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小説『虹の振り子』

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中編小説『虹の振り子』をまとめています。 国際結婚と家族の物語です。
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#長編小説

小説『虹の振り子』22<最終話>

第1話から読む。 前話(21)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄      鳥越貴美子:玲人の母、啓志の姉     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 05  翔子は『資本論』を棚に戻す。  雨があがったのだ

小説『虹の振り子』21

第1話から読む。 前話(20)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)    鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 04  隣家との塀にそって孟宗竹の植えられた北向きの書斎は、とがった陽ざしが射し込むこともなく、

小説『虹の振り子』20

第1話から読む。 前話(19)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)    鳥越玲人:翔子の従兄     鳥越瑛人:玲人の息子   * * * * * 第4章:虹――<スイング> 03  ――この屋敷を残したい。  その思いは、玲人にもあった。叔父は最後まで口にはしなかったけ

小説『虹の振り子』19

第1話から読む。 前話(18)から読む。 * * * * * 第4章:虹――<スイング> 02  翔子の困惑など素知らぬげに、庭の青紅葉の枝で四十雀が甲高い鳴き声をしきりにあげていた。  いつもは深く濃く凪いでいる翔子の黒目がちの瞳が、視点が定まらずに泳いでいるのを、玲人は認めた。幼いころから翔子は動揺すると瞳が泳ぐ。翔子が何を懸念しているのか、胸のうちが手にとるようだと、玲人は思った。 「叔父さん、ここからは、僕が」  玲人が啓志に目くばせする。 「どの順で話したものか

小説『虹の振り子』18

第1話から読む。 前話(17)から読む。 * * * * * 第4章:虹――<スイング> 01  翌日は、朝から晴れていた。  縁側の端から、朝の光の束が細い筋となってハープの弦のように並び、居間まで射し込んでいる。光の音色が聞こえてきそうだと翔子は思った。  ――昨日、梅雨入りが発表されたというのに、空も気まぐれね。  広縁から庭に下りて、空を見あげる。  刷毛ではいたような薄い雲がたなびいていた。築山の裾で紫陽花が白くまるい顔を輝かせている。  翔子は、うーんと大きく

小説『虹の振り子』17

第1話から読む。 前話(16)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人)  鳥越玲人:翔子の従兄  * * * * * 第3章:帰宅――<ホーム> 09 「いい機会だから、私からもひとつ謝っておこう」  翔子の視線を受け止めると、父がまるで世間話でもする気軽さで言う。  雨があが