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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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2020年12月の記事一覧

100字物語「少年のさがしもの」#第9話

少年は背景を探していた。午後の陽のさしこむ図書館の窓辺。スチールの棚に並べられた色褪せた背表紙の群れ。高い天井にヒールの足音が響く。木枯らしが、落ち葉の舞を指揮する。猫がシルエットだけを残して消えた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第10話

少年は翼を探していた。広い河川敷のグラウンド。小春日和の日曜。ジョギングの波にエールを送るトランペットの叫びが、空に吸い込まれてゆく。陽だまりに目を細める猫。河原の土手に寝転べば、ひとすじの飛行機雲。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第11話

少年は轍を探していた。岬を巡るワインディングロード。自転車を嘲笑うように、エンジン音が風を切り裂き駆ける。展望台の柵から伸びる望遠レンズ。鷹が急降下する。轟くシャッター音。猫がバイクを値踏みしていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第12話

少年は問いを探していた。誰もいない放課後の理科室。鍵のかかった薬品庫。化学記号のラベルは文字が滲んでいる。棚のフラスコを冬の薄い光が照らし、イチョウの幹で猫が鳴く。窓辺に顕微鏡が一台、忘れられていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第13話

少年は無限を探していた。テスト勉強に飽きた深夜。小銭をポケットに突っ込んだ。コンビニまでの道。吐く息が白い。車のライトが闇を運ぶ。駐車場の隅で光るキャッツアイ。南の夜空にオリオンの三つ星が瞬いていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第14話

少年はを自由を探していた。高架下のアーケード街。雑多な色彩が軒を連ねる。狭い通路。店から漏れるBGMが喧噪とセッションを繰り返す。シャッターの閉まった店。その前に猫が居座る。新しいスニーカーを買った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第15話

少年は壁を探していた。体育館倉庫の裏。片付け忘れた白線引きが石灰を撒いている。ランニングの掛け声が拍遅れでこだまする。外周道路を走っているのは何部だろう。陽が落ちてきた。猫がテニスボールと戯れている。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第16話

少年は地図を探していた。海の見える駅のホーム。女子高生が3人。潮風に首をすくめ、オクターブで笑い声をあげる。警笛を海鳴りが追い立て、やって来た列車が彼女たちをさらっていくと、猫が一匹うずくまっていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第17話

少年は境界を探していた。雨あがりの日曜。空港の屋上デッキは人もまばら。濡れた滑走路は黒く艶やかに光っている。猫が水溜まりに顔を映す。水平線に虹が弧を描く。雲の切れ間に向かって、轟音が直線で飛び立った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第18話

少年は象徴を探していた。路線バスで帰る夜の住宅街。競うように明滅するイルミネーションの庭は、ジェリービーンズの色彩。バス停で猫が待っていた。きらめく光を背にモンローウォークを披露する。エレキが欲しい。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第19話

少年は機会を探していた。冬の朝。雑木林の小道。落葉が層をなす南の斜面に陽が降る。池の端で釣り人が白煙をくゆらす。カモが水面の波紋を引きずる。猫が獲物を狙っている。竿がしなった。肢体をひねらせ鱗が光る。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第20話

少年は天秤を探していた。夜明け前のジョギング。丘の上までの最後の坂道。眼下には街灯の波が煌き、東の空には明星が瞬く。山の稜線が白く霞みはじめる。クールダウンをしていると、猫が朝の挨拶をしに寄って来た。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第21話

少年は刻を探していた。港のレンガ倉庫。傍らにあるのは閉園した遊園地。乗る人のいない観覧車は、海鳥たちの泊まり木。カモメの嬌声が錆色の冬空を掻きまわす。猫がしきりに顔を舐めている。明日は雨かもしれない。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第22話

少年は余白を探していた。冬枯れの林。葉を落としたスケルトンの樹々。枝が無尽に重なり緻密な細密画を空に描く。猫が積もった枯れ葉にダイブする。初雪が線描の隙間を縫って、パラシュートのごとく風に舞い降りる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。