審な男に気づいた山際はシンと、男のあとを尾けた。
 そして今、品川駅近くのシティホテルにいる。
 男はラボを出るとタクシーでJR土浦駅に向かった。山際とシンは品川に向かう快速のトイレで外見を変える。山際は中肉中背のどこにでもいるビジネスマンに。シンは仕事のできるキャリアウーマンに化けた。車内では男をはさんで左右に分かれた。
 ホテルはそろそろ混みあう時間帯で、チェックイン機の前に列ができていた。黒スーツの男はその前を素通りする。
 シンにラウンジで待機するよう指示すると、山際は閉まりかけたエレベーターに駆け込んだ。入口の溝に足をひっかけわざと男にぶつかる。盗聴器を男のスーツの外ポケット内側に貼りつけ、すみません、と軽く謝って背後に立つ。男は13階で降りると、迷うことなく左の廊下を進む。山際は右の廊下へ向かうとみせかけて、すぐにUターンし、エレベーターホールから左廊下奥を窺った。
 男が1307号室に入る瞬間をカメラにおさめ、部屋番号をシンにメールする。しばらくすると「1308号室を押さえました」と連絡があった。チェックイン機に侵入してデータを操作したのだろう。シンにとったら歯磨きより簡単な作業だ。
 1307号室は左廊下を右に折れた先にある。山際は左に曲がって廊下のつきあたりに佇みシンの到着を待っていた。そのわずかな間だった。エレベーターホールから男がひとり現れ、廊下を1307号室のほうに折れた。
 部屋の前で立ち止まる。その人物に、山際は目をみはった。

(to be continued)

第14話に続く。

 


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