『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(2)
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カラ、ガラガラ……ガラ。
格子戸の音がおかしい。建付けが悪くなったのだろうか。カウンターに腰かけ文庫本を読んでいた桂子は、訝しげに顔をあげる。のっぺりとした風が隙をついて滑り込み、カウンターの上にさげているガラスの風鈴が、ちりん、とひとつ声をたてた。近くの茶わん坂で工房をかまえる常連の泰郎さんの作品だ。もう暦の上では秋なのでしまわないといけないが、清澄な音色が気にいっていて、もう少しもう少しと架けたままにしている。
ぼー