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連載小説「オールド・クロック・カフェ」

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京町屋を改装したカフェは、一歩入ると時計の森。そこでは、時のはざまに置いてきた忘れ物を教えてくれる「時のコーヒー」があるという。
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#シリーズ小説

『オールド・クロック・カフェ』  ほっと謎とき篇(1)

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必…

deko
2年前
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小説『オールド・クロック・カフェ』 ほっと謎とき篇(2)

前話は、こちらから、どうぞ。 * * * Solve the Time Mystery * * *  「正孝君…

deko
2年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(1)

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必…

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(2)

前話(「糺の天秤」1)は、こちらから、どうぞ。  カラ、ガラガラ……ガラ。  格子戸の音…

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め 「糺の天秤」(3)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話は、こちらから、どうぞ。 * * * Fifth Cup of …

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(4)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(3)は、こちらから、どうぞ。 * * * Treasure …

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(5)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(4)は、こちらから、どうぞ。  澄は長らく宇治で暮らしていたが、三年前に夫の誠二郎が亡くなったのを機に北野白梅町にある次女の家で暮らすようになったそうだ。軽自動車を運転しながら直美が語ってくれた。澄は疲れたのだろう。車に乗るとすぐに寝息をたてはじめた。それをミラーで確かめ直美が続ける。 「娘時代を過ごした市内で暮らすようになったせいもあると思うんですけど。おばあちゃん、ふっと昔に戻ることがあるみたいで。それで出かけて迷子になるんです」

『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(6)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(5)は、こちらから、どうぞ。 * * * Time Flie…

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(7)最終話

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(6)は、こちらから、どうぞ。  聖アグネス教会のバ…

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」<全文>

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必…

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1年前
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『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(1)

 その店は、東大路から八坂の塔へと続く坂道の途中を右に折れた細い路地にある。古い民家を必…

deko
11か月前
59

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(2)

第1話は、こちらから、どうぞ。 ✻ ✻ ✻ Suspicious Shadow ✻ ✻ ✻  ランチの客…

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11か月前
57

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(3)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(第2話)は、こちらから、どうぞ。  桂子が盆にグラス…

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11か月前
57

『オールド・クロック・カフェ』6杯め「はじまりの時計」(4)

第1話は、こちらから、どうぞ。 前話(第3話)は、こちらから、どうぞ。 * * * Time Coffee * * *  あたたかな何かに浮かんでいる心地がした。閉じた瞼の裏のようだ。何も見えないのに真珠色の光に包まれている感覚だけがある。このぬくもりを桂子は知っていると思った。意識が目覚める前のまどろみの海にあるころの記憶。羊水はもとから子宮にあるのではなく、子を孕むと満たされるのだという。母と子で作りだす最初のもの。胎内にいた記憶など残っていないけれどおぼろげな既視感