『オールド・クロック・カフェ』5杯め「糺の天秤」(5)
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澄は長らく宇治で暮らしていたが、三年前に夫の誠二郎が亡くなったのを機に北野白梅町にある次女の家で暮らすようになったそうだ。軽自動車を運転しながら直美が語ってくれた。澄は疲れたのだろう。車に乗るとすぐに寝息をたてはじめた。それをミラーで確かめ直美が続ける。
「娘時代を過ごした市内で暮らすようになったせいもあると思うんですけど。おばあちゃん、ふっと昔に戻ることがあるみたいで。それで出かけて迷子になるんです」